その7 陰謀のきざし
陰謀のきざし
●森田卓の視点
「あーもうっ!仕事する気なんて失せちゃったわ!」
自分のデスクに戻った園崎さんの怒りはそう簡単に収まるものではなかった。
「ホントにすいません。。でもあのぉ〜・・この缶コーヒーどうしましょう?」
「そんなのもういらない!缶だって凹んでるし。」
「それは園崎さんが踏んだから・・」
「誰のせいで踏んだと思ってんのよっ!ヽ(`⌒´)ノムキィ」
「あ・・僕でした。。ハハ(^_^;)」
「あんたって腰は低いけど、癇に障ることもよく言ってんのよ!反省しなさい!」
「はい。。(;´д`)」
また怒られてしまった。。僕はため息をつきながら、彼女の席からひとつ離れた自分の席に座り、自分用に買った缶コーヒーを開けてグッと一息口に入れた。
;:゛;``;:゛;゛;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )ブッ!!まだあちぃっ!!
これが更なる間違いの元だった。コーヒーがあまりにも熱く、反射的に噴き出してしまったのだ。でもまだこれだけなら人に迷惑はかけない。
僕は目の前にある大事な書類の山を見て、噴き出す直前、とっさに首を横にそらしたまではいいけど、その先に園崎さんが立っていることには気づかなかった。
制服にコーヒーが飛び散ったまま呆然と立ち尽くす園崎さん。
「森田・・・( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」
でも彼女は悲鳴をあげるどころか、目をギラギラさせながら笑みを浮かべている。それが余計に恐怖感を倍増させた。
彼女はその後、怒りを爆発させることもなく、深い深呼吸を何度か繰り返したのち、少し震えた言葉ながらゆっくりした口調で話し出した。
自分の怒りを懸命に封じ込めてるといった感じだ。
「三木さんが頼んだカフェオレを取りに来ようと思ったら・・あんたホントによくやってくれるわね(⌒-⌒;」
園崎さんのこめかみがピクピク動いているのがわかる。
「す、すいません。。。謝ってばかりでまたまたすいませんけど。。」
「もう謝られ飽きたわ。森田を殴っても仕方ないし。」
「じゃあ僕はどうしたら・・?」
「この残業終わったら飲みに行くから全額おごりなさい。いいわね?」
「いや、でも僕・・手持ちのお金があまりなくて。。給料まであと1週間もたさないと。」
「お嫁さんに頭下げてもらえばいいでしょ!そんなに奥さんてケチなのっ?」
「いえ、うちのお嫁さんは言えばすぐお金もくれるんですけど、自分のことを犠牲にして僕に尽くしてくれるんで、なんか逆に悪くて。。」
「あっそ!別にあんたんちのノロケ話なんか聞きたくないわよ!さっさと仕事終わらせて飲みに行くわよ!三木さんもね。」
「私も・・ですか?」
「そうよ。都合悪い?アタシが森田とツーショットで飲みに行けるはずないじゃない!超恥ずかしい!」
「でも・・私は森田さんに迷惑かけられてないし。。」
「いつか間違いなく迷惑かけられるから前払いしてもらいなさい。」
三木さんは困ったように僕の方を見つめる。
「い、いいですよ。僕がみなさんの分、おごらせてもらいますから(^_^;)」
「ね、森田もこう言ってるし。」
というか、園崎さんに言わされたようなもんだけど。。
はぁ・・早く園崎さん、飲み終わらないかなぁ。。
家でゆりかがごはん作ってくれてるのに早く帰れないなんて。。
やきとり屋で小1時間ほど経ったころ、園崎の携帯に着信があり、彼女は一旦外に出て電話にでた。
『園崎さんですね。うまくおびき寄せてくれたようね。ありがとう。』
『おびき寄せたというか、森田にはいつも迷惑かけられてるので、今日もアタシが仕掛ける前に彼が墓穴を掘ったような感じなんですよ。』
『??意味がわからないけど。。』
『彼と行動を共にしたらわかると思います。とにかく森田には精神的にイライラさせられるので気をつけて下さい。』
『ええ、じゃあとは私が引き継ぐわ。ありがとう。お金は50万振り込んでおくから。』
『ありがとうございます。ちなみに・・なんでこんなことするのか理由は聞かない方がいいんですよね?』
『お金欲しいんならね。』
『わかりました。。』
『ではこれで。』
(続く)