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黒き死神が笑う日  作者: 神通百力


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赤ん坊の種

 最近になって『赤ん坊の種』という家庭菜園の種が新発売された。年齢問わず男女に人気だが、特に独身や高齢の方には大人気だ。

 これはその名の通り、種を育てると赤ん坊の実が成るというものだ。少ない時は二、三人、多い時には十人以上も収穫が可能なのだ。

 植えてから一ヶ月ほどで実は成り、収穫できる。

 今や『赤ん坊の種』は行列ができるほどの人気だ。


 ☆☆


 とある主婦は種を持ち、家の庭に出る。

 花壇の土を掘って『赤ん坊の種』を三粒ほど植える。水をサーッとかけた。たくさん実が成ってくれたらいいな、と思いつつ、主婦は家の中へと戻る。

 隅々まで掃除をし、それからテレビゲームをして一日を過ごした。


 ☆☆


 一ヵ月後。

 主婦は庭へ出た。

 一つの木に二人ずつ、赤ん坊の実が成っている。それ以外の実はすべて腐っていた。つまり、死んだということに他ならない。

 ハサミでヘタを切り落とし、一人ずつ収穫していく。計六人が収穫できた。

 タオルで包み込むと、オギャーと泣いた。主婦の口元が緩む。

 ミルクを作ると、軽く振り、手の甲に垂らした。少し熱い。温度調整をする。

 赤ん坊の口元に哺乳瓶を持っていくと、小さな手で掴み、少しずつ飲んでいく。その姿が愛らしいといえば愛らしいし、愛らしくないといえば愛らしくない。

 六人にミルクを無事飲ませ終えた。


 ☆☆


 家庭菜園の『赤ん坊の種』が発売されてから、十年の月日が流れた。

 政府はとある問題に頭を抱えていた。


 人口増加問題に。


 もちろんその時点で『赤ん坊の種』は販売中止となった。


 もはや国全体がぎゅうぎゅう詰めの満員電車状態だ。

 そのため海の埋め立て案などが政府の間で出されている。


 ☆☆


 そんな折、ある事件が起きる。


 子が親を殺害する事件が。そして兄弟同士殺しあう事件が。それも数十万件にも及ぶ。


 子は皆口々に言う――私は本当の子じゃないからと。私だけ兄弟と顔が違うからと。


 それもそのはず。『赤ん坊の種』から生まれた赤ん坊は、親とは全く顔が似ていない。

 種の育て方によって、ランダムに顔が造形されるだけだ。おまけに自分が種から生まれたことを自覚していない。お腹の中から産まれたと思い込んでいる。


 結果、人口は減少した。


 皮肉な事に『赤ん坊の種』から発生した人口増加問題は、そこから誕生した子供たちの手によって終止符が打たれたのだった。

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