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その2 救いの神ゆりか

  その2

           救いの神ゆりか


●森田ゆりかの視点

 私は職場に着くなり、すぐるさんからの着信を受け取った。

どうやらまた不審者と間違われたらしい。

すぐさま私は上司に適当な理由を言って一時職場を離れる許可をもらった。

もちろん旦那様が交番で捕まっているなんてバカ正直な報告はしなかった。


 20分後、彼のいる交番にたどり着くと、20代前半と思える女性と、イブシギンで頑固そうな警官が座っていた。

特に会話をしているふうでもなく、もうすでにしゃべり尽くしたという雰囲気。

 卓さんは私を見るなりペコペコ謝りはじめた。

「ゆりかちゃんごめん。ホントにごめん。もう職場に着いてたんじゃ・・?」

「ええ。ちょうど着いたとこだったの。」

「いやホントに申し訳ない。。」

「そんなに謝らなくてもいいよ。まるで自供してるみたいじゃない。」

「いやいやいやいや、決してそんなんじゃなくて・・」

 私は警官の方を向いて問いかけた。

「すみませんが、とにかく詳しい事情を教えて下さいますか?」

 警官は呆然と口をポカンと開けた状態で固まっていた。

その隣にいる女性も目を見開いて私を食い入るように見ている。

「あ、あの・・あなたがその・・森田卓の。。」

「はい。家内ですけど。」

「いやー、びっくりしました。あまりにもお綺麗なもんで。」

「それはどうも。」

「まさかあなたとこいつ・・いや、森田がご夫婦とは・・(^_^;)」

「よく言われるんですけどね( ̄Д ̄;;」と卓さんが言う。

そばにいる女性も間に口を挟んできた。

「美女と野獣っていうんじゃくて、美女と草食動物みたいw」

「大きなお世話ですっ!」

私はその子に一喝した。だがその子も結構気が強いようだ。

「本当の夫婦にしては呼び方がおかしいんじゃないですか?」

「これがうちでは普通です。」

「旦那さんが奥さんをゆりかちゃんて呼ぶのキモい!アタシだったらヤダな。」

「あなたは私じゃないんだから例える必要もないでしょ!」

「それもそうね。アタシが選ぶタイプの人とはかけ離れてるし。」

「ヽ(`⌒´)ノムキィ!私は外見で人を判断してないのっ!」

 ここでイブシギンの警官が止めに入った。

「まぁまぁそのへんで。本題からそれて来ましたので事情の説明を私から始めましょう。」

「あ・・すみません。。」


 数分間の説明のあと、警官が改めて言った。

「こんな綺麗な奥さんがいるのに、君がくだらない下着ドロボーするなんて考えにくくなって来たなぁ。」

「でしょでしょ!」と卓さんがすかざず同調する。

 すると若い女性の方も反論を始める。

「意味が違うわ。変態は色んな下着を集めるのが趣味なのよ。地味で毎日見慣れてる下着なんかに興味はないわ。」

私は机の上に置かれている下着を見て、またカッとなってしまった。

「こんな下着、彼がわざわざ捕らなくても私の方がもっとすごいの持ってますっ!」

一同唖然。。。私としたことが・・(^□^;A



●森田卓の視点

 さすがに僕も驚いた。

(こんなに熱くなるゆりかちゃんを見るのも久しぶりだな。それにしても、そんなすごい下着持ってるとは知らなかった。。家で見たことないけどなぁ。。あ、僕のバカ!今そんなこと考えてどうすんだよ!)


 おまわりさんが体裁悪そうに話し出した。

「えーっ・・また本題がズレてしまったようなので元に戻しましょう。とにかく、彼のカバンの中に彼女の・・失礼、お嬢さんのお名前をまだ聞いてませんでした。教えていたでけますか?」

「えっ?・・それはちょっと。。」

「何か問題でも?」

「もしこの人がストーカーだったら電話されても困りますし。。」

「だから僕はそんなんじゃ・・」

「下着がカバンの中にあったのは事実なんですから、それだけで決まりじゃないんですか?おまわりさん。」

「まぁ、ひとつの証拠にはなるんだが・・確定的とは。。」

 

 その時、僕のゆりかちゃんが割って入った。 

「ちょっと名無しのあなた!うちの主人があなたの下着を盗んだ瞬間を目撃でもしたんですか?」

「瞬間は目撃してませんけど・・」

「見てないなら、決め付けることなんてできないでしょ。」

「でも匂い嗅いだり広げたり急いでカバンに隠すのは見ました。」

「その理由は私が来る前に彼が言ったんでしょう?持ち主の確認と、この交番に届けるためだって。」

「信じられません。」

「その信じられない理由が私にはわかりません。盗んだ瞬間を見ていないのに言い張るあなたの発言こそ私は信じられません。」

「あなたは奥さんだからかばいたいだけなんでしょ?アタシなら旦那でもとっくにキレてるけど。」

「私は彼の奥さんだからわかるの。主人はこんな大胆なことができる器じゃないわ。」


 ( ̄Д ̄;;・・これってほめられてるのかな?


「それに今日はこんなに風が強いじゃないですか。ベランダに干していた下着が風で飛ばされたと考えた方がごく自然だと思いますが?あなたが目撃したとき主人はどこにいましたか?」

「・・ベランダから見える下の路地ですけど。。」

「あなたのマンションは何階?」

「2階。」

「ほらね。主人がわざわざ朝からマンションをよじ登って大胆にベランダから下着を盗むなんて話の方が信じられないでしょう?」

「でも空き巣とかドロボーは真昼間に起こるものじゃないですか!」

「主人は出勤途中だったのよ。いつもギリギリに出社するの。そんな主人がロスタイムを作るはずありません。」


 (ここでギリギリ出社って言わなくても・・( ̄Д ̄;; )


「だってこの人、動きも不審だったし・・顔も。。」

 ゆりかちゃんはここぞと言わんばかりに語気を強める。

「主人が信用されないのは顔のせい?」

「ええ。一番の理由はそうよ。」


  ((ノ_ω_)ノバタ 僕はそれだけで。。


「おまわりさんもそうなんですか?」

「いや、なんというかその。。」


 (キッパリ違うって言ってくれないのか(⌒-⌒; )


「確かに主人は変態みたいな顔してるかもしれません。」


 (Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lゆ、ゆりかちゃんまで。。


「でも主人は心優しい気立ての良い人なんです。自分にウソもつけませんし、飾ることもしません。小心者ですが人に迷惑をかけることだけは絶対しないというポリシーを持ってます。」


 (えと・・僕はどう考えたらいいんだろ?( ̄ー ̄;  )


「おまわりさんは人を顔で判断してるんですか?名無しのあなたはどうせ第1印象で全てを決め付けるんでしょうけど。」

「・・・・・」

「最後に言わせてもらいますが、以上の点からして、主人がわざわざベランダをよじ登って捕ったとでも?それとも超能力で下着を路地まで呼び寄せたとでも?家には私がいるんだし、隠してもおけないでしょう。主人がそんなことをする理由もありません。私はそんな人を結婚相手として選んだ覚えはないですから。」

「でも・・」

「それでもあなたは主人を訴えますか?それならそれで私は堂々と受けて立つわよ。そして絶対勝ちます!いかが?」


 (すごい・・(^_^;)さすがゆりかちゃん。たたみ掛ける口撃だw)


 僕は彼女を尊敬の眼差しで見ていた。決めるところではキッチリ決める。

でもこうして助けてもらうのは独身のころから含めて何度目だろう。。

僕自身、もうちょっとしっかりしなければゆりかちゃんに愛想つかせれちゃうかもしれない。ホントしっかりしないと。。


 結局、名前の明かさなかった若い女性は訴えを退けた。

僕はゆりかちゃんのおかげでめでたく無罪放免となったのだ。


 交番を離れてホッとしながら僕たちは並んで歩いていた。

結婚してから1年半、いまだに行きかう人たちは僕たち夫婦を見る視線が驚きの眼差しだ。そんなに違和感あるのかな。。(-_-;)


「ねぇ、卓さん。」

「ん?何?ゆりかちゃん。」

「その呼び方なんだけど、もう呼び捨てでいいよ。」

「え?でも僕は人を呼び捨てにする習慣ないし。」

「でもさっき言われたじゃない。あの子に。」

「うん。。」

「それに私が卓さんを尻に敷いてるってまわりに思われたくないの。わかる?」

「そ、そりゃ。。」

「なんかすごく気の強いタカビーな女に見られてそうでイヤなの。」

「ごめんね。僕がもっとしっかりしていればこんなことにはならないのに。」

「それが卓さんだもの。気にすることないわ。でも・・ちょっとはしっかりしてねw」

「はい。。」

「はいじゃなくて、『あぁ、わかった』とか言うのよ。」

「なんか照れちゃうよw」

「徐々にでいいから。」

「うん。でもあの言葉にはびっくりしたなぁ。」

「どんな?」

「私もっとすごい下着持ってますってw」

「あー、あれはハッタリよ。」

「(ノ _ _)ノコケッ!!やっぱり。」

「だって家で見たことないでしょ?」

「どこかに隠し持ってるのかとw」

「バカね!」

「あ、じゃあ僕はこっちの道から職場に戻るから。」

「うん。じゃあね。いずみのクリスマスプレゼント考えててね。」

「あ、あぁ・・わかった!」

「 (o^-^o) ウフッ うまく言えたわよ。」

「(//▽//)デへへ。」


 ここまでの僕たちは、多少トラブルもありながらも順調に幸せな結婚生活を送っている。誰がどう思おうが僕は構わない。けど、彼女は僕と一緒にいるところ人に見られて全然平気なんだろうかと思うこともある。

いつかこの幸せが崩れはしないかと頭をよぎる不安も僕にはつきまとっていた。



 道を二手に分かれて行く森田卓とゆりかを車の中からじっと見ている人物がいた。

サングラス越しに、その一方の後姿を目で追っていた。

「森田卓・・・あれがターゲットね。。」

                (続く)


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