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そして、続いていく―(1)

 二人が三年A組にもう一度戻ると、気がついた人から絶句し、あるいは驚きの声を上げて雪那の元に集まった。


「せーちゃぁーん、会いたかったぁー…」


 智恵はもともと泣いていたところにますます拍車がかかり、


「二人ともようやくくっついたのねー。まったく、手間がかかるんだから」


 沙織は二人にあきれたような、しかしその間を喜ぶように言った。


「でも、何でここに来たの?東京に引っ越したんじゃ…」


「引っ越したけど、四月からこっちに戻るよ。一人暮らしで中津國高校に通うんだ」


「えぇ!?」


 周りに集まった人はもちろんのこと、春希まで驚いた。


「私、手紙に書いたよね?私の言葉を信じて、約束を忘れるなって。約束を果たしに帰ってきたよ」


(そういうことだったのか…)


 そういやさ、と、拓海が聞いた。


「二人とも付き合うことになったんだろ?どっちから告ったんだ?」


「「………」」


「え?もしかして言ってないの?言っちゃえよー」


「は?今?」


「今今!みんなー春希が立花さんに告るぞー!誰かケータイで録画しといてやれー」


 その声でクラスの人の目が一気に二人へ集中し、ざわめきが収まった。


「え、な、何を言えば…」


「何でもいいよ。春希が何を言ったって、答は同じだから」


 雪那の言葉で周りがどよめく。


「えっと、じゃあ…。

 オレは、立花さんと一緒にいたい。立花さんがいなくなって、どれだけ大切な存在なのかを思い知らされた。もう二度と失いたくないんだ。だから、その、オレと付き合ってください!」


 そう言いきって春希が頭を下げると、再びどよめきが起こった。気がつけば騒ぎを聞きつけた他のクラスの人も教室に入らないほどに集まり、野次を飛ばし口笛を鳴らしている。そこに雪那が「私は」と大きな声で言ったことで、教室内は静まり返った。


「これから春希と一緒にいるためにここへ戻ってきた。答など、Yes以外はありえない。…よろしくね。

 それから、あのね、せっかく付き合うことになったんだし、呼び方変えてみるのはどうかな?」


「それは、下の名前で呼べってこと?」


「そう言っている」


「えぇと…。せ、雪那」


 呼ばれた雪那は優しく笑い、周りからは歓声が湧き起こった。すっかり赤面してしまった春希は教室を出ようとしたが、入り口付近にいた男子に捕まり、胴上げ紛いのことをされた。


「今のうちに職員室行ってくる。あとは適当に何とかしておいて」


 智恵にそう言い残してこっそりと教室を出て職員室へ向かうと、案の定そこには安岡をはじめとした教師達が固まって談笑していた。


「お久しぶりです。卒業式、保護者席で見ていましたよ。今日は中津國高校の合格を伝えに来ました」


「久しぶりだね、セツナ。そう言ってるってことは合格したみたいだね。おめでとう。

 それにしても、今日来るって教えてくれればみんなにサプライズか何か仕掛けたのに」


「サプライズならもうしてきましたよ。みんな楽しんでくれたみたいです。久々になじんだ顔ぶれを見ると、何だかほっとしますね」


「それはよかった。一人暮らしは大変だと思うけど、何かあったらいつでも遊びにおいで」


 雪那は笑って答えた。


「はい。お世話になりました」


 一礼して去っていく雪那の姿を見届けた教師達は再び話し出した。


「立花、変わりましたね。引っ越し先で何かあったんでしょうか?」


「さぁ?でもまぁ、良い方向に変わってるように見えますし、大丈夫でしょう」


 その後も教師達の談笑は続いた。

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