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その15 お弁当の思惑

 お弁当の思惑


 「高校生みたいなことしちゃった・・(//▽//)」

 森田卓に自分の手作り弁当を手渡した三木綾乃。

 少し緊張はしたものの、そこまではワリとすんなり実行できた。

 でもなぜか徐々に恥ずかしさが込み上げてきて、森田と同じ室内にいることができなかった。

 いつもなら、自分のデスクで弁当を食べるのだが、今は社員食堂内の奥の片隅に目立たぬように腰掛けてそっと自分の弁当をほどいている。

『森田さんはどう思ったんだろう。。食べてくれてるのかな・・手紙は先に読んでくれたのかな。。』

 綾乃は自分の弁当を渡す前よりも、今の方が鼓動が明らかに激しくなっていた。

『あ〜、どうしよう・・午後からちゃんと森田さんの顔を見れるかしら。。やめとけば良かったのかな。。』

 今更ながら後悔の念も少しだけある。だからと言ってこのまま何も行動しないと後で余計に後悔するのは必定。

『うん。やっぱりこれでいいのよ。私は間違ってない!でも・・・』

 そう自分に言い聞かせる綾乃ではあるが、どうしても悩んでしまうのはこれからする彼との会話。

『最初になんて話しかけたらいいんだろう。。いいえ、森田さんから話かけてくれたらいいのに。。そうよ、何とかそうなってくれないかな。。』

 

 そんな時、綾乃に気づいた園崎頼子が、弁当を開けたまま固まっている彼女に声をかけた。

「あら三木さんどうしたの?珍しいわねこんなとこで。」

「あ・・はい。。」

「オフィスの誰かとケンカでもした?」

「いえ、そんなことは。」

「あなたここに来てまだ友達もできてないみたいだし、なんかあったらアタシに言いなよ。内に秘めてたってストレス溜まるだけよ。」

「はい。ありがとうございます。そうします。」

「あなたもどっちかって言うと『不思議ちゃん』みたいな人だから他の人と感性が合わないのかもしれないし。」

「え(゜〇゜;)・・わかるんですか?園崎さんも。私、学生時代からよく言われました。不思議ちゃんて。。」

 そう、綾乃は子供の頃から不思議ちゃんだった。だから浮いた存在になることも多かった。そのためか、過去を合わせても友達と呼べる人数は数知れたもの。

でも綾乃はそれでいいと思っていた。気の合わない大勢の人間とわずらわしい関係になるより、自分を理解してくれる人間が一人でもいればそれでいい。

「あぁ、やっぱりね。あ、でも別にそれが悪いってわけじゃないんだから気にしないでね。」

と、園崎頼子は優しく綾乃に微笑みかけた。

「はい。それは全然平気です。」

「それにウチにはもっと『鬼・超!不思議君』がいるんだし。( ̄m ̄o)プ」

「それってもしか・・森田さんのことですか?」

「もしかしなくても奴に決まってるでしょ!」

「はぁ・・」

「でもあいつ、さっきデスクに弁当2つ並べてたけど何だったんだろうね。ま、アタシにはどうでもいいことだけど。じゃあね!」

 そういい残すと園崎頼子は仲の良い同僚たちの席へと移動して行った。

 

 綾乃は園崎の最後の言葉に驚いていた。

『お弁当がふたつ?奥さんのお弁当?でも・・森田さんは社食に切り替えたはずだったんじゃ。。もし彼が奥さんのお弁当しか食べなかったら・・私の手紙も読んでなかったら。。』

こんなことを頭の中で巡らせていても仕方のないことだとわかっていても、綾乃の高ぶる気持ちは抑えられなかった。

『とにかく私も食べなきゃ。考えるのはそれからでもいいわ。』

 やっと自分の弁当に手をつけようとする綾乃。

『せっかく森田さんにもこれと同じものを入れたのに。。』

そしてハンバーグをひとくち口に入れた。

「うっ!Σ|ll( ̄  ̄;)||lしょっぱっ!!」

どうやら綾乃は調味料の配分を間違えたようだった。


『も、森田さん、どうか食べないで〜〜!(⌒-⌒;』

綾乃の願いが一気に変わった瞬間だった。


●森田卓の視点

「(゜ロ゜; 三 ;゜ロ゜)ヒイイイィィ!!しょっぱぁぁぁ!!」

 僕は三木さんのハンバーグに手をつけた瞬間、これは罰ゲームなのかと思った。

 ゆりかの弁当のエビチリもおいしそうだったが、多分これは冷凍食品。三木さんのは明らかに手作りっぽかったし、見た目ボリュームも満点。絶対食べずにはいられない代物だと判断したからだった。

「これはもう無理だよ。。」

 僕は急いで500mlペットボトルのお茶を一気飲みして一息ついた。

「はぁ〜。。おさまった。。でもこれってわざと?いや、三木さんがそんなことするはずないし。と言って僕は三木さんのこと何も知ってるわけじゃないし。三木さんも僕のことはそんなに知らないはずだし。なのにこんな手紙をくれたりするし。。もう何だかわからないや!」

 僕はこれ以上、深く考えないことにした。今まで深く考えてうまくいった試しもない。

「今度の日曜が終われば全てが片付くことなんだ。きっとそうさ。。」

                (続く)


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