第2章07 美凪との出会い
07 美凪との出会い
細かい手続きは久住が連れてきた弁護士に一任し、光騎は久遠ヶ原学園への入学を了承した。
元々勉強は嫌いではなかったので、授業には真面目に出た。
文系・理系を問わず、一般教養の成績は文句なくトップクラス。
そして久遠ヶ原ならではの退魔術絡みの座学や実技科目。
幼少のみぎりから父親から陰陽道の修練を受けさせられてきた光騎には、それらは形を変え、現代風にアレンジされた陰陽道の極意であることがすぐに理解出来た。
ただ一点の違いを挙げるとすれば、80年代以降にようやく発見された「アウル」エネルギー理論。波間矢家に代々伝えられた秘伝と久遠ヶ原学園で伝授されるアウル行使者の技術を組み合わせることで、仮想霊符――V兵器に頼らず天魔と戦い得る独自の理論を生み出すのにそう時間はかからなかった。
たまたま光騎自身のジョブが「陰陽師」(伝統的な意味での陰陽師とは必ずしも同じではないが)であったことも幸いし、高等部1年に入学後、撃退士としては1年足らずのキャリアにもかかわらず、彼は生徒会親衛隊(学園内でもえり抜きのエリート撃退士たち)に勝るとも劣らぬ実力を秘めた新進の撃退士として注目を集めるようになっていた。
山神美凪と出会ったのもその頃、同じ高等部1年のクラスメイトとして。
当初、彼女は光騎に対してあまり良い感情を持っていなかったようだ。
剣による物理攻撃を身上とする美凪にとって、「V兵器など使わなくとも天魔に勝てる」と公言する(そんな事実はないのだが、どこからともなくそんな噂が立っていたらしい)光騎はよほど「生意気な奴」と思われたらしい。
顔を合わせれば口論をふっかけられ、週に一度は「訓練」と称して実戦さながらの模擬戦まで挑まれた。結果は7:3くらいで光騎の優勢。物理攻撃特化のルインズブレイドと万能型の陰陽師が同レベルで戦えばどうなるか――を思えば、美凪の実力も決して低くはないといえるが。
ある時期を境に、美凪の態度が微妙に変化してきた。
「おまえもなかなかやるじゃないか? 仕方ない。同じ撃退士として認めてやろう」
認めるも何も。
君と僕とは最初から別に――と理不尽に思った光騎だが。
「バーカ。ありゃなあ、要するに『お友だちになりましょ♪』っていわれてんだよ。羨ましいねー、この色男!」
クラスメイトの男子から背中をどやされ、「ああ、そんなものか」と首を傾げながらも納得せざるを得なかった。
その後の半年余り――偶然か必然か、光騎と美凪は同じ依頼に同席する機会が多く、そのうち両者の息の合ったコンビネーションは「同期の中では最強クラス」との評判を受けるに至っている。
姉さん……僕は撃退士になってよかったのかな?