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黒き死神が笑う日  作者: 神通百力


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同性愛たちの推理

 私は学校の廊下を歩きながら、鼻歌を歌おうか、歌わないか迷ったが変な人と思われるのはいやだったのでやめた。

 すると階段の影から一人の少女――呪呪のろいのろいが飛び掛ってきた。

「今日こそは兎神うがみ様の身体をもらいますわ!」

 それを私は後ろに飛んで避けた。

「うぶる!」

 壁に激突した。……うぶる? 何だそれ。

「兎神様が避けるからわたくし、鼻血が出てしまいましたわ」

 私が悪いみたいな言い方だな。

「そのエロティックな唇で鼻血を啜ってくださいな。それと全身を舐め回してくれたら嬉しいですわ」

「うるさい、変態眼鏡」

「なっ……! わたくし、眼鏡掛けてませんけれど」

「……ごめん。眼鏡掛けてるの私だった」

 恥ずかしい。う~~。

「まぁ、それは置いといて。いい加減わたくしと交じり合ってくださいな」

「ムリだ。私たちは同性同士だぞ?」

「あら、同性愛はお嫌いですの? わたくしは同性愛こそが真の愛と思っておりますのに」

「なぜ?」

 私は呪に視線を向ける。

「どこを触られると気持ちがいいか分かってるからですよ。ちなみにわたくしは罵倒されるのが気持ちがいいんですの」

「それ、身体とか関係ないよな。性格の問題だよな。ちなみに私はお嬢様扱いされるのが気持ちいい。言うこと聞いてくれるからな。弟を全裸で散歩させたことがあるが、通報されて警察に捕まってた。あんたのせいだと言って私を睨んできた。その時の表情を思い出すと身体が火照ってくる」

「あらあら、バカな弟さんですこと」

「同感だ。言うことを聞くからそうなる」

 私たちは視線を絡ませて笑う。


 挿絵(By みてみん)


「さて、教室に向かうとするか、呪」

「ええ、向かいましょう。兎神様」

 私たちは肩を並べて教室に向かう。

 私の名は岩具流がんぐる兎神だ。

 教室の前に到着し、中に入って席に着いた。

「さて、授業を始めるぞ」

 先生が告げる。


 ☆☆

 

 放課後。学校が終わり、私たちは帰途についた。

「兎神様。明日のことですけれど」

「うん、土日に××に一泊二日するんだろう」

「ええ、甘~い夜を過ごしましょう」

「普通の夜を過ごそう」

「…………」

 ガッカリした表情をする。

 本当に可愛いな、この子は。

「まあ、いいです。それでは明日、ごきげんよう」

「ごきげんよう」


 ☆☆


 翌日、私は着替えて荷物を持って待ち合わせ場所に向かった。

「兎神様、おはようですわ」

「おはよう、呪」

「では兎神様キスをしましょう。安全祈願をこめて」

「……ああ」

 少しだけ恥ずかしかったが、呪の頬に両手を添えて顔を斜めに向けキスをした。舌を入れて絡ませた。

「……はぁ兎神様」

「……呪はぁ」

 私は身体が火照ってきた。

 なぜか、道行く人に奇異な視線で見られた。そんなに物珍しいだろうか。女同士のキスというのは。

「なんなんでしょうこの人たちは。わたくしたち何か変なことしてますか?」

「いや、していない。普通のことしてるだけだ」

「そうですよね。では旅館に向かいましょう」

「そうだな、行こう」

 私たちは恋人みたいに腕を組んで歩いた。しばらく進むと旅館が見えてきた。

「見えてきましたわ」

「あそこか」

「あそこって! いやらしいですわ!」

「え? どこが? 普通のことを言っただけなんだが」

「……まぁ、いいですわ。行きましょう」

「ああ」

 何かと勘違いしたんだろう。十中八九アレだな。可愛いやつだ。私の愛しい愛しい呪。

「あの一昨日電話した呪という者ですが」

 呪は受付の人に声をかけた。

「あ、はい。呪様ですね。二名様の。××号室となります」

 鍵を取り出してカウンターに置いて呪が受け取った。なぜか受付の手は少し濡れていた。


 ☆☆


 私たちは階段を上がって二階に行き、部屋を目指した。

「あら、広いんですのね」

 呪は部屋に入って言った。

「? どうしたのです。キョロキョロと」

「おい、呪。ヒロインなんていないじゃないか!」

 私は怒鳴る。

 呪は一瞬ポカンとして、笑う。

「ふふふふふふふ。違います。ヒロインですのねではなく、広いんですのね。つまり部屋が広いということです。お分かりですか、兎神様」

「……ごめん。何かごめん」

「まあ、いいですわ。さて、どうします?」

「う~ん。観光でもするか」

「はい」

 その時、悲鳴が聞こえた。

「一階からですわ。兎神様」

「行こう、呪」

 私たちは部屋を飛び出し一階へと降りた。


 ☆☆


 私たちは一階の食堂にいた。人が死んでいた。

 被害者はこの旅館の女将だ。顔を合わせる前に死んだ。第一発見者は先ほどの受付だ。

 話を聞くとどうやらこういうことらしい。受付は今日の宿泊客が全員到着したので女将に知らせようとした。ちなみに私たちが最後の宿泊客だ。女将はいつも厨房にいる。料理を作っているのは女将のようだ。受付は厨房に入って女将の死体を発見したとのこと。

「あ、警察が到着したみたいですよ」

 呪が言った。

「今日非番だったのに。ゆっくり寝ようと思ったのにな。さて、呪。死体はどこだ?」

「こちらですわ。雷亜らいあお姉さま」

「ふむ、どれどれ」

 集深つどみ雷亜警部は呪の従姉に当たる。私も世話になっている。呪と雷亜さんは肉体関係を持っている疑いがある。十中八九そうだと思う。

「鈍器と思われる物で殴られた後があるな」

「鈍器ですか。灰皿かツボとかそういう系統ですか?」

「いや、違う。タオルだと思う」

『は?』

 その場にいる全員が何言ってんだこいつって顔をした。

 タオルで殴っても人は殺せないだろう。首を絞めれば殺せるだろうが、今回は違う。絞殺ではなく、殴殺だ。

「頭をよく見ろ」

 言われて頭を見てみる。なぜか濡れていた。白い糸みたいなのが付着していた。ふと、私は何かを忘れているような気がした。なんだろう。

「濡れてますわね。この白い糸みたいなのは何ですか?」

 呪が雷亜さんに聞く。

「たぶん、タオルの繊維だと思う。凶器はタオルだろうな」

「タオルは鈍器になりえませんわ」

「普通はな。けど凍らせばどうだ」

「凍らす? カチカチになりますわね。勢いをつけて殴れば殺すことはできるかもしれませんね。タオルでも」

「うん。その時にタオルの繊維がついた。タオルで殺したと思って間違いないだろう。あとはタオルがどこにあるか、誰が殺したかだな」

 雷亜さんは周りを見回す。

「女将以外にいつも厨房にいるのは誰だ?」


 ☆☆


「なるほど。女将が料理を作っていて料理長たちはそれのお手伝いをしてるんだな」

 うんうんと頷く雷亜さん。その仕草が子供みたいで可愛い。

「でも厨房にいる人たちはみんな手が濡れてるし犯人特定は難しいんじゃないですか」

 呪が言った。

 ん? 手? 濡れてる? 私は何を忘れていたか思い出した。

「あの、受付さん」

 私は受付を呼ぶ。

「あ、はい。なんでしょう」

 受付はこちらを向く。

「鍵を渡してくれた時、手が濡れていました(・・・・・・・・・)よね?」

「? ええ、それがどうかしましたか?」

「どうして濡れていたんですか? 厨房の人たちなら分かります。料理をする前に手を洗ったり、食材を洗う時に濡れるでしょうから。ですが、あなたは受付です(・・・・・・・・)。受付をしていて手が濡れるとは思えません」

「そ、それはトイレに行ったから。そ、その時に手を洗ったんですよ」

 目を泳がせながら言った。

「おい、あんた。本当にトイレに行って手を洗ったんなら何で目を泳がすんだ」

 雷亜さんが聞く。

「そ、それは」

 受付が後ろに下がって壁に激突する。その時、浴衣の下から、血が付着したタオルがゆっくりと舞いながら落ちた。

「あんたが犯人だな。確定だな」

「そうですよ。私が殺しました」

 俯きながら受付は言った。

「厨房には料理長たちがいたのではありませんか?」

 呪が受付に聞いた。

「あ、それは女将以外の方がいなくなるのを待って実行に移したんです。具体的には休憩時間にです。女将は休憩しませんからね。犯行の仕方ですが、あらかじめ凍らせておいたタオルを取り出して抜き足忍び足で女将の背後に回って頭に凍らせたタオルを振りかぶりました。ゴンっと音が響いて女将はあっけなく死にました。凶器に使ったタオルは浴衣の股から入れて隠しました」

「動機は何だ」

 雷亜さんが聞いた。

「それは……その……何といいましょうかね。私は女将のことが大好きだったんです。この前、意を決して女将に告白したんです。『うわ、気持ち悪。報告以外で私に近づかないで頂戴。胸糞悪いわ、ふん』って言われて振られちゃいました。むかつきましたよ。私はこんなにも女将のことが大好きなのにって。殺そうって決心しました。これが動機ですよ」

「酷いな女将。どんな愛の形であれ否定してはいけない。誰にもな」

 雷亜さんは天井を向きながら言った。

「殺そうと思うのも無理ありませんわね」

 呪が腕を組みながら言った。

「それはさておき殺人は罪だ」

 雷亜さんは受付を手招きする。

 受付は雷亜さんに近づき、両手を挙げる。雷亜さんは手錠を嵌める。

「あ、優しい」

 何が? 手錠の嵌め方? どんな感じ?

「警察署に連行する。あとで愛でてやろう」

「はい!」

 受付の雷亜さんに対する視線に愛が感じられた。惚れたみたい。分からなくもないが。

 雷亜さんと受付はパトカーに乗り込み、警察署に向かった。

「兎神様。これからどうしましょう」

「どうっすかな~」

 私は深くため息をついた。 

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