普天間ふしぎ語
キジムナー
真夜中に目が覚めた。
ふと寝床から顔を上げると、窓ガラス前に古ぼけた椅子が置いてあって、そこに何か座っているのだ。
街灯がガラスごしに何かのシルエットを浮かび上がらせる。
赤毛のおかっぱ頭で小さな子供のようだ!
顔は逆光ではっきり目えないが、椅子から降りてここに歩いて来る。
恐ろしくて思わず布団を頭から被り身を隠す。
暫くしてごわごわ布団の隙間から覗くと、姿かたちもない。
夢だったんだろうな?
だが、何度かそういうことがあって何かいるのは確かなんだ。
友達にその話をすると キジムナーだろ? と答えが返ってきた。だろうとは思っていたが、確か古木に宿る精霊だと、沖縄では知られているが何故家にいるのかな。
考えられることは、古ぼけた椅子に宿っているってことかな?
キジムナーはカジュマルなどの年月を経た古木に宿っていて
魚の目玉を好み、漁師が釣り上げた魚の目玉がないことで、キジムナーの仕業などと云われる。仲良くなると助けてくれるらしく豊漁に恵まれる事もある。いたずら好きで愛嬌があり、一般には好まれている妖怪だ。
例のキジムナーが座っていた椅子は木製で、父が古物やから買ってきた品だが、がっしりと頑丈に作られてる。モスグリーンに塗装されているが、如何にも古めかしく年代物には違いない。云われを聞いてみたが父は知るはずもない。
暫く経ったある日、嬉しい事があった。
学校の図工の時間に描いた風景画が県のコンクールで入賞したという知らせだった。
ささやかな幸せをキジムナーが知らせに来たのかな?
子供心にそう思う事にした。あれからもうキジムナーは
現れてはくれなくなったけどね。
幸せもたらす精霊と出会う。