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57 四人目の神

「はじめまして。よろしくルミス」


 エーデルは手を前に出し、彼女はエーデルの手を握り、握手をした。



 その時ーー


「ゔっ……」


 またひどい頭痛がした。

 彼女と手を握った瞬間、さっきとは比べ物にならないほど痛い。


「エーデル! 大丈夫か?」

 倒れそうになるエーデルをヘルヴィンは支えた。


「どうしたの? 彼、大丈夫?」


「やっぱり休んだ方がいい。医務室に行こう」


「待って……大丈夫……」


 エーデルは顔を顰めた。

 記憶か? また記憶を見るのか? 

 それにしても酷い頭痛だ。


 頭に記憶のフィルムが出てきた。

 さっきもそうだった。

 記憶は僕が見ようとしたら見ることができる。

 だが、見ようとしていない時、急に記憶が流れてくるときがある。

 

 考えられるのは――エーデル(本物)の意思かもしれない。


 エーデルはこの記憶を使って何かを伝えたいのか?


 だが、おかしい。フィルムが荒れている。

 全てのフィルムの映像が白黒の砂嵐になっている。


(何だこれは……)

 

 暫くすると記憶のフィルムは落ち着いた。

 記憶のフィルムの砂嵐は消えていた。

 

(何だったんだ? まさか、記憶を見れなくなったわけじゃないよな? 確認してみよう)

 

 エーデルとジニアの記憶。

 庭でアルメリアと一緒に遊んだ記憶。

 クラウスに剣術教わった記憶。


 記憶には問題ないようだ。

 見れなくなった記憶もない。


 だが、さっき見たエーデルと黒いモヤのかかった奴の記憶がなくなっている。

 僕がその記憶を見たのは間違いないのに、頭のどこにもその記憶のフィルムがない。


 今消えたのか、それともあの一瞬見ただけでそもそも記憶になかったものなのか、わからない。

 まるでバグだ。


 ルミスと握手した一瞬で頭痛が起こった。

 何だったんだ?


 彼女に駆け寄り、もう一度ルミスの手を握った。


「えっ? どうしたの?」


 何も起こらない。頭痛もしない。

 だとしたらさっきのは何だ?


「エーデル?」


 そう呼ぶ声に僕は我に返った。


「あ! ごめん!」


 そして彼女は微笑みながら左手で僕を頬に優しく触れて言った。

「大丈夫そうだね? よかった〜心配したんだよ?」


 デイジーの花のように美しく笑う子だなと思った。


 そして気づいた。

 彼女も『神』だと。


「ルミス。エーデルにベタベタ触るな」


 ヘルヴィンは不服そうにしていた。


「何で? エーデルは嫌だった?」


 嫌? そんなことはない。寧ろ今の僕は頬を赤らめ、心拍数が急上昇している状態だ。


「い、いやじゃないよ……」


「だって〜ヘルヴィン」


 ルミスはニヤニヤしてヘルヴィンを見た。


「はあ。その手を離してやれルミス。エーデルが固まっているだろ」

「はーい」


 彼女は僕の頬から手を離した。


「もう気づいているかもしれないけど、彼女も『神』なんだ」


 やっぱりルミスも神だった。

 見た時から気づいていた。抑えきれていない神力に、目の前の山積みになったピュートーンの亡骸。今日一日で四人の神に会った。何となく雰囲気や感覚でわかるようになってきた。

 

 理由は、神力を出せばすぐに神だとわかる。

 それは神力量が人間とはかけ離れているからだ。神力が多い僕よりも元の神の力だからだろう。


 そして、もう一つ。

 それは雰囲気や感覚だ。

 今の所、ドイルドやテルビアは全身が奮い立つような感覚、悍ましさがあった。


 ヘルヴィンに関しては神力を見るまでわからなかったが、穏やかさ、人間とは違う余裕がある。

 それはルミスも同じだ。

 一概には言えないが、ほぼ僕の勘でもある。


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