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その43 動き出した2つ目の不安

 動き出した2つ目の不安


 ●森田ゆりかの視点


 ここ数日、すぐるさんの帰宅が早くなった。

 定時になったら脇目も振らず、一目散に真っ直ぐ帰って来る早さ。

 きっと彼の反省の意味を込めた行動なのだろう。

 そんなわけで、夕飯の買い物をするために寄り道をする私の方が当然帰りが遅くなる。

「卓さん、夕飯にはまだ時間かかるわよ。」

「うん、わかってる。急ぐことないよ。さっきまでいずみの宿題ちょっとみてあげてたんだ。」

 それを聞いて私は少し嬉しかった。卓さんといずみの仲が少しづつだけど元に戻ってきてる。

「どう?いずみとうまく話せてるの?」

「まぁ、普通かな。でも今日言われちゃったよ。」

「なにを?」

「卓くん、最近お土産がないねってさw」

「(*^m^*)フフッ たまにはケーキでも買ってきてあげて。」

「でも・・・寄り道はあんまり。。」

「お土産買うのに30分も1時間もかからないでしょ?」

「そりゃまぁ。。」

「そんな短い時間で浮気なんかできると思ってませんから。」

「ヘ( ̄ω ̄|||)ヘぎくッ!・・・きっついなぁ(^_^;)」

「無理に早く帰ってきてることくらいわかってるわよ。」

「ヾ(´▽`;)ゝ エヘヘ」

「あのことについては、卓さんが騙されたってことで納得してるわ。」

「ほんとに?許してくれるの?僕を。」

「それはまだちょっと早いかな。」

「あら(ノ _ _)ノコケッ!!」

「だって誰がなぜ卓さんにこんな罠を仕掛けたのか、相手の目的が全然わからないもの。お金を要求してきたわけでもないし。」

「ゆすりってこと?」

「でもそれなら写真は私のとこよりも卓さんの手元に渡すはずだし…」

「うん。。これは面白い謎解きだねぇ。」

「は?面白い?」

私は卓さんをギロッと睨んだ。

「いやいやいや、面白くもなんともない謎解きだねぇ(^_^;)」

「まったくもう…(;-_-) =3 フゥ 」

 人ごとのように言う彼に一瞬カチンときたけれど、ホントに浮気をしていたとすればこんな態度はできないと思うし。

 私が卓さんに惹かれたのは根が真っ直ぐなところ。ウソがつけないところ。

 それに独身時代、私は一度彼を突き放したのに、その間も一途にずっと私だけを思い続けてくれたこと。

 そのことを考えると卓さんに疑いをかけるのは良くないかもしれない。

 でもまだ他にひとつ、どうしても気がかりなことがあるから気持ちが晴れない。

 卓さんはウソがつけなくても、隠し事はできるということ。

 元々彼は引っ込み思案で、自分の思いを自身の中にしまいこんでしまうこと。

 言いたいことや言うべきことのタイミングをいつも逃してしまうこと。

 彼の口から三木綾乃のことを話してもらえたら1番スッキリするのに…

 でも私からそんなことは彼に促せない。

 私が是枝さんから情報を入手したのがわかってしまう。


 三木綾乃って一体どんな子?

 この問題さえなかったら私はどんなに気が楽になるだろう。


「ねぇゆりか、お願いがあるんだけど。」

 キッチンに立っている私に不意に卓さんが話しかける。

「え?なあに?」

「あのさ…ケータイ壊れてからまだ買い換えてないんだけど。」

 そうだった。そういえば卓さんはいずみの授業参観の日に学校でケータイを落とした上に踏んづけてグチャグチャにしたんだった。

「卓さん、もっと早く言ってくれればいいのに。すっかり忘れてたわ。」

「僕のドジだから言いづらくて…(⌒-⌒;」

「いいわ。土曜の休みまでもうすぐだから、買い替えに行きましょう。」

「うん、ありがとう。」

 

 家の財産管理は全て私に任されている。

 卓さんのお給料も家族の通帳も全部私の担当。

 だからケータイを買うのも私からお金を出さないと卓さんは何も買えない。

 結婚したとき彼は最初からその方がいいとお願いしてきたからだった。


 (゜〇゜;)ハッ…!!


 このとき私は気がづいた。

 卓さんのケータイが壊れているのを何日も忘れていたということは、それだけ彼とメールも電話もしていないということ。

しかもそれでいて困ったことなど全然なかったのだ。これでは夫婦のコミュニケーションや連携などあったものじゃない。

 今回こんな罠にハマってしまったも、私の心の隙を突かれたようで、自分自身の責任を感じた一瞬でもあった。


 夕食後、寝室に取り込んだ洗濯物を片付けに戻ると、ドレッサーの上に置いてある私のケータイにメールが1通届いていた。

 それは是枝さんからだった。


“すでにご主人から聞いてるかもしれませんが、○月△日の土日にかけて、1泊で会社の慰安旅行があります。少し酷な提案ですが、ゆりかさんもいらしてはどうでしょう?もちろん会社のマイクロバスには乗れませんし、交通費や宿泊費も自費になりますが、三木綾乃の顔を確認できますし、あなたが家にいて不安な思いに苛まれるよりはいいのではと思いまして”


 私はこのメールに機敏に反応した。そしてリビングでテレビを観ている卓さんに一言。

「そういえば、そろそろ会社の旅行がある時期じゃない?」

「あ!そうだった。そういえば1泊で温泉に行くことになってるんだった。」

「……ちゃんと早く教えといてね。1泊でも準備するものは買い揃えなきゃなんないでしょ!」

「うん。。ごめん。」

「で、私も行くことにするわね!」

「・・・・・は?(?_?)」

「私も温泉好きだもん。もちろん自費だし、私が自分で運転して行くから。いずみはママとパパのところに頼むわ。」

「なんでまたそんなことを…?」

「ダメ?」

「いや、ダメじゃないけどさ…」

「私たち、ずっと共働きでまともに卓さんと旅行したことないじゃない?」

「そうだけど、わざわざ会社の慰安旅行なんかに…普通の週末に家族だけで行った方が…」

「でもそれが実現できてなかったでしょ!それに卓さんは毎年、会社の積み立てから旅費が落ちるからお得でしょ!家族だけで行けば2人分旅費がかかるわ。」

「なるほど。。節約できるってことね(⌒-⌒;」

「ええ、そうよ。いいひらめきでしょ? (o^-^o) ウフッ」

「ま、まぁね。。(^_^;)」

             (続く)


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