その48 超えた一線?
超えた一線?
●森田卓の視点
戻った部屋のドアを開けると、豆電気のような照明だけが点いていた。
うす暗くて人の気配は感じられない。
「あ、そっか。まだ是枝君は宴会場かぁ。ヤバイ!部長が万歳三唱する前に僕も戻らなきゃ。」
僕は部屋を出ようとして振り返った瞬間、いきなり目の前に人が立ちはだかっていた。
「うわっ!\(◎o◎)/」
僕はびっくりして後ろにしりもちをついてしまった。
「み、三木さんっ!!なんでこんなところに!?」
彼女はまどろむような目つきで一歩部屋に入り、後手でドアを閉めた。
「三木さん、どうかしたんですか?」
僕はしりもちをついた態勢のまま質問を投げかける。
彼女はそれに答えずに、壁のスイッチを押して部屋の明かりを点けた。
「森田さん、このときを待ってました。」
「はぁ?どういうこと?」
三木さんは浴衣姿で髪はアップにしている。
「お願いです。今夜私を抱いて下さい。」
Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lえええええええええええっ??
「夜を二人だけで迎えられるのはこういうときしかないんです。」
三木さんはそういうと、アップにしていた髪を下ろした。
「いや、そう言われてもちょっと。。」
彼女は僕のそんな言葉など聞く耳も持たないようで、しりもちをついている僕の上にいきなり重なってきた。
「ちょっと…困るよ三木さん。酔ってるでしょ?」
「森田さんのぬくもりを感じたいの。。」
「やばいって!是枝君が来たらまずいことになる。」
「あの人は部長たちと徹夜マージャンするから戻らないわ。」
「Σ('◇'*エェッ!?聞いてないよそんなの。」
「森田さんもマージャンできるの?」
「いえ、できません(^_^;)」
「じゃあいいじゃない。これは神様がくれたチャンスよ。」
「僕にはピンチなんだけど( ̄ー ̄; ヒヤリ」
三木さんは僕の上で浴衣を脱ごうとした。
「ダメだよそんなことしちゃ!」
僕は必死で、ほどけて開いた彼女の浴衣を両手でつかんで胸を閉じようとした。
それでも三木さんは激しく抵抗するので、思わずつかんだ胸元から真横へ投げ飛ばしてしまった。
まるで柔道技が見事に決まったような1本勝ち。
「わっ!しまった( ̄Д ̄;;…だ、大丈夫?三木さん?」
こんなことしちゃったら間違いなく彼女は怒るだろう。
「ちっともやさしくないのね。森田さん。」
三木さんが起き上がりながら言う。
ほら来た!さすがに怒るよなやっぱり。。
でも、申し訳ないことはしたけれど、これで部屋から出て行ってくれるかもしれないし、僕に弁当も作って来なくなるかもしれない。
だとしたらこれで良かったんじゃないか?うん、そうだよ。良かったんだ!
と・・・そう思ったのが非常に甘かった。(⌒-⌒;
「私、森田さんのワイルドな一面が見れて嬉しい!」
「((ノ_ω_)ノバタ なんでやねん!」
「私、少し冷たくされる方が好きなの。森田さんが私の理想に更に近くなったわ。」
「んなアホな。。( ̄Д ̄;;」
「心配しないで。私、前にも言ったけど、森田さんの生活に迷惑をかけるつもりなんて全然ないの。」
「そうでもないような。。(⌒-⌒;」
「森田さんの家族の用事がないときに、たまに会ってくれるだけでいいの。」
「でも今日は…三木さんも見たでしょう?僕の奥さん。」
「ええ。キレイで可愛い奥さんね。」
「だから僕はこれからまたそっちに戻るんだ。家族の用事なんだよね。。ここにはそれを是枝君に伝えに来ただけなんだ。」
「是枝さんは戻らないもの。。お願い!もう少しだけここにいて森田さん。」
「そんなこと言ったって。。」
「朝までは長いわ。私が1、2時間くらい森田さんと一緒にいたって、独占したことにはならないわ!」
「すごい言い訳。。( ̄ー ̄; ヒヤリ」
「森田さんは何もしなくていいからそのままじっとしてて。」
それって…されるがままってことかい?(^□^;A
「それともまた私を投げ飛ばす?レディに対して失礼よ。 (o^-^o) ウフッ」
会社ではいつも控え目な三木さんの異様な変貌ぶりに、僕は一抹の不安を感じた。
このまま僕が拒み続けたら、彼女は逆上してしまいそうな勢いだし、またそんな目つきをしている。
僕はともかく、ゆりかに危害が加わったら大変だ。あるいは三木さん自身が勢い余って自殺さえしかねない。
ごめんねゆりか。。これは浮気じゃないんだ。決して浮気なんかじゃ。。
三木さんがまどろむ目でゆっくりと僕に唇を重ねてきた。。
(続く)