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月と五芒星  作者: ちまだり
第二話「怨鎖の魔女と仮面のヴァニタス」
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第5章17 闇と瘴気の中で(2)

17 闇と瘴気の中で(2)


「――撃退士の邪魔が入った?」

 廃屋のごとく荒れ果て、蝋燭の炎だけに照らされた薄暗い部屋の中。

 自動蓄音機が相変わらず「暗い日曜日」の陰鬱なメロディを繰り返し奏で続けている。

 クラシカルソファに横たわり、やはりいつものように気怠げに水煙管みずぎせるをふかしながら、女は鋭く詰問してきた。

「はい。確認できたのは3名。1人は堕天のガキ、後の2人は人間の男女……こいつらは今朝、大津見高校に転校してきたばかりの生徒です。怪しいと思ってマークしていましたが、案の定でした」

 床に片膝をつき、白い仮面の少女――マスカが報告する。

 俊夫の殺害には成功したものの、彼の魂を抜き取って持ち帰れなかったことを咎められたので、仮面の下で冷や汗をかきながらの弁解である。

 ちなみに俊夫の遺体を置き去りにしたのは当初からの計画通り。

 通常ではあり得ない死に方をさせることで、犯人が人外の存在であることを知らしめ、いよいよ街の人間たちを恐怖に陥れるための布石だ。

「始末なさい」

 あっさりと命令が下される。

「あなたは私が自らの力を分け与えたヴァニタス。撃退士の2人や3人片付けるくらい、造作もないことよね?」

「それはそうですが……奴らを始末しても、すぐ代わりの撃退士が派遣されて来ますよ?」

 マスカの本音をいえば、なるべく危ない橋は渡りたくない。

 場合によっては「ゲーム」を一時中断し、ほとぼりがさめるまで大津見市から離れるよう進言つもりだったが。

「余計な心配しなくていいの。それにいま、ここから離れるわけにはいかないのよ」

 配下の心を読んだように、女が釘を刺す。

 軽く手を上げ指を鳴らすと、蝋燭の炎が一斉に消え室内は完全な暗闇となった。

「……?」

 単に灯りが消えたというだけではない。

 周囲の壁や天井までが消え、部屋だった場所が今までとは異なる広大なスペースに変容したことを、マスカは直感した。

 女が何らかの魔力を行使したのだ。

 蓄音機は消えても「暗い日曜日」のメロディだけは変わらず流れ続けている。

 間もなく新たな「光源」が2人を照らし出した。

 それは床から10mほどの空中に浮いた、直径2mほどのほぼ球形に近い正多面体。

 白く半透明のその物体が、満月のごとくぼうっと冷たい光を放っている。

「あれは……コア? ではセルセラ様は、この地に――」

 マスカは驚きを隠せなかった。

「2ヶ月かけてここまで出来上がったのよ? あと一息……これまでの苦労を水の泡にさせないでね」

「……」

(なら、何だって撃退士を招き寄せるようなバカな真似やらかしたのよ? いくら退屈だからって、火遊びが過ぎるじゃない!)

 マスカは内心で毒づいたが、むろん口には出せない。

 所詮相手は悪魔――人間の常識など通用しない相手なのだと思い直す。

 それにこれが上手くいけば、彼女自身もこれまで以上に大きな「力」を手に入れるチャンスでもあるのだ。

「いつ頃完成するのですか?」

「あと人間1人分の魂が必要ね。それに半日ばかりの時間……それで『ゲート』を開けるわ」

(……こりゃー、私も腹を括るしかないわね)

 覚悟を決めたマスカは「主」の悪魔に向かい、深々と頭を垂れた。

「お任せください。幸い、撃退士どもにまだ私のことは気付かれていません。必ずや奴らを仕留めてご覧にいれましょう」

 その背後には、既に魂を抜かれディアボロ化された3人の少女が、虚ろな死相を浮かべ幽霊のごとく佇んでいた。

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※この作品は出版デビューをかけたコンテスト
『エリュシオンライトノベルコンテスト』の最終選考作品です。
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