その19 山なし谷あり(前編)
山なし谷あり(前編)
●森田卓の視点
あぁそっかぁ…前からじゃなくて後ろの扉から入れば良かったんだ…(⌒-⌒;
今更気づいたところでしょうがない。もうまわりに笑われてるし、やり直しもきかない。
どうして僕はいつもこうなんだろう。人より目立とうなんて全然思ってないのになぜか目立ってしまう。
イケメン男が、そこにいるだけで自然に目立っているのとは訳が違う。
僕はいつもドジな奇行をやらかすために不自然に目立つ。
特に慣れない場所に来ると必ずそうだ。今日もいやな予感がしたんだ。。
(;´Д`)はぁ〜 だから参観日なんて来たくなかったんだ。。
「あのー・・すみませんがお父さん。」担任の先生からまた声がかかる。
「ひょっとして外履きで来られたのでは…?」
Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lあっ!!
そうだったのか…僕はスリッパも履かずにそのまま廊下を歩いて来てしまったのか。しかもスーツにスニーカーとは。。( ̄Д ̄;;
「す、すみません。すぐ脱ぎますので(^□^;A」
僕はすかざず靴を脱いで小脇に抱えた。教室内、大人も子供も含めて大爆笑されたのは言うまでもない。
かなり体裁が悪かったが、小走りでなんとか教室の一番後ろに辿り着き、黒板の方へ振り返って参観の体勢を整えた。それでもまだ生徒全員がクスクス笑いながら僕にチラチラ視線を浴びせている。
そんな中、僕のすぐ目の前の机に座っている女の子一人だけが僕を見ていなかった。
その子は背中を丸めて机にうずくまるような格好をしている。
そう…それが我が子・いずみだった。
僕は本当の父親ではないけれど、我が子と思ってこの1年半やってきた。でもいずみ自身はおそらく違う。
別に仲が悪いわけじゃない。彼女にとって僕は友達感覚なのだ。
この場面、いずみは明らかにバツが悪そうにしていた。僕は小声でもいいから彼女に謝るべきなのか考えた。
でもここで彼女に話しかけるとまた予想もできないことが起こるかもしれない。だいいち授業中だ。先生から私語の注意でもされたらまた目立ってしまう。
ここは黙っていた方が利口だ。何もしないで突っ立っていればいんだ。その方が目立たない。僕はイケメンなんかじゃないからオーラもないし。。
(続く)