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挨拶

──それから数日が経ち、優真から「俺の両親に会って欲しい」と言われ、休日の今日彼の家へ挨拶に行く事になった。

最初はもう挨拶するの?心の準備が⋯なんて不安になってしまったが、「俺の家族公認の仲になろう」と、そんな事を真摯に言われたら断れるわけもなく。それに優真のお母さんにはあの日以来毎日弁当まで作ってもらってる。まだお礼も言えてない。

鏡を見ながら制服のネクタイや髪をきちんと整えて深く深呼吸をする。


「そんな緊張しなくても大丈夫」


優真が今日もいつものように迎えに来てくれている。自分の家に行くのに影が心細くならないように、と。そのさり気ない優しさが嬉しい。


「私服で全然いいのに」

「ちゃんと挨拶したいから⋯」

「影のそういうとこ好きだよ。じゃ行こうか」

「うん⋯」


なんか⋯こうして正式に挨拶するって、立場的に息子さん(優真)を自分に下さい、みたいな感じになるのか⋯?それ結婚の挨拶だろって自分に心の中でツッコミを入れた。俺考え過ぎ⋯。とにかく物凄く緊張する。初めて会うわけではないけど今日は恋人として挨拶するんだ。


「あっ、どうしよう」

「どうかした?」

「手土産⋯何も買ってない⋯」

「影、今日は俺の恋人が影だって紹介する日なんだ。影が隣にいてくれるだけでいいんだよ」

「優真⋯」


本当に⋯いつも思う。俺なんかには勿体ないくらい眩しい光に包まれた優真とかげのような暗い自分。正反対の俺達のこの交際を未だに信じられないのは誰より俺自身なんだ。キスもそれ以上の性的な事もしたというのに。


部屋から出て鍵を閉め、優真に恋人繋ぎで指を絡められてドキッとした。


「此処、外だよ⋯?」

「分かってる。でも今日は手繋ご?休みだし実は俺も緊張してて。お前に触れてると落ち着くんだ」


ほんとだ⋯優真が緊張してるのが手の熱さから分かる。俺だけじゃないんだ⋯優真にとっても大事な事なんだって思ったら、自分でもよく分からないけど怖さが半分になったみたいに落ち着いてきた。


そして優真の家。小さい頃は何度か来た事あるけど、外観だけでも懐かしい。

途中からは母親に「あんたと藤堂さんが友達だなんて不釣り合いもいいとこね」と⋯その言葉がショックで俺達は家を避けて公園で遊ぶようになった。


「一緒にインターホン押そう」

「ん⋯」


影の人差し指の上に優真が自分の人差し指を重ね、同時にインターホンのボタンを押した。その行為がどんな時も一緒だよと言われてるみたいで心がほっこりする。


「影くん、いらっしゃい」

「ぁ⋯お久しぶりです。優真のお母さん⋯」

「そんなに畏まらなくて大丈夫よ。さ、遠慮なく入って」

「はい⋯お邪魔します」


久しぶりに顔を見た優真のお母さん。優真に似ていて相変わらず綺麗なお母さんで何より彼を産んでくれた人⋯そう思うと感謝の気持ちで感情が溢れそうになる。


「今お茶持ってくるから座って待っててね」

「わざわざすみません⋯ありがとうございます」


リビングに案内され優真と一緒にソファーに座る。彼のお父さんはまだいないようだ。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。あの、優真のお母さん⋯」

「ふふ、“優真の”なんて付けなくてもいいのよ。普通にお母さんって呼んでね」

「あ、あの、ではお母さん⋯」

「はい」

「いつもお弁当ありがとうございます」

「いいえ、息子の好きな人だもの。私がしたいと思ってしてる事だから気にしないで」

「好きな⋯人⋯」


ストレートに優しさを向けてくれるところまで彼と同じだ。まだ打ち明けてないと思っていたけど彼のお母さんは俺達の関係を知っているようだった。


「なんだ、母さん気付いてたんだ」

「もう何年も前から気付いてたわ」

「え、マジ?」

「付き合ってるのかは分からなかったけど今日確信したわ。お互い想い合ってるのね」

「うん、影と付き合ってるし大事なんだ。母さんと父さんに恋人だって紹介したくて今日影に来てもらった」


二人の会話を聞いて察すると、もうお母さんは優真と俺の気持ちに気付いてたみたいだ。自分の母親とは大違い。たとえ男同士の恋人だとしても何の偏見も持たずに俺達を祝福してくれた。

今日此処に来て良かった。味方がいるとこんなに心強いものなんだな⋯少しずつ優真が俺の狭かった世界を広げてくれている。

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