その1 トラブルメーカー
この作品は前作、『突然の彼女』の続編になります。
前作をお読みいただけたら、主人公の二人の性格、出会いから今に至るまでの経緯がよくわかると思います。
その1
トラブルメーカー
●森田卓の視点
空からパンツが降ってきた。しかも明らかに女性のだ。(^□^;A
朝の出勤途中、たまたま大あくびをしながら上を向いていた僕の顔の上へそれはまともに被さった。
「うわっ!こ、これ・・ど、どっから飛んで来たんだ?」
辺りは10階建てが並ぶマンション群。
今日のこの風だと、どこから飛ばされて来てもおかしくはない。
僕はその下着を手に持ち替えて、あちこちの高層マンションを見上げた。
でも、ベランダに干し物をしている家庭は10件や20件ではきかない。
「参ったなぁ・・まさか下着に名前なんて書いてないだろうし。」
そう思いながらも一応確かめてはみた。広げてみたり、内側を確認してみたりしたけど 当然のごとく名前なんかありゃしない。
『僕もバカだな。。介護施設にいるお年寄りでもあるまいし。ハハ・・(^_^;)』
何はともあれ、このまま僕がこのパンティを持ってるわけにはいかない。
『そうだっ!近くに交番があったはずだよ。そこに届ければいいんだ!」
僕はとりあえず下着をカバンに詰め込み、足取りを速めた。
途中、道筋を1本間違えて、交番を探すのに5分ほど手間取ったけど、なんとか入り口までたどり着いた。
そしてまさに僕がそこに入ろうとする瞬間、遠くから叫び声が聞こえた。
「ドロボー!下着ドロボー!」
若い女性の声だ。こちらに全力疾走で走って来るのが見える。
(゜〇゜;)ハッ!・・なんかこれはまずいような気が。。・・(⌒-⌒;
そしてその予感は見事に的中した。
その女性は走って来るなり、僕の腕を捕まえて交番の入り口まで引っ張って行く。
「おまわりさんっ!この人下着ドロボーです!」
「ちょ・・ちょっと待って下さいよぉ。誤解ですよぉ。」
興奮気味の女性は僕の言葉など寝耳に水。
そして中からおまわりさんもタイミング良く出てきた。
「こりゃ驚いた。お嬢さんがこの下着ドロボーを捕まえたんですか?」
「だから僕は違う・・」
「はい!たった今捕まえました!」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lんなアホな!」
僕は気が動転すると、表情がこわばって余計に怪しくなる。
だから何を言っても言い訳がましく聞こえるらしい。
「ぼ、僕はや、やってません。下着なんか捕ってません・・とは言えないけど。」
「ほらー!やっぱり!私ちゃんとベランダから見てたんだから。」
「いや、捕ったって言うんじゃなくて・・拾っただけで。。」
おまわりさんが鋭い眼差しで僕を見ている。
「君!言い訳はいいから。ドロボーはみんな最初はそう言うんだ。論より証拠。カバンの中を開けなさい。」
( Σ(ノ°▽°)ノハウッ!ますます僕はヤバいじゃん!)
そう言われて拒否るわけにも行かず、僕はカバンの中から下着を取り出した。
「もう言い逃れはできないぞ!君は下着集めが趣味なのか?」
「だから違う・・」
「お嬢さん、お手柄でしたね。怖い思いもしたでしょうに。」
「はい。でも私、一目でこの人が変態だってピンと来ましたから!」
(Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lなんでだよぉぉぉ!僕ってそんなに変態顔かぁぁ?)
「君、名前を言いなさい。」
「でも・・」
「とにかく名前!」
「はい・・森田卓です。。」
「年齢は?」
「29歳です。」
「仕事は?」
「ちょっと待って下さいよ!僕を犯人と決め付けないでちゃんと説明を聞いて下さいよ。これには訳があるんですから。」
「下着を盗まなければならなかった訳かね?」
「いや、だからですね・・(^□^;A」
次にすぐ口を開いたのは若い女性の方だった。
「説明なら私がきちんとできます。」
「お、そうかい。ではお嬢さんの話をじっくり聞きましょう。」
(何で僕の話はじっくり聞いてくれないんだよ・・(-_-;) )
「この変態さんは私の下着を手に取るとすぐに広げたり匂いを嗅いだりしてました。」
「あのー、僕を変態さんて呼ぶのはやめてくれます?」
「その通りですお嬢さん。変態に『さん』付けはいりません。」
「いや、そういう意味じゃなくて・・( ̄Д ̄;;」
「わかりました。で、それを見ただけで私は鳥肌が立ちました。」
「なるほど。お気持ちお察しします。森田と言ったな。何か言い訳はできるのか?」
「あ、はい。それは・・その下着に名前が書いてあるか調べてたんです。」
「匂いを嗅いだら名前がわかるのかね?」
「嗅いでませんってば!内側に名前が書いてあるかどうか確認しただけですよぉ。」
「信じられんな。どこの誰が下着に名前を書く若い女性がいるのかね?」
(ホントそうだよ( ̄Д ̄;; 僕がバカだった。余計な行動をしてしまった。。)
「私、その後もこの変態がカバンに急いで下着を押し込むのを見ました。」
「(・。・) ほー。慌てて下着をね。。証拠隠滅か。。」
「だからですね、それはこの交番に届けようとしたからなんですって!」
「本当にそうなのかね?信じられないが。」
「信じて下さいよぉ。」
「私、もうこの変態に近寄りたくありません。おまわりさん何とかして下さい!」
(この子、よっぽど気の強い子だなぁ。。うちのゆりかちゃんといい勝負かも。。)
「ところで・・森田と言ったね?今一緒に住んでる家族は?」
「え?・・家にはうちの奥さんと・・娘がひとり。。」
「Σ('◇'*エェッ!?奥さんがいるのぉ?独身で超オタクのド変態かと思ったわ。」
(言ってくれるねぇこの小娘( ̄ー ̄; いくら大人しい僕でも限度ってものが。。)
「じゃあ君、奥さんをここに呼びなさい。」
「(・_・)エッ?ここへですか?」
「仕方ないでしょう。君がしたことは家族にもちゃんと知ってもらわないとね。」
ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!!ゆりかちゃんをここへ。。
僕は動揺した。彼女をこんなことで巻き込みたくなかった。
でも今の僕の現状は非常にまずい。助けてくれるのは・・信じてもらえるのはゆりかちゃんしかいない。。
僕は彼女の携帯にメールした。
「おい森田。メールより直接電話で呼びなさい!」
「あ、はい。すみません。。^_^;」
(続く)