その33 不幸の写真
不幸の写真
●森田ゆりかの視点
それを見た瞬間、私の心臓が大きくドクンと鳴った。
今、私の手元には写真が5枚。それには卓さんと派手めな服装の女性が一緒に写っている。その5枚はおそらく連写したと思われ、卓さんと女性が見慣れぬお店に入るまでの過程が記録されていた。
日付はいずみの参観日があった日のお昼ごろ。夕方からは新入社員の歓迎会と聞いていたけど、その時間よりもかなり早い。
“ウソ…信じられない” 私にはその一言しか浮かんでこない。
先週、是枝さんから話は聞いていたけど、この目で確かめるまでは信じたくもなかった。
でもこうして今、まぎれもなく証拠写真がここにある。
『この人が…三木綾乃って人…?』
私は呆然としたまま動けなくないでいる。
せっかく今日は楽しく遊園地に行けたのに。。
いずみと卓さんの仲が少し直りかけたのに。。
それは遊園地から帰宅後のこと。私が玄関のポストの中身をチェックすると、差出人不明で私宛の郵便物が届いていた。
とりあえず部屋で外出着から着替えて、卓さんが先にお風呂に入ってる間に封を開けたのだった。
数分間、動けなかった私だったけど、少しだけ落ち着きを取り戻した。でも写真の事実を心で否定しているのは同じ。
『なんとか冷静にならないと…』
かつての私は早合点もあったし、思い込みも激しかった。同じ失敗はしたくない。
次の数分間、私は写真をじっと見つめながら冷静に考え込んだ。
よくよく考えてみても、卓さんが綺麗な女性にモテる要素は見当たらない。私のようなタイプの女性がいれば別だけど、果たしてそんな人がいるんだろうか?
それにこの写真は本物だろうか?今はパソコンで簡単に加工できるし。それに…
『そうよ!そうだわ。たとえ写真が本物でもこれは浮気の証拠にはならないわ!』
私に明るい兆しが突然見えたのは1枚の写真にも幾通りもの解釈ができること。
偶然職場の子とバッタリ遭遇してお茶しただけかもしれないし、お得意様の女性と商談だったのかもしれない。
あるいは卓さんがまたドジをしたために、勘違いされてお茶でもおごらされたとか…
そう考えると少し気が楽になった。それなら卓さんに聞けばハッキリするのだろうけれど、怖くて聞けない私もいる。
「ゆりか、上がったよ。次どうぞぉ。」
「(゜゜;)ギク!」
お風呂から出て来た卓さんの声が廊下から聞こえてきた。私は急いで写真を片付けて何事もなかったように振舞う。
「はーい。すぐ入りまーす♪」
すぐに卓さんが部屋に入って来てため息をついた。
「ε- (^、^; ふぅ。やっぱりお義父さんといると疲れるよ。」
「そう?観覧車の中でパパと仲良く話してたのかと思ったけど?」
「そりゃ少しは話したけどさぁ。」
「共通の話題とかなかったの?」
「それが全くないんだよねぇ(^_^;)」
「じゃあどんなこと話したの?」
「いやその…夜のエッチのこととか…」
「Σ('◇'*エェッ!?」
「いや…なんでもない。聞かなかったことにして(^□^;A」
「もうパパったらっ!いつからエロオヤジになったのかしらっ!(`⌒´)」
「早く孫の顔が見たいのかも…?」
「いずみがいるのに。。」
「ねぇ、今夜…頑張ろっか?<(; ^ ー^) 」
「…うん。。いいよ(*v.v)」
正直、今はそんな気持ちになれないけど、卓さんが私を求めてくれているってことは浮気に関しては“潔白”ではないかと思った。
だとすると、別な疑問がまた沸いてくることになる。
是枝さんの言ったことは全てウソなのかしら?だとしたら何のために?
あの写真を撮って送りつけて来たのは誰?それも是枝さん?
いや、それは違う。写真の時刻に彼はこの家で私と話している。
どっちにしても謎だらけ。。やっぱり卓さんに事情を聞くしかないのかな。。
でも今夜はやめておこう。卓さんの気持ちが萎えてしまったら子作りできないもの。
その2日後、私が仕事から帰宅していつものようにポストをチェックすると、また私宛で差出人不明の封筒が1通入っていた。
急におとといの不安が蘇る。とにかく確認しなければ先に進まない。私はゆっくり封筒を開ける。。
やはり中身は写真のようだ。私の鼓動が更に激しくなる。
いやな予感が的中した。その写真を見て私に激震が走った。
卓さんの上半身が裸だった。それだけならまだしも、彼は後ろ手に手錠をかけられ、目隠しまでされている写真。
全く意味がわからないでいる私。
“卓さん…誰かに脅されているの?”と最初は思った私。
(゜〇゜;)ハッ!!
すぐに私はこの写真の別な意味を理解した。
これって…もしかして“プレイ”なんじゃ…?+
(続く)