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三年A組

「修学旅行の班について説明します。聞き逃しても知らないのでそのつもりでいてください。

 この班は二日目の東京横浜分散の班になります。一クラス六班で、男子は三人又は四人、女子は三人でお願いします。班の決め方の案聞くの面倒なんで、くじで決めるか男女別でグループ作ってから組み合わせるかの二択に反対の人がいるかだけ聞きます。

 …まぁ、反対意見なんてないわな。多数決とるんでどちらか一つに手を挙げてください。

 くじがいい人ー?…はい、いない。だと思ったよ。じゃあ席立ってグループ作って。作ったら、女子は私、男子は東君に報告してください。以上。動いていいよー」


 雑談をしている人も途中で聞き返してくる人も無視する雪那の進め方はとんでもないと春希は思った。春希は初めて同じクラスになったので知らなかったが、雪那はこうやって過去二年間学級委員をやってきた。雑で話も聞いてもらえなくてひどいと言う人もいるが、それは少数派で、大半の人は話がすぐ終わって自由時間ができるからいいと言うし、安岡もそんな雪那を信用しているのか、クラスの方を任せて職員室へ戻っていく。そういうザックリとした態度で学校の人と接していたため、自然に雪那の周りには人が集まっていた。


「早く行ってきたら?得体の知れない奴らと組まされるかもよ?」


「お、おう」


 あわてて春希は男子が集まっている教室の後方へ向かった。雪那が見たところ、男子はほとんど固まっているようで、遅れて集まった春希もすんなりと輪の中に入っていった。問題は女子だ。雪那自身は誰と組んでもいいと思ったが、どうやら他の人はそうではないらしい。


「せーちゃん、一緒に行かない?」


 まず声をかけてきたのは、雪那とは幼稚園からの幼馴染で、自身の中で『大切な親友』と位置付けている岩崎智恵だった。雪那が自分で組む相手を決めるのなら一番組みたい相手である。


「もう一人はどうするつもり?」


 智恵と組めたところでもう一人がどうなるかで二日目がどうなるかが変わってくる。


「んー…あの四人次第だけど、多分こっちにくるのは沙織ちゃんじゃないかな」


「ならいいか。じゃあそれで」


 会話が一段落ついたところで別の女子二人から話しかけられた。


「やっぱり岩崎さんかー二人とも仲いいもんねー。あたしらも立花さんと組めたらいいなーって思ってたんだけど」


「立花さんほど面白くて頼りになる人いないと思うんだけど、残念だなぁ。今からでも変えるつもりないの?」


「そんな気はない。それに、『頼れる』じゃなくて『面倒がない』の間違いだろう?

 とっととグループ作って報告してくれ。男子はもうほとんど終わってるぞ」


 そんな話をしてきゃっきゃと笑いながら女子二人が去っていくと今度はグループ報告を受けた。

 そうして雑談を交えながらのグループ分けが終わると、再び学級委員が前へ出た。


「じゃあ男女の組み合わせだけど、くじがいい人はいる?…うん。誰もいない。じゃあもう一回立って、決まったら黒板にメンバーの名前と班長、副班長を書いてください。以上」


 再び教室内が騒がしくなり、智恵が予想した通り田中沙織が智恵と共に雪那の元まで来た。雪那と沙織は小学校からの知り合いで、出席番号順が近いという理由もあってよく話している。二人ともサバサバとした性格であるせいか、よく気が合う相手でもある。


「雪那は組みたいグループあるんじゃない?あたしたちとしては異論はないから声かけてきなよ」


 そう言って沙織が指した先には春希がいた。春希は沙織に指される前からチラチラと様子をうかがっていたらしく、雪那と目が合うと決心がついたように歩いてきた。


「あの、立花さん、一緒に行かない?」


「…まぁ、いいよ」


 雪那はそれだけ言って黒板へ向かい、雪那が班長、春希が副班長で名前を書いていった。


「さすが立花さんだな。俺らが班長やりたくねぇの分かってる」


「おいおい、ちょっと待て。副班長にされたオレはどうなるんだよ」


「大丈夫だって。雪那はかかし以上の人には文句言わないし、副班長なんて実際名前だけだし。もし仕事があっても雪那が一人で勝手にやっちゃうよ」


 五人がそう話しているのが雪那には聞えていたが、何も言わなかった。


 その後次々に斑が決まり、雪那が手早く決めたこともあって、分散でどこへ行くか話し合う時間ができた。


「分散は浅草、上野、スカイツリー、お台場のいずれか一つと中華街のチェックポイントに行くことと、異人館に最低一つは行くことが決められてる。みんなはどこ行きたい?」


「中華街で買い食い。オレらはそれで一致してるから、東京と異人館は女子で決めちゃって」


「……東京で行きたいところは?」


「えー。んー…。スカイツリー登ってみるとか?」


「あたしムーミンハウスカフェ行ってみたい!ね?食事はできなくてもさ、グッズ売り場に行くだけでいいの!ソラマチにあるんだよー。雪那、東京はスカイツリーとソラマチにしよ?」


 雪那は少し考えてから結論を出した。


「じゃあ、東京はスカイツリーとソラマチにして、早めに横浜に移動して中華街と異人館へ行くってことでいい?

 あと、ちーちゃんは行きたいところないの?」


「猫カフェ」


「却下。異人館は後日調べよう。各自ソラマチで行きたいお店考えといて。それじゃ、今日は解散」


 雪那が話を終わらせてもみんなは修学旅行の話をし始め、席へ戻ったのはそういった本人だけだった。


「…修学旅行、か。面倒くさ…」


 ぽつりと、つぶやいた。

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