赤ずきんとオオカミ
森の奥にひっそりと建つ、木造建ての小さな家に私は到着した。
私の家から、この家まではそこそこの距離がある。
森を抜けている間、ずっと何かしらの虫に刺されて、体中が痒いったらありゃしない。私がいくら可愛いからって、そんなに刺さなくてもいいと思う。可愛い子を傷つけたいという心情はまぁ、分からなくはないけれど。虫除けスプレー持ってくればよかった。
そんなことはさておき、扉を開ける。
「おばあ……ちゃん。ご冥福をお祈り申し上げます」
おばあちゃんはオオカミさんに頭を食われていた。
私はオオカミさんがおばあちゃんを骨の髄まで食べ終わるのを待っていた。
「……くはぁ~」
オオカミさんはおばあちゃんを食べ終え、私をギロリとねめつける。
「はい、これあげる」
訝しげな表情をしながらも、オオカミさんは私が差し出したものを受け取る。
「小娘、これはなんだ?」
「お弁当だよ。本当はおばあちゃんにあげるつもりだったけど、目の前で殺されたからね。このまま家に持って帰っても腐るだけ。だからオオカミさんにあげたの」
私はオオカミさんの疑問を解消してあげる。私は可愛いだけじゃなく、性格も良い。
「そうか。さっそく食べさせてもらう」
オオカミさんはお弁当箱ごと噛み砕く。
「中身を確認せずにお弁当箱ごと! なんて豪快な食べっぷり! やばい、惚れそう」
あくまで惚れそうなだけであって、まだ惚れていない。惚れるかどうかはオオカミさんの行動次第だ。さて、どう出る?
「次はお前を食べさせてもらう」
オオカミさんは近づいてくる。
「きゃー、完全に惚れた! オオカミさんにハート鷲掴みにされた!」
私は嬉しくなって、飛び跳ねる。
「なぜ俺に惚れたのか、さっぱり分からない」
オオカミさんは歩みを止めた。
「私を食べるってことは自分のものにしたいってことだよね。つまり私に惚れたということ! さっきの発言で私もオオカミさんに惚れた。これで相思相愛の図は完成し、ハッピーエンド!」
私は全身が火照ってくるのを感じる。今日は私にとって、最高の日となるだろう。
「……なるほど自意識過剰の小娘だったか。それと俺にとってはバッドエンドだがな」
オオカミさんが歩みを再開した途端、おばあちゃん家の電話が鳴った。
「もしもし」
私は電話に出た。
『わたしはメリーさんだ。今、森の外にいる』
相手はそれだけ言って、電話を切った。
メリーさん? 誰それ?
「知らない人からの電話だったよ。まぁ、イタズラ電話だろうね。そんなことより、オオカミさん。早く私を食べて」
鋭い牙で食べられる瞬間を想像しながら、オオカミさんを急かす。
「言われなくても、そのつもりだ」
オオカミさんが歩みを再開しようとした途端、また電話が鳴った。
「またか」
オオカミさんは不機嫌な表情で呟く。
「もしもし」
『わたしはメリーさん。今、森の中にいる』
電話が切れる。また、メリーさんだ。
「何なの、メリーさん? 私とオオカミさんの恋路を邪魔して!」
私は見知らぬメリーさんに対して、怒りをぶつける。
「おばあさんの知り合いか何かじゃないのか? それと恋なんてしてないからな」
「でも、おばあちゃんぼっちだよ? 知り合いなんているわけないよ。だってぼっちなんだから」
メリーさんめ。何が目的なんだ? 私とオオカミさんの恋路を邪魔するなんて言語道断だ。
「お前、おばあさん嫌いだろ」
「そんなことないよ? 私を刺してきた虫と同じくらい好きだよ」
「それは果たして好きと言えるのか?」
オオカミさんは顔をしかめる。変なオオカミさん。
また電話が鳴った。しつこいな。電話が嫌いになってきたよ。
「もしもし!」
私は怒りを含んだもしもしを言ってやった。
『わたしはメリーさん。今、家の前にいる』
今までと同じように電話は切れた。
「メリーさん、家の前まできたらしいよ。暇だったんだね、メリーさん」
「そうかもしれんな」
メリーさんもおばあちゃんと同じようにぼっちなのかもしれない。
「わたしはメリーさん。今、君の後ろにいる」
「へっ? ぐっ!」
突然、胸に激痛を感じた。
「オオ……カミ……さん」
私はオオカミさんに手を伸ばす。
☆☆
わたしは少女を見下ろす。少女は事切れていた。
数分おきに電話をかけ、目的地に近づく。そしてその相手を殺すのがこのわたしだ。
「ん?」
突然、辺りが暗くなった。まだ昼間のはずだが?
わたしは顔を上げる。オオカミの顔がわたしに迫っていた。
「うわぁああああああああああああ!」
叫んだ数秒後、わたしの小さな顔はオオカミの口の中に収まっていた。
☆☆
「がりがりがり」
俺はメリーさんとやらを骨の髄までしゃぶりつくした。
次に小娘の死体を俺は見る。
「死体を食べるのは初めてだな」
俺は小娘の死体を骨の髄まで食べつくした。
「悪かったな、食べるのが遅くなった」
俺は小娘の生きていた頃の姿を思い描く。テンションが高かったよな。低い時は低いんだろうがな。
「しかし、一日に三人食べれるとはな。今日は最高の日だ」
俺はゲップをした。
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