四十六話 雪音の過去 その二
それからも律さんはは忙しい中私に構い続けてくれていました。
そして、私も毎日のように公園に通っていました。
あの頃が人生で一番楽しかった頃だと今でも思います。
そんな日常のとある日、私が公園のベンチに座っていると、目の前に猫が歩いてきました。
「あ、猫だ。可愛い」
と私はなでようとしたら引っかかれてしまいました。
「いた⋯ああ、逃げちゃった」
そこにちょうど律さんが来ました。
「ようって、どうしたその傷」
「猫に引っ掻かれたの」
「はぁ、ちょっと待ってろ」
私はよく律さんに待たされていた記憶があります。
そのたびに迷惑をかけていましたけど⋯
「ちょっと手を貸して包帯巻いてやるよ」
「いいの?」
「逆に駄目か?」
「うんん、うれしいありがとう」
すると律さんは包帯を巻いてくれました。
「これで終わり。次から気をつけてくれよ」
と言って律さんは帰っていきました。
(優しい人⋯私もあんなふうになりたいな)
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ですが、律さんも知っての通りそんな、そんな幸せはずっと続きませんでした。
とある日の公園で私はまた引っ越すことになったことを話していました。
「そうか⋯寂しくなっちゃうな」
「私も悲しいよ。律くんと会えなくなるのは⋯でも、お父さんの仕事が忙しいみたいで」
「うーん。なら、また、会えるとうれしいな」
「え?」
「引っ越すことが多いってことはまたいずれこっちにも戻ってくるかもしれないってことだろ。だから、また会えたらいいなって」
「なら、約束だ。また、会おうぜ」
「うん、また会おう」
「ならさ、これで二人で一個ずつ持っとこうぜ」
と出してきたのは二つで一つの絵柄になるキーホルダーでした。
「母さんがくれたんだよ。仕事でもらったけどいらないからあげるって」
「もらっていいの?」
「いいよ。こういうのあったほう次会う時分かりやすいだろ」
そうして、私はキーホルダーを受け取りました。
「これで二つで一つだな」
「ねえ」
「どうした?」
「次あった時はまた律くんって呼んでいい?」
「いいよ」
でも、私にとっての別れはやはり辛いものでした。
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私は引っ越し前日にお母さんに対して
「ほんとに引っ越しちゃうの?」
「ごめんね、雪音。別れは辛いでしょうけど⋯」
「やっぱり引っ越すのやめようよ」
これが初めての私のわがままでした。
けれど
「無理なものは無理なのごめんね」
それがわかってか私はその日部屋に籠もって泣き続けました。
そして、決心しました。
「律くんみたく明るくみんなに接して上げれる人になろう」と




