三十五話 白月ファミリー
というわけで一緒に回ることになったが俺は今すごく緊張している。
(学校のノリで言っちゃったけど俺こういうの苦手なんだよな〜)
どうかしたのかと言わんばかりの目で見つめてくる雪音。
(どうすれば。はっ優たちを呼ぼう)
おかけになった電話は現在電源がついていないか⋯⋯
アイツ出ねぇ。こんな時に出ねぇ。
あいつら二人で回るって言ってたから茜も多分でない⋯。
いっそ諦めて俺は楽しむことにした。
だが、歩いてる時のあいつ誰だの目線が辛い。
俺がうなだれていると
「嫌でしたか?今ならまだ⋯」
「嫌というわけじゃないんだちょっと目線がキツイ。慣れたと思ってたんだけど」
「そうでしたか。うーんならそこ行きましょう」
と指したのは迷路だった。
俺のために近くにあったやつをとっさに選んでくれたんだろう。
「そうだな。行ってみよう」
広さは教室の広さとはいえ結構複雑に作られていた。
例えば壁が実は通れるようになっていたりと高校生が作った無駄に難しい迷路に挑んで早三十分
「これゴールあるのか?」
「あるはずですよ。でなかったら、出口から人が出てくるわけありませんし」
それもそうか、出口があって人が出てきてるんだからそれは出口はあるわ。
と上を見上げてみると何かが貼ってあった。
「なんだあれ」
「何か書いてあるみたいですね」
イリグチノヨコノカベヲオセ?
「なるほど雪音行くぞ」
と俺は雪音の手を握って走り出した。
「行くってどこへ」
「入口だ。入口の横のを押したらあるのは何だと思う」
「入口の横⋯。出口つまりゴール」
そうしてるうちに入口まで戻ってきた。
「そう、じゃあいくぞ」
と俺は壁を押した。
すると布の掛かった壁、いや道はすんなりと通れた。
するとこの企画をしているクラスの人らしい人が
「ゴールおめでとうございます!これ記念のシールです。記念にどうぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「あっちが出口です。では、良い文化祭を」
と誘導されるまま俺達は迷路を出た。
「結構大変だったな」
「でも、その分楽しかったですよ。おそろい記念品までもらいましたし」
「あんまり茶化さないでくれ」
次どこに行こうかと考えてるその時だった見覚えがある中学校生が走ってきた。
「おにーちゃん」
「ぐほっ」
まさかの体当たりだった。
「久しぶりですねこのはちゃん」
「お姉さん、お久しぶりです」
「このはあんまり走っちゃダメよ」
「母さんの言うとおりだぞ」
この声は
「父さん母さん来てくれたんだな」
「それは家を出ていった息子からの招待状よ。行かないわけないじゃない」
「父さんも仕事大丈夫なのか?」
「有給取ってきたから大丈夫だ。明日も来れるぞ」
「えっとこちらの男性は?」
「あぁ、こちら俺の父親の」
「白月連です」
「あ、私は水野雪音です。律さんのお友達をさせていただいてます」
「あー君が律によく話しかけてくれてるんだってね。律はいつもなんか上の空だけどホントは親切な子なんだ。君にも素っ気なくしてないかい?」
「いえいえ、とても親切にしてもらってます」
「ちょっと置き去りはひどいんじゃない。私は白月真美です。よろしくね雪音さん」
「こちらこそ。あと、うちの弟がお世話になっていると聞いたのですが」
「晴也くんかい?とてもいい子だね」
「それはよかったです」
「連さんそんなことは置いておいて。雪音さんうちの子と付き合ってるのかしら?」
「「え?」」
俺達の声が重なった。
「このは、二人はとても仲良くしていたのよね?」
「うん。そうだよ。なんならさっき手をつないでたと思う」
「あれはちょっと事情があってですね」
「あら〜、あんなに『俺は彼女なんかできない一生独り身だ』とか言ってたのに〜」
「あの頃はやさぐれてたから」
「そうか、律にも春が来たんだな」
「父さんは黙っといて」
このはのやつ報告しやがったな。
「ところで水野さん。いや、ややこしいから雪音さんと呼ばしてもらうね。晴也くんも文化祭にはきてるみたいだから会えるといいね」
「教えていただきありがとうございます」
「いえいえ、律が世話になってるようだしね」
二人が話で盛り上がっているところに優たちがやってきた。
「よう、律さんや。デート楽しんでるかい?」
「なんでそうなる。そしてなぜ知ってる」
「私の情報網をなめないでいたただきたい」
「まさか。だから、電話でなかったのか」
「ご明察。そのとおり」
「あら、律にまだ友達がいたなんて」
何かすごくバカにされた気がする。
「お前の親か?」
「ああ、そうだ」
「私は白月真美です。よろしくね」
「俺は山本優です。律の友達やってます」
「同じく、私は広瀬茜です。いつも律に世話かけてます」
「あらあらまあまあ、母さんうれしいわ。昔みたくなっていなくて。ところで律髪型戻したのね」
「ああ、もう一度頑張ろうと思って。まあ、みんなに支えられてやっとだけどな」
「そう、楽しそうでよかったわ。どうやら、デートだったみたいだし邪魔しちゃ悪いわね。連さん行きましょう」
「わかった今行くよ」
「じゃあ私たちもこれで。楽しんでね」
「ちょっと誤解だってば」
うちの両親もあいつらも聞かずに去っていった。
「まあ?まだまだ行き先はありますし楽しみましょう。ね?」
と笑顔で言った。
「それは反則だろ」
本人は何のことか分かってないが雪音の笑顔がやばい破壊力を持っている。
そんな分かってない雪音に手を引かれて俺達は文化祭巡りを再開した。




