その45 ドキドキ慰安旅行・後編
ドキドキ慰安旅行・後編
●森田ゆりかの視点
私は部屋に戻るまでの長い廊下を歩いていた。後ろからは卓さんがついてきている。
卓さんは宴会場で同僚にからかわれていた。
そんな理由もあって、宴会途中で卓さんを連れ出した私。可哀想な卓さん。
いつもこうなのかな?だとしたらすごいストレス。。
そんな思いで後ろをふと振り返ると彼はなぜかニヤついていた。
「どうしたの?」
「え?いや…ゆりかの後姿も色っぽいなーって(*^.^*)エヘッ」
「バカね。やめてよ。歩いてるだけでしょ!」
「ヾ(´▽`;)ゝ ウヘヘ」
部屋の前まで辿り着くと、ドアのロックを解除して私から先に入った。
続けて卓さんが入って・・・来なかった。
それを遮る不運な出来事が起きたからだ。
「イタタタタタ・・・!!!」
彼の叫び声に驚いた私がドアの外を見ると、なぜか卓さんは知らない男に腕を後ろ手に〆られていた。
よく観るとこの温泉の従業員のようだ。そして私に自信たっぷりに言う。
「お客様、大丈夫ですか?不審者は取り押さえましたので、もうご心配なく。」
不審者って・・・卓さんまた間違えられたのね。。(⌒-⌒;
「ちょっと、僕はそんなんじゃありませんって!」
「言い訳は通用しませんよ。ちゃんと聞いてましたから。そちらのご婦人が『やめてよ』って言っておられたのに、部屋にまで強引に入ろうとしてたじゃないですか!」
「違いますよ。誤解です僕はそんな…」
「往生際が悪いですね。ちゃんと見てましたよ。ニヤついたエロそうな顔でこちらのご婦人の後姿を眺めてたのを!」
「それは当たってるかもしれないけど…(⌒-⌒;」
「そしてご婦人が部屋のロックを開けたとたんに同時になだれ込もうとしていた。どうです?図星でしょう?」
「そりゃ入ろうとはしてたけど、別になだれ込もうとは…( ̄Д ̄;;」
「同じことでしょう。さ、ストーカーさん警察へ行きますか?」
卓さんはいつも不審者に間違われてしまう。もうこんなケースは今までに一度や二度じゃない。
そしてその都度、私が救いの手を差し伸べる。
「あの…その人は私の主人ですから何でもありませんけど。」
「は?(?_?)」
従業員は狐につままれたような顔をして固まった。
「私の主人なんです。腕を放してあげて下さい。お願いします。」
「は、はぁ…。でもお客様は1名様ということでご予約されてますが?」
「ええ、それはそれでいいんです。主人は社員旅行の一員として来てますから。」
「あ〜なるほど。そうだったんですか。」
卓さんが泣きそうな声で言う。
「わかったら早く手を離してほしいんだけど。。(; _ ;)」
「あ、これはこれは失礼しました。ということは私の勘違いということになるんでしょうか?」
「いちいち聞かなくてもあなたの勘違いですっ!」
「それは誠に申し訳ありませんでした。言い訳するつもりはありませんが、私にはご主人が変態ストーカーに見えたものですから。」
「( ̄Д ̄;;言い訳してるし…しかも僕に対して思いっきり失礼な理由で。」
私は再びカチンと来た。
「ちょっと!泊まりのお客様に対して無礼すぎやしませんか?確かに主人は今までにも変態やストーカーに間違えられたこともあります。」
「ヾ(-д-;)ぉぃぉぃ…そんなこと言わなくても…」
「私たちがお似合いの夫婦に見えないこともわかってます。」
「(⌒-⌒;それってちょっとショック…」
「だからって、軽々しく言葉に出してはいけない部分ってあるじゃないですか?まして温泉旅館はお客様商売なのに!」
「は…はい。。(^_^;)」
「うちの主人は小心者なんですから、大したことない些細なことでも深く傷つくんです。」
「だからゆりか、そこまで言わなくても…(⌒-⌒;」
私は少し興奮して声が上ずっていた。
「もし主人が精神的ショックで自殺したら訴えますからね!カ・ナ・ラ・ズ!」
「いや、僕は自殺するつもりないし(^_^;)」
「いいのよ。これだけ言っておかないとナメられるもの。」
と私は小声で卓さんに耳打ちした。
(続く)