苦痛
目を覚ましたら、どういうわけか俺は両手両足を拘束されていた。
「ああ? どこだ、ここは?」
辺りを見回すと、壁が黒い布で覆われていた。貼り方が雑なところを見ると、慌てていたのかもしれない。
コツっ、と足音が聞こえた。耳を澄ます。どうやら、ここに向かっているみたいだ。扉が開く。
「あ、起きたんだ。大樹くぅん」
驚いたことに俺の姉――坂倉百合華だった。なぜか俺をくぅん付けで呼ぶ。
「姉貴。どうして、こんなことを」
「大樹くぅんのことが大好きだから。愛しているから。でも、大樹くぅんは私の気持ちに気づいていながら、何もしてくれない。シカトする。避ける。私はもうそのことに耐えられない耐えられない耐えられない耐えられない耐えられない耐えられない! 私だけ苦痛を感じるなんて不公平。大樹くぅんにも苦痛を与える。その後に大樹くぅんを殺して私も死ぬ。覚悟しなさい」
ギラリと姉貴の目が光る。
「我儘すぎるだろう! 理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ!」
姉貴は俺の言葉を無視して、こちらに歩み寄ってくる。
「ふう~」
姉貴はため息をついて、後ろに回していた手を前に出す。ナイフだった。
「姉貴! 何をするつもりだ!」
姉貴は俺の目蓋を摘んでナイフを当ててゆっくりと動かしていく。痛みを感じて切られているのが分かった。姉貴は半分まで来たところで切るのを中断した。
「…………?」
俺は訝しげな表情で姉貴を見つめる。
姉貴はひらひらとなっている目蓋を掴み、勢いよく剥がした。べりッと音がした。
「…………っ!」
耐えがたい激痛が走った。目を守るものがなくなり、風が当たってスースーする。早くも目が乾いてきた。
次に姉貴は俺の唇を無理やり開けて舌を掴んで外に引っ張り、切り落とした。床にベチャリと舌が落ちた。姉貴は容赦なく舌を何度も踏み潰した。姉貴はようやく踏み潰すのをやめ、足をどけた。そこにはバラバラになった舌のパーツが散開していた。
「ふふふふふふ」
姉貴は不気味な笑みを浮かべていた。
舌がなくなったことにより、声を発することが出来なくなった。
「大樹くぅん。汗をかいてる。どうして?」
この部屋が暑いからだよ。
姉貴は俺の服の袖を掴んで肩までめくり上げた。腕にナイフを当てて動かしていく。皮が剥がれていき、肉が姿を現す。ジュルッと音がして血がにじみ出てくる。
「わぁ~痛そう」
痛そうじゃねえだろ。
姉貴は肉にナイフを突き刺して上下左右に動かす。腕を虫の大群が這い回るような感覚が襲う。かさかさと幻聴が聞こえてきそうだ。
「次が……止め」
姉貴は俺の首にナイフを突き刺した。大量の血を噴き出しながら、俺は意識を失った。
☆☆
私の目の前には大樹くぅんの死体があった。
「さてと私も死ぬとしますか」
私は両手でナイフを持ち、自分の首に勢いよく突き刺した。
「ごばぁ!」
私は心地いい気分で死んだ。
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