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心の触れ合い

『あんたなんか産みたくて産んだわけじゃないのよ』


優真の胸で泣きながら母親に言われた残酷な言葉を思い出した。あの人は自分を産んでくれたけど母親ではなかった。自分は愛されて産まれた子供ではないのだと、幼き時から分かっていた。

じゃあ何で俺の事引き取ったの⋯?そう問いかけた時もあった。俺の事が大事だから、とか愛してるからとか多分そういう言葉が聞きたかったんだと思う。でもいつも望んでいる応えは返ってこなかった。


『世間体と養育費、慰謝料が目的よ。光子の為に家は出ていって。兄なら当然でしょ』


それが本音だとしても実の子供に冷たく当たるのは間違っているとしか思えない。妹の光子と俺、同じあの人の子供なのに何が違うのか。俺の実の父親はそんなに酷い人間だったのか。こんなのまるで道具のようだ。都合のいい時だけ『兄』という家族の括りに入れられて、俺って一体何なの?

考えれば考えるほど自分の人生を悲観した。そんな家庭環境の中でもグレたりせずに真っ直ぐ生きられたのは何度も言うが優真がいたから。


今、俺はそんな優真と両想いになれて幸せだと心の底から思っている。狭い部屋の中で抱き合う自分達を邪魔するものは何もない。時々触れ合うキスをしながら、ひたすらに抱き締め合った。温かい体温と高鳴る心臓の音が聞こえて心の繋がりを感じる。


「影⋯好きだよ。もうお前は独りじゃないから」

「ばか⋯俺にはいつだって優真がいてくれただろ⋯家では一人でも心ん中にはいつもお前がいてくれた⋯」


ちゅっ、ちゅっとお互いの愛を確認し合うように唇を重ねるがソッと舌を入れられビクッとした。


「優真⋯待って⋯俺ファーストキスなんだ⋯心の準備なんも出来てない」

「俺も初めて⋯。ごめん、ゆっくり進んでいこ。今すぐどうこうしたいとかは思ってないから。お前の事大事だからいつまででも待てるよ」

「あ⋯ありがと⋯」


男同士の愛し合い方は調べたから知っていたが影も優真も今は心と心が触れ合えるだけで、それだけで十分だった。そして影はずっと言いたかった言葉を伝える。


「優真は俺の救世主なんだ⋯なんていうかヒーローだし憧れの人でもある」

「やめろよ照れるだろ⋯でもそう思ってくれてありがとう。なぁ影、これからの俺達の関係って恋人になるんかな⋯?」

「⋯恋人なんて夢みたいだ。俺、ずっと自分だけの片想いだと思ってたから⋯」

「それは俺も同じだよ。もっと早く影に気持ち伝えればよかった⋯」


お互いが大切すぎて、だからこそ嫌われるのが怖くて。それでもそばにいたくて。色んな遠回りをしてきた二人だがようやく恋人という新しい関係になれた。


この狭い部屋も優真がいるだけで華やかに見える。ずっと此処に優真がいてくれたらいいな⋯なんて思ってしまうけど自分と違って優真には優しい両親や祖父母もいる。だからもう少ししたら名残惜しいけど帰ってもらわなければ。優真がキラキラして見えてしまうのは彼が親にも周囲からにも愛されて育ったから⋯というのもあると思う。僻んでるわけではない。寧ろ優真が幸せな家庭で生きていてくれて嬉しい。

それくらい愛してるんだ。好きだけじゃ足りないくらいの想い。

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