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その18 緊張の父親参観

 緊張の父親参観


 ●森田卓の視点


 たぶん今日はお金がいる。いずみの授業参観は問題ないけど、心配なのはそのあと。

 まず午後にまりもさんとランチをする。昨日の彼女からのメールで12時半に待ち合わせが決まった。

 何かお礼をしてくれるとはいえ、食事代まで払ってもらうわけにはいかない。

 あんな綺麗な人だったらラーメンや牛丼なんて食べないだろう。コース料理を食べたとしたら1万円はいる。

 

 そして夕方の5時からは三木さんと待ち合わせ。たぶん彼女とも食事することになるかもしれない。

 僕はゆりかにウソをついた。午後から新入社員の歓迎会だと言って、参加費用と交通費を家計から出してもらったのだ。

 このことで僕は家を出てから学校に着くまでずっと、ゆりかを騙した後ろめたさに心が痛んでいだ。

『ごめん。。ゆりか。。これ1回きりだから。。』


 

 いずみの学校へは、わざと遅れ気味に行くようにした。

 自分で言うのもおかしいけど、僕は非常にシャイなので、他の父親が誰も来てないうちに自分が一番乗りになるなんてとんでもない話だ。

 人より目立たないためにも、僕は授業の途中からそっと教室に入ろうと決めていたのだ。

 正面玄関のロッカールームを過ぎ、ゆりかから聞いていた通り、階段を上って2階へ行き、すぐに左の通路に曲がるといずみのいる3年生のクラスだ。

「さてと、着いたぞ。ここは3年…1組……」


 (゜〇゜;)ハッ!!


 僕はとんでもないことに気づいた。というか、今まで全く気づかなかったことに気づいたと言った方が正解かもしれない。


 いずみって3年何組なんだろぉ…?(~ヘ~;)

 

 僕は慌ててケータイでゆりかを呼び出そうとするも、焦ると必ずドジをやらかす自分の習性を見事に発揮してしまうことになった。

 

     カッシャーン!!


 Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lし、しまったぁぁぁぁ!!


 堅い廊下に思い切りケータイを落としてしまったのだ。しかも開いてから落としたので、液晶画面が割れている。

「…ヤバイ( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)もう使えない。。」

 2ヶ月前に買い換えたばかりなのにもうこの有様。僕ってホントにどうしようもないドジ野郎だ。

 でも今はケータイのことよりも、いずみが何組にいるのかを探すことが先決だ。

 果たして一体どうしたらいいものか。。



 ●3年6組内にて


 授業が始まってからだいぶ時間か経っているのに、森田卓はまだ来ていない。

『このまま来なけりゃいいのになぁ』

 いずみは心ひそかにそう期待していたものの、その願いは次の瞬間モロくも崩れ去ることになる。

 彼女の席は一番後ろの真ん中。教室の後ろ側の扉を横目でチラチラとチェックしていたが、今だ気配もない。

 いずみは小さなため息をついて、顔を前に向きなおしたその時、教壇横の前側の扉が遠慮がちにゆっくり開いのである。

 

『いやな予感がする。。(⌒-⌒;』


 いずみの予感は的中した。ゆっくり開いた扉のかなり低い位置から顔を横にかしげて覗き込んでいる一人の大人がいた。

 そう、彼は森田卓その人だった。彼は前傾姿勢で自分の体を扉の脇に隠し、顔の半分だけで中を覗いていたのである。

 そしていかにも不自然極まりないこの男に対し、教室内の生徒が一斉にマジマジと彼の方に振り向く。


『・・・( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)しまった!前側のドアを開けちゃった。。』


 卓はそのままドアをゆっくり閉めようとすると、担任の教師に呼び止められた。

「あのちょっと…うちの生徒のお父さんではないんすか?」

 担任が卓に近寄って来た。彼はは遠慮がちに答える。

「え、えぇ、たぶん。」

「たぶん?」

「この学校は3年7組ってあるんですかね?」

「いえ、3年生は6組までですけど?」

「そ、そうですか。じゃあここに間違いないかな。」

「は?」

「いやその…1組から順番にあたって来たもんで。(´▽`;)ゝ ウヘヘ」

「……(・_・)」

 卓と担任の間に何とも言えないような間が一瞬あったものの、担任がすぐに機転を利かせて卓を誘導した。

「親御さんでしたら他の皆さんも教室の後ろで参観しておられますのでどうぞご遠慮なく。」

「は、はい。すいません。では…」


 普通こういう場合、一旦前のドアは閉めて、後ろのドアから入り直すものだが、森田卓の頭にはそんな常識などみじんもなかった。

 彼はは再びこのドアを開けて、教室の前から遠慮がちに背中を丸めながら中に入って来たのだった。

 そしてそれは、まわりの生徒や参観に来ている父親たちに失笑されているのに彼が気づいた瞬間でもあった。

 当然、いずみもそれは敏感に感じ取っていたのは言うまでもない。

 いずみは卓に気づいてもらいたくなかった。彼が前から通路を通って後ろに来るまでずっと机にうずくまって顔を伏せていたのである。


『卓くんのバカぁ…(・T_T)』

             (続く)


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