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その8 その頃の森田家

 その頃の森田家


●森田ゆりかの視点

 すぐるさんの帰りが予定より遅い。

 残業が更に長引いちゃってるのかな?もう一度メールしてみようか。。

 でもあまりしつこいときっと卓さんに迷惑かけるかもしれないし。

 うん・・やっぱりもう少し経ってからメールしてみよう。


 私はリビングでバランスボールに乗りながらそんなことを思っていた。

今日はあまり面白いテレビ番組もないし、いつも聴いてる癒しのCDをかけるとすぐ眠くなってしまう。

結婚して卓さんやいずみと3人で一緒に暮らすようになってから読書もしなくなった。

『なんか集中力に欠けるわ。。雑念も多いし。。』

そう自分で自覚していた通り、私はバランスボールで安定感をなくし、床にしりもちをついてしまった。


「キャハハハ!ママかっこ悪ぅい。」

 知らぬ間にいずみが部屋からリビングに来ていた。

「あのね、けっこう難しいのよこれ。足浮かせとくのって。」

「コケそうになったら無理しないで足着けばいのに。」

「なんとか耐えてみたかったの!」

「あんまりドジると卓くんに似てきちゃうよママ。」

「だから難しいんだって!」


 この1年半、いずみは卓さんのことをまだ一度も“パパ”とも“お父さん”とも呼んでいなかった。

 それは決して彼のことが嫌いなわけではない。むしろ友達感覚で家では楽しく会話している。だからいずみは彼のことを卓くんと言う。

でもこれはあまり良いことではないと思い始めている私。ある程度、父親の威厳がないと家庭がまとまらない気もする。

いずみに過去何回かは言った。卓くんじゃなくて、パパと呼びなさいと。でも彼女は“卓くん”が言いやすいからと拒否した。

さすがに私はいずみを怒ってまで、強制的に呼び方を変更させることはできずに現在に至っている。


「あ、そうだいずみ。今度の日曜、父親参観なんですって?」

「・・え?誰から聞いたの?」

「連絡網で玉木さんから電話が来たときに偶然聞いたのよ。お知らせのプリントもあるんでしょ?」

「・・・なくしちゃった。。」

「全くもう。だったら口ですぐ言えばいいのに。」

 いずみはやや下に顔を向けてモジモジしていた。

「ママ・・参観日にはママが来ることできないの?」

「えっ?なんでよ?パパだって休みよ。きっと行ってくれるわよ。」

「・・・ママの方がいい。。」

「Σ('◇'*エェッ!?どうして?パパが嫌いになったの?」

「そうじゃないけど。。学校には来て欲しくないんだもん。」

「なんでそんなこと言うの?嬉しくないの?」

 いずみは少し間をおいてから、言いづらそうに話し出した。

「だって・・卓くんブサイクなんだもん。。」

「ブ、ブサイクって・・(^_^;) 人は顔じゃないのよいずみ!」

「でも、みずほちゃんのパパや奈緒美ちゃんのパパはカッコ良くて優しいもん。」

「うちのパパだって優しいでしょ!」

「でもチンチクリンな顔だもん。奈緒美ちゃんが卓くん見たときそう言ってた。」

「そんなのいつ見たのよ?」

「前にみんなでジャスコに行ったときあったでしょ。」

「え?ええ。行ったわね。で?」

「そのとき奈緒美ちゃんの家族と偶然会ったの。」

「ママ知らないわよ。そんなことあったの。」

「ママと卓くんはバーゲンに必死だったもん。それを奈緒美ちゃんに見られてたんだよ。」

「そのとき言ってくれたらご両親にもご挨拶したのに。。」

「でね、奈緒美ちゃんが言ったの。いずみちゃんのパパってチンチクリンな顔だねって。」

「・・・・そう(^_^;)」

「ねぇ、卓くんが学校来たら恥ずかしいよぉ。」

「はっきり言うのね(⌒-⌒;」

「卓くんは仕事っていうことにしてママが来て。お願い。」


 (;-_-) =3 フゥ。。私はため息をついた。

「いずみ、他のお父さん達だってカッコいい人ばかりじゃないのよ。」

「ママ見たことあるの?他の子のお父さん。」

「ええ、あるわよ。去年のいずみの運動会のときとかね。」

「へぇ、そのときどうだった?」

「結構、お腹の出てるお父さんが多かったわよ。」

「それだけなら平気だけど、卓くんてチビ・デブ・ハゲなんだもん。」

「ハゲって言わないの!パパは短髪なだけなの!」

「はぁい。。」

「大丈夫よ。パパは人前ではおとなしいから目立たないわよ。」

「そうかなぁ。。」


 その後、卓さんが酔って帰って来たのは、こんな会話から1時間程経った頃だった。

             (続く)


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