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その21 まりもの恩返し

まりもの恩返し


 倉沢まりもは約束の時間より早目に待ち合わせ場所に着いてしまった。

「私としたことが・・ちょっと早かったようね。」

 彼女は辺りを見回して、森田がまだ来ていないことを確認すると、その近辺の建物の陰に隠れて様子をうかがった。

 森田のようなブ男のために、この自分がわざわざ時間まで待機してるなど、屈辱意外の何ものでもなかったのである。

 それにこんな真昼間に森田と外でツーショットなんて、他人に見られるだけでも恥ずかしい。

 彼女はこの日のために、近くのある店に予約を入れておいた。この場所からすぐに路地裏に入る目立たない店だ。これなら森田と肩を並べて歩いても人目はそれほど気にならない。

「とにかく彼を見かけたらこっちに引っ張りこまなきゃ。。」


 約束の時間に差し掛かったころ、森田卓がトボトボと歩いて来るのが見えた。

「へぇ、ワリと時間にはキッチリしてるのね。」

 少しだけ感心したまりもは、ゆっくりと彼に側面から近づきサッと素早く片方の腕を掴んだ。

「森田さん、こっち。」

「えっ?え??あ、まりえさん・・」

「まりもですっ!(^_^;)」

「ありゃ、すみません。今日はわざわざどうも…」

「挨拶はあとでいいからこっちこっち。」

「??はぁ…あのーお急ぎなんですか?」

「私、人ごみあまり好きじゃないの。」

「な、なるほど。」

 と相槌を打った森田卓だったが、本当の理由がそうではないことくらい、今までの少ない経験から薄々感じ取っていた。


 人通りもまばらな裏通り。森田とまりもはゆっくり歩きながら話し始める。

「森田さん、今日は黙って私にお礼させてね!」

「ホントに悪いですよ。僕、大したことしてないのに。」


『それはそうなんだけどね。。^_^;』


とまりもは心の中で返答をしたが、表情にはみじんも出さないで対応する。

「とんでもない。私、森田さんがいたから無事に帰宅できたのよ。そうじゃなかったら暗い夜道に起き上がれないまま車にひかれてたかもしれないもの。」

「そ、そうですかねぇ?(^_^;)」

「遠慮しない遠慮しない。」

「あの…そんな高いものはいりませんから。安売りか処分品で充分ですし。」

「あぁ…えっとね、それについては安心して。何も買ってあげないからw」

「(ノ _ _)ノコケッ!!あれま。」

「物でお返しするのってやっぱり良くないと思ったの。そんなの持って帰宅したら森田さんの奥さんにバレるに決まってるじゃない?」

「確かにそうですね^_^;」

「でしょ?だからそんなんじゃなくて、別な形でお礼をしようと思ってお店を予約しておいたの。」


 これを聞いた森田卓は、まりもが食事をおごってくれるものだと判断した。

「すみません。じゃあお言葉に甘えてごちそうになります。(*^.^*)エヘッ」

「え?ま、まぁごちそうって言えるかわからないけど、カウンターバーで好きなお酒は飲めるから。」

「は?昼間っからお酒飲むんですか?」

「飲んでも飲まなくてもいいけど、森田さん車で来た?」

「いえ、電車です。。」

「じゃあちょっとくらい平気じゃない。メインはお酒じゃないんだし。」

「んんん???」

「 (o^-^o) ウフッ ピンと来ないようね。もうすぐ着くからすぐわかるわ。あ、見えた!あそこよ。あそこのビルの3階。」

 まりもが指さす方向の看板を目で追った森田は仰天した。

「あ、あそこって、もしかしたらカップル喫茶じゃ…?」

「あら、行ったことあるの?」

「いえいえいえいえいえ、とんでもない!」

「別に行ってたってとんでもなくないわよ。」

「いえいえ、僕にとっては未知な世界で。。(^□^;A」

「知らないクセになんでそんなに焦ってるの?(*'‐'*)ウフフフ♪」

「そ、それはその…たまに週刊誌なんかで観ますから。。」

「じゃあこの機会に一緒に体験しましょ!」

「Σ('◇'*エェッ!? まりもさんとですか?」

「特別なことは考えなくてもいいのよ。ちょっとムードのあるお部屋で普通におしゃべりしたりお酒飲んだりするだけよ。」

「ム、ムードのある部屋…?( ̄ー ̄; ヒヤリ」

「そこばっかり考えないで。オープンスペースな場所もあるんだから。」

「はい、すいません。。」

「これが私の森田さんへのお礼よ。どう?」

「どうって…なんか緊張しまくってきました僕。まりもさんはよく来るんですか?」

「 会員だからたまにね。森田さんの会社の部長さんともここで知り合ったのよ。」

「Σ('◇'*エェッ!?ホントですか?」

「ここだけの話にしてね。」

「は、はい。でも若干社内ではもう噂も出てまして。。」

「あらそうなの。部長さんがすごいドMだってこと?」

「やっぱり本当だったんですね(^□^;A」

「誰か目撃者がいたのかもね。私は痛くもかゆくもないんだけどね。」

「・・・・・( ̄Д ̄;;」

「さ、着いたわ。入りましょ。」


 まりもは入店する直前、森田に気づかれないように後ろを振り返って確認した。

 その目線の先の物陰には、カメラを携えた一人の男性が潜んでいた。


『慎也…うまく撮ってよね。アタシだってこんな男とはこれっきりにしたいんだから。』

            (続く)


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