6 謎のイケメンと神の国
――翌日。
僕は今、図書館に来ている。
エーデルの記憶だけでは情報が足りなすぎるのだ!
とにかくこの国についてもっと知る必要がある。それに外国ならば日本に帰ることができるかもしれない。百合のことや僕らが死んだ落雷事故の後どうなったかも気になる。
(えーと、歴史はこの辺りか?)
あれ……届かないな……もうちょっと。
取りたい本は高い位置にある。背伸びをして取ろうとするが……
「これを取ればいい?」
すると後ろから声がして、誰がの手が僕の上にスッと伸びた。
――これって例の恋の始まるシーンでは?
期待が膨らむのも束の間、その声は完全に男性だった。
「ありがとう」
本を受け取り顔を見上げたエーデルは一瞬固まった。
(――とんでもないイケメンだ。エーデルも整った顔をしていると思ったが、コイツはレベルが違う。二次元か?)
まるで彫刻のように整った顔にサラサラした金髪、空が反射して透き通った水のような瞳……
「綺麗……」
「え? 何?」
「あー、いや、助かったよ。中々背が伸びなくてさ」
「君はこれからもっと伸びるよ。期待している」
(……ん? なんか期待された)
「ルピナス王国の歴史か……興味あるの?」
この国のことなんて皆当たり前に知ってるだろうが――僕は何も知らない。少しでも知ることがまずは第一優先だ。
「うん。学校に通うことになって、改めてまた学ぼうかなって」
「真面目だね。じゃあ、この本読んだ方がいいよ」
彼は本棚に手を伸ばした。
渡されたのは『世界とルピナス』という本だった。
「……これは?」
「君にはこれが一番わかりやすいと思う――じゃあまた会おうね」
すごいイケメンだったな……去り際までイケメンだ……
男の僕でも惚れそうだった。
でも何故か彼とはまた会うことになる――そんな気がする。
さてと、せっかく勧めてくれたんだ。
世界とルピナスから読もう。僕は椅子に座り本を開いて必死に頁をめくる。
読んでいくうちに、幾つかわかったことがある。
まず、ルピナス王とは古代天命により国を統治することを与えられた存在。
初代王の名は――エレイン・ウィル・ルピナス。
その王によってこの国は作られ、王族にはルピナスという名が付く。
初代王は神のような大いなる力を持ち、その力によって民の飢えや、他国との戦争を防いだという平和主義者だった。
こうして民に崇め奉られたエレイン・ウィル・ルピナスはとてつもなく神に近い存在、または天から追放された神なのではないかという言い伝えがある。まさに――最強の男だった。
――これがルピナス王国の初期の話だ。
遺伝によって現在この国を収める王族にも、とんでもない魔力量があるらしい。そして王族は金が象徴とされているため、瞳の色まで金色なんだとか。
そして平和主義のエレインが唯一防ぐことのできなかった戦争それが――ロベリア戦争という。
サンブラッドという隣国と十年と長きにわたり戦争をし、ルピナス王国は勝利したものの、いまだに因縁が残り、ルピナス王国から平民の拉致が絶えず、その原因はサンブラッドが起こしているという。
その拉致を防ぐために作られたのがロベリアの壁。到底よじ登ることのできない高さ六メートルにもなる大きな壁がある。事前の手続きで両国の入国は許可されているが、サンブラッドは治安も悪いため――世界一危険な国とされている。
この戦争によってルピナス王国の人々は強くなることを強いられ、魔術や剣術を学ぶ、学校というものができたという。
――そうか……そういうことか……サンブラッドこの野郎。
お前という国が滅びていれば学校という障害物はなかったということだ。
(クソッ、今からでも滅ぼしに行こうか?いやいや僕が殺されるか……)
まあ、なるほどな。
サンブラッドに行く機会はないだろうが、一応覚えておこう。
そしてもうひとつわかったことがある。
それは――今僕がいるこの地球は赤いって事だ。
――現在僕がいるこの世界に日本がないって事だ。
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