表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/65

51 魔物への情け

 後、三匹だ。


 タクロはピュートーンのボスを倒し終え、残るピュートーンを倒している。

 戦える先輩方も十人がかりで魔術と剣術を交互に戦っている。

 残る一匹は僕が倒せば、この第二ホールの魔物は片付く。

  

 エーデルはピュートーンの方へ走り出した――


 まだ斬ってもいないのに奇声を上げるピュートーン。

 仲間が次々と殺され、例え魔物でも危機感を感じるだろう。

 

 何よりこの殺気だ。

 僕でもわかる程この第二ホールは皆が殺気だっている。


 剣術大会の対戦とは違う。

 あれは倒すための戦闘。

 今は殺すための戦闘だ。


 一匹のピュートーンを目前にエーデルは違和感を覚える。

 ――怯えているのか?

 仲間も殺されて、残るのは自分だけなんて不安だよな。


 するとピュートーンの動きが止まった。

 攻撃もしてこない。

 微動打にしなくなったピュートーンだが、もしかしたら何か企んでいるかもしれない。 

 油断せず慎重に殺そう――


 そしてエーデルはピュートーンの心臓を剣で刺した。

 ピュートーンは倒れ、第二ホールの魔物は全て討伐した。



 それにしても最後のピュートーンは様子がおかしかった。

 さっきまでは氷を吹いたり、足で踏みつける攻撃してきたのに、まるで死ぬのを待つだけのように見えた。


 『闇の神力は人や魔物を操ったりできるんだ』


 ロニカの言葉を思い出した。

 テルビアの神力は『闇』だ。


 ロニカの噂が本当ならピュートーンはてるビアに操られていたのか?

 テルビアがドイルドに負けて操られてたのが解けた。そして我に返ったのか?


 だとしたら、魔物だけど少し同情するな。

 同時にテルビアという『神』に腹が立つし、軽蔑する。

 例えば魔物でも生きているのに、死を待つだけって嫌だよな。


『闇の神力』そんなに恐ろしいものなのか?

 所詮、噂は噂だ。

 真相はわからないし、憶測だけで判断するのは良くない。


 ドイルドとテルビアの戦闘は呆気なく終わり、ドイルドの圧勝だった。


 

 二人の神の戦闘は目にも止まらない程早いスピードだった。

 だが、一瞬だった。


 片腕のないテルビアは魔術しか使えず、攻撃を全てエレインの剣で跳ね返し、もう一本の腕を斬った。

 普通なら出血多量で死ぬ。


 ドイルドが話を聞くまで殺さないと治癒魔法を使い、テルビアは今気絶している状態だ。

 

 改めてこの人に勝とうとしていた僕は無謀だと思った。

 

 ピュートーンを全て倒し終え、エーデルはタクロやドイルドの方へ歩きだした。

 

 そしてタクロから借りた剣を目線まで上げて、まじまじと見る。

 それにしてもタクロ先生から借りた剣は良く斬れるな。

 これだけピュートーンを斬ったのに、刃こぼれもしていないし、曲がってもいない。

 アレクに買ってもらった剣の出番はまだ来ない。

 本当は一番最初に使いたかったけど……また今度だ。


「エーデル・アイビスよ。よくやった」


 ドイルドは褒めてくれた。


 剣術大会での戦闘の時は怖くて、ただの悪人時にか思えなかったが、この人もまたアカデミーの生徒だ。学校を守り、そしてテルビアから(エーデル)を守ってくれた。

 第一印象は確かに悪かったけど、彼もまた悪人という訳ではないのかもしれない。


「先輩もお疲れ様でした。第一ホールと練習場はどうなりましたか?」


「心配いらない。あっちも無事片付いたそうだ。配置した奴が良かったんだ。ここよりも早くに終わったと伝わっている。お前も後で会うことになるだろう」


「そうですか、よかった」

 エーデルは安堵した。


「エーデル。頑張ったな。お前のおかげで怪我人が出ずに済んだよ」

 タクロはエーデルの頭をくしゃくしゃに撫でた。

 タクロ先生はどうも僕を子供扱いする。悪い気はしないが、少し照れる。


「いえ、僕だけのおかげじゃありませんよ。皆本当に頑張りましたね」


 周りを見渡すと、ピュートーンとの戦いで力尽き地面にへたばっている先輩やアカデミーの先生がいた。

 先輩や先生が全力を出すほど厳しい戦いだった。


「そうだな。皆体力と神力の限界まで戦ったようだ」

「はい。あの、こんな時に申し訳ないのですが、ベルヴィンの所に行ってもいいですか?」


「ああ、それはいいが。あのな、エーデル」


「はい?」


 タクロは手で頭を掻き、斜め上を見て言う。


「ベルヴィンのことだが、あまり責めないでやってくれ。あいつはあいつなりにお前のこと考えているんだ。あれでも優しい奴だから」


 タクロは心配しているんだ。

 それくらいヘルヴィンの事を大切に思っているんだな。


「先生も……何か知っているんですね?」

「ああ、少しな。俺から話してもいいが……」


「いえ。ヘルヴィンに直接聞きます、友達なので……先生ありがとうございます」

「わかったよ」


 第二ホールを後にして、エーデルは教室に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ