その35 予想外のショック
予想外のショック
●森田ゆりかの視点
「あの…是枝さん、ちょっと警戒しすぎじゃありません?」
「いえ、そんなことはありません。ゆりかさんに迷惑をかけてはいけませんから念には念を入れたまでです。」
「はぁ…(^_^;)」
是枝さんは私と待ち合わせ場所にネットカフェを選んだ。そして今こうしてダブルブースの少しゆったりしたソファに二人で座っている。対面ではなくて、隣同士だからなんとなく落ち着かない。
「僕とゆりかさんが公な場所で偶然知り合いにでも目撃されたら勘違いされるのは目に見えてわかりますからね。」
「それはそうなんでしょうけど…でもネットカフェでおしゃべりしたらマズイんじゃないですか?」
「だからこうして小声で話してるんです。席も一番奥の隅っこにしたのもそのためです。」
「でも隣の席に他のお客さんがいるみたいですけど^_^;」
私が小声でそう言ったのが聞こえたのかもしれない。隣の誰かが席を立って、他の離れた場所へ移動する音が聞こえた。
「どうやらお隣さんが気を利かせてくれたようですね。」
「話し声で気が散るからだと私は思いますけど(^_^;)」
「ま、とりあえずは話しやすくなったでしょう?」
「ええ…」
「昼の電話で郵便物がどうのこうの言ってましたが、詳しく教えていただけますか?」
「はい…実は宛名不明でうちに写真が送られて来まして。。」
「それを僕が送ったと思ったのはなぜですか?」
「それは…」
私は一旦話すのをためらった。それは自分の家庭の恥の上塗りではないかと一瞬思ったから。でもそれじゃ真実は永遠に見えない。うやむやにすればこの先苦しむのは私。
そう思いなおして今度はハッキリと是枝さんに伝えた。
「それはこの前、あなたからうちの主人と三木綾乃という同僚の女性が怪しい関係だと聞いたからです。」
「…それと送られて来た郵便物とどんな繋がりが?」
「その郵便物には写真が入っていました。その…主人が若い女性と歩いて怪しいお店に入って行く所とか。。」
「Σ( ̄□ ̄;ええっ!?」
是枝さんは寝耳に水といった感じで、本当に驚いた様子だった。
「なるほど。それで僕がその証拠写真を撮ってゆりかさんに送ったのだと思われたんですね。」
「ええ…でも違うんですよね?」
「はい。僕じゃないですね。」
「じゃあ一体誰が…?」
「ん〜今のところ僕に心当たりはないですが。。ゆりかさん、今その写真をお持ちですか?」
「ええ。一応バッグに入れてきたので。。」
「よろしかったら見せてもらえますか?」
私は正直悩んだ。写真を送って来た本人ではない人に見せてもいいものだろうかと。もしそれで写真の相手が三木綾乃さんだと確認されたら私はどんなショックを受けるんだろう?
私が躊躇しているのを是枝さんは察したようだ。
「すみません。無理にとは言いません。ゆりかさんの今の気持ちも考えずに僕が図々しいこと言ってしまって。」
「いいえ。そんなことないです。決してそんなこと。」
私は自問自答した。
“これで終わらせていいの?是枝さんに相談すると決めてここまで来たのに意味ないじゃない!彼はパパの信頼も厚かった人。きっと何かあった場合に解決策も考えてくれるかもしれない。”
私は彼に写真を提示した。
「ごめんなさい。少し気持ちに抵抗があって。これです。見てください。」
私が手渡した写真を見るや、なぜか是枝さんは『え?』というようなしかめっ面になった。不思議に思った私が更に小声で彼に問いかけた。
「主人のとなりに写っている人…この人が三木綾乃さんという人なんですよね?」
このあとすぐに、私は予想もしない答えを聞くことになる。
「違いますね。。三木綾乃さんではありません。」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lえええっ!!?」
今までとは全く別なショックが私を襲う。
「そんな…じゃあこの女は一体誰なんですか?主人と何の関係が?」
「…ん〜、僕にもこの女性は誰かわかりません。少なくともうちの会社では見かけたことはない…ですねぇ。」
「一体、主人に何が起こっているんでしょう?三木綾乃の他にも女がいるってこと?」
「ゆりかさん落ち着いて下さい。ここは特に冷静に。」
「でも…でも。。」
動悸がして息が苦しくなった。
「大丈夫ですか?ゆりかさん。安心して下さい。僕があなたを助けますから。今は事情がわからなくても、きっと調べてハッキリさせます!僕がお約束します。」
今、私には頼れる人は是枝さんしかいない。そう、彼なら信頼できる。パパが絶対的信用してきた人だもの。
「すみません。お願いします。。」
是枝さんと別れて家路に向かう途中で私の頭にずっとよぎっていたこと。
『正体のわからない謎の女』『写真を撮った第3者』『三木綾乃という女』そして何より卓さんの行動。
卓さん…今まであなたを信じて疑わなかったのに。。
どうしてこんなことに。。。
(続く)