表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

恋人として

「優真、おかえり。今日は遅かったわね」

「ただいま、連絡しなくてごめん。影のとこ行ってた」

「あら、相変わらず仲良しね。影くんは元気?」

「ん、元気だよ」


帰宅した時、いつも最初におかえりと言ってくれる母。一瞬、ほんの一瞬だけ母親に影と恋人になった事を話そうかと思った。でも影に許可を得ていないし、もしショックを受けたら⋯と考えたら話す事を躊躇ってしまった。

多分自分の母なら自分達の関係を理解し祝福してくれると思うが、実際どう思われるか少し怖かった。


自分の部屋に入り、真っ先にポケットからスマホを取り出してLINEで影にメッセージを送る。


『今家に着いた』

『おかえり』

『ただいま』


離れた場所にいても、おかえりと言ってくれるもう一人の大切な存在。数十分前までは同じ空間にいたのに今は触れられる距離にいない影が恋しくてどんな言葉でもいいから彼とこうしてやり取りしていたい。


あれ、俺ってこんな重い男だったのか⋯と今更気付いた。影に対して執着して独占してたい、とか愛が重過ぎるだろ⋯。

そういえば中学生の時、初めて女の子から告白された時の事を思い出した。

『藤堂くんが好き』

『俺のどこが⋯?』

『カッコイイし、爽やかで王子様みたいだから』

その言葉を聞いた時にこう思った。本当の俺はそんなんじゃない。ただただ影に好かれていたくて皆が理想とする自分を演じてるだけなんだと。

結構前から相当な影依存症だった事を痛感し、自分でも俺ってヤバい奴だと思う。


『優真、大好きだ』


恋人になってからのメッセージのやり取りは甘くてチョコレートみたいだ。このスマホの向こう側には影がいてとても近く感じるのに、現実は離れ離れで寂しさを感じる。影の為ならいつまでだって待てると言ったしそれは本心だけど、彼への想いが性的欲求に繋がり、身体の芯が熱くなってきた。

ごめん影⋯俺はお前をこんな風に見てるんだよ⋯お前の気持ちを無視して強引な事はしたくないから一人でするしかないんだけど⋯ちゃんと待つから。何日でも何年かかっても影の想いを優先する。

今日初めて触れた唇を思い出しながら、抱き締めて何度も好きだと伝え合った言葉も思い出しながら、俺は自分の性欲を手に出した。純粋で無垢な影を思い描くとこんな事をしている事に罪悪感を抱いてしまう。男で思春期だし仕方ないのかもしれないけど彼を汚しているような気がして。


『俺も影が大好き』


もっと好きだと言いたいし、もっと好きだと言われたい。今日話して分かった事だが自覚こそなかっただけで影も幼少期から俺の事が好きだったらしい。小さい時から両想いだったのに拗らせて16歳まで時は流れてしまった。その反動だろうか。両想いだと知った途端に好きな気持ちを隠していられなくなった。


自分は家庭や育った環境に恵まれていると思う。両親には感謝しているし親孝行もしたいと思ってる。そう思わせてくれるような愛情を注いでくれたから今の自分がある。でも影にはそれがない。だからいつも自己肯定感が低く、どこか人生を諦めたような目をしている。そんな影を幸せにしたい。今はとにかくあの部屋に通う事、そして手料理を作る事、恋人としてそれをしてあげたいしちゃんと実行したいと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ