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黒き死神が笑う日  作者: 神通百力


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赤ん病

 顔が老人、身体が赤ん坊という奇妙なものがベッドに寝かされている。その周りには世界各国から集まった各医療機関の権威、そして政府関係者。


 ☆☆

 

 今から七年ほど前に、一人の男が病院へと運ばれた。

 顔は老人で首から下は赤ん坊という見たことない症例に赤羽あかばねたちは驚き戸惑った。

 妻は『夫は急に苦しみ出して、気が付けば首から下が赤ん坊になっていたんです。言葉もまったくしゃべれなくなってしまったようで、何を聞いてもただ苦しそうな顔をするだけなんです』と涙ながらに夫の状況を説明する。

 原因を調べるべく、様々な検査にかけるも分からなかった。恐らく遺伝子が何らかの作用によって、突然変異したのではないかと赤羽は睨んでいるが、それも推測の域を出ない。

 その後病名は『赤ん病』と名付けられた。

 あまりにも珍しくまた不可思議な症例のため政府、そして世界中の医療機関によって日夜研究が続けられた。しかし、今もって原因は分からず。そして誰かがもしかすると男性自身に聞けば、原因の発端となるものが分かるかもしれないと言い出した。

 こうして先日ようやく言語機能だけは元に戻す薬が開発された。


 ☆☆


「先日ついに言語機能だけは取り戻す薬が開発されました。この薬を投与すればすぐに会話は可能となるはずです。ですが、身体はずっとこのままだと思ってください」

 赤羽は病室で、患者の娘に説明していた。患者はベッドで寝かされている。

「ずっとこのまま?」

 娘は父を見る。

「現代科学ではどうすることもできません。言葉を話せるくらいまでの回復が限度です」

 娘はそのことにげんなりする。いくら身体は赤ん坊とはいえ、まったく意思の疎通のできない父の下の世話を約七年間も行なってきたのだ。母は父がこの病気にかかって以来、ショックからか体調を崩してしまいずっと寝たり起きたりといった生活が続いているので、最近では父の世話はずっと娘一人で行なっている。

「そうですか。ありがとうございます」

 娘は赤羽に頭を下げた。


 周囲では口々にこれで原因が分かるかもしれない、これで研究が一歩先に進むぞなどといった声が上がっている。そうしていよいよ世界各国の要人たちが見守る中、薬が投与される。



「おぎゃ~!」


 周囲からはうろたえたようなどよめきが起こる。


 ☆☆


 こうして研究は一歩先に進むどころか、それまでは静かだった病室に、しわがれた老人の泣き声を響き渡らせるだけといった結果に終わったのである。

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