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黒き死神が笑う日  作者: 神通百力


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コレクターⅢ

コレクターⅠ~Ⅲは共に同じ設定ですが、結末が微妙に違っています。ぜひ読み比べてみてください。


作者 音無威人

 薄暗い部屋の中で、一人の男が無感動に何かを見つめていた。それは切断された人の指だった。男は無表情で呟いた。

「そそられない」

 男は切断された指を無造作に放り投げ、床に寝転がった。そして男は何もない空間に向かってささやいた。

「――おやすみ」



 男は目を覚ました後、ふらりと外に出かけた。男は歩きながら、獲物を吟味するかのように間断なく人々を観察していた。がふと違和感を感じた。――見られている――男はそう思った。男は視線を感じた先に目をやった。――一人の少女が毅然と立っていた。少女は十代前半のようだった。――美しいという言葉が醜く思えるほど美しい。男は声に出さず呟いた。そして男は少女にゆっくりと近づき声をかけた。

「お前は何だ?」

 その問いに少女は

「主よ。それはこちが聞きたい」

 と答えた。少女は男の目を見つめ、静かに言った。

「主からは血の臭いがする。主は人殺しか何かか?」

 男はその問いかけに首を斜めに振った。

「そうだとも言えるし違うとも言える。俺はコレクターだ、指のな。指を集める……そのために人を殺したこともある。だが俺の目的はあくまでも指であって殺すことではない。だから俺はその問いには明確に答えることが出来ない」

 少女は男の答えに思案する素振りを見せた。男はその間に少女を観察した。少女が俺の目的の邪魔になるならば殺さねばならない……という考えで。少女の体つきは全体的に細かったが貧相な感じではなく、引き締まっていた。男は少女の指先を見た。瞬間、男は電気が走ったかのように体を震わせていた。これだ、俺が求めていたものは。男は少女の指に手を伸ばそうとした。がそれより早く少女が口を開いた。

「主の目は綺麗じゃな。これまで見てきた目の中で、一番輝いておる。欲しい、欲しい。こちは主の目が欲しい。どうじゃろう、一つこちに譲ってはくれまいか?」

 男は伸ばそうとした手を止め、少女の目をじっと覗き込んだ。数秒たった頃、少女は頬を僅かに赤く染め小さな声で呟いた。

「主よ、あまり見つめないでくれ。恥ずかしいじゃないか」

 男は無言で少女の手を掴み、家に向かって歩き始めた。少女は困惑した様子で声をかけた。

「主よ、どこに連れて行くきじゃ?」

「俺の家」

 男はそう言った後、沈黙した。少女は何度か声をかけたが、男が何も答えないので諦めたように黙り込んだ。家に着くと、男は少女をある部屋に連れ込んだ。その部屋にはおびただしい数の指が無造作に床に放置されていた。男は指を足で退け少女を床に座らせると、部屋の外に出て行った。一人残された少女は部屋の様子を見て一言。

「こちの部屋とよく似ておる」

 男は指を集めるのが趣味だが、少女は目を集めるのが趣味だった。少女は殺される寸前の人の目が、一番好きだった。恐怖に怯えた目は少女の心を刺激し快感を呼び覚ました。少女は今回も目を集めようと外に出かけていた。そんな時に血の臭いを発散させている男を見つけ、今の状況に至った。少女は男が少女を観察している時、同じく男を観察していた。男の目を見た瞬間、少女の体に雷鳴が迸った。これじゃ、こちが求めていたのは。少女はいても経ってもいられず男に話しかけた。家に連れ帰り、目を取るために。なのになぜか男の家に来る始末。少女はぼんやりと男が戻ってくるのを待った。少女は思う、どうするかは男が戻ってきてから考えようと。そして男は戻ってきた。飲み物とお菓子を手に持って。



 男は少女の向かいに座り、飲み物を渡して言った。

「片目ぐらいなら挙げてもいい。その代わりにお前の指が欲しい。駄目か?」

 少女は首を横に振った。

「駄目じゃないぞ。目をくれるのなら、指くらい挙げてもよい」

 男は良かったというような表情をして、部屋の隅から包丁を持ってきた。男は少女の細く綺麗な指を、一本ずつ丁寧に舐めていった。少女は頬を高潮させ、吐息を漏らした。男は全部の指を舐め終えると、左手の薬指を手に取った。

「この指を貰う。お前が俺のものだという証に」

 少女はどこか恥ずかしそうにうんと言った。男は根元から丁寧に指を切断し、応急処置を施した。切断した指は瓶に入れてポケットに仕舞った。少女は左手の薬指があった場所をうっとりと眺めた。

「次はこちの番じゃ」

 少女は男から包丁を受取り、一旦脇に置いた。少女は舌を伸ばし、男の左目を舐め始めた。少女は徐々に舐める場所を下にずらしていき、男の口に触れそうになったところで舐めるのをやめた。少女は脇に置いた包丁を手に取り、男の左目を抉り取るように突き刺した。少女は男の左目から溢れ出る血を飲み込んだ。その後失血して包帯を巻き、くり貫いた目を瓶に詰めてポケットに仕舞った。少女は居住まいを正して男に深々と頭を下げた。男が不思議に思っていると、少女は頭を上げこれ以上ないくらい真っ赤な顔で言った。

「こ、これからよろしくなのじゃ。旦那様」

 男は、はっ? というような顔をした。

「違うのか? 左手の薬指は結婚指輪をつけるとこだから、てっきりそういうことかと」

 そう言って少女は、ショックを受けたように悲しそうな顔をした。男は首を大げさに横に振った。

「いや、違わない。俺はお前を自分のものにしたいと思った。だから薬指を切断したんだ。俺はただ旦那様と呼ばれたことに驚いただけだ。だから悲しそうな顔をするな」

 男は少女の頭に手を伸ばしゆっくりと撫でた。すると少女は表情をだらしなく緩ませ、男にもたれかかった。少女は顔を上げ、口を突き出した。男はほんの少し笑って少女に口付けた。男は情欲に身を任せて、少女は快楽に身を委ねてどこまでも堕ちていった。そして町で起こっていた失踪事件は嘘のように幕を引いた。後に犯人は語る。


 曰く『あの少女以上に俺の心を鷲掴みする指は存在しない』



 曰く『あの男以上にこちの心を射止める目は存在しない』



 誰が予想しただろう? 二人のコレクターの出会いが事件を終わらせるとは。

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