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48 僕がやるべきこと

「あれは人ではない。私の同類――神だ」


 やっぱり……ドイルドは神だった。

 あの神力量に強さは『神の神力』そのものなんだ。



 でも何故、神が僕を狙う?



「ドイルド先輩、何故あの神が僕を狙うのですか? というか、先輩も僕を殺そうとしてましたよね?」


「殺そうとはしていない。その話は後だ。先程言った『お前が成すべきこと』の話をしただろう。覚えているか?」

 

「はい、覚えています。まだヘルヴィンに何も聞けていませんが……」


「お前の『成すべきこと』それには反対派がいる。それを止めようとしている神がいるってことだ。そして俺は賛成派だ」


 全然理解できない。

 そもそも僕の『成すべきこと』が何かもわからないのに、反対派も賛成派も意味がわからない。

  

『成すべきこと』の反対派が僕を止めるために、襲いにきた、もしくは殺しに来たのか?


 神が? 人間の僕を?


 この短時間で飛び交う情報が多過ぎて頭がパンクしそうだ。

 だが、考えている暇はない。とにかくこの場を何とかしないといけない。


 今は僕がやるべきことをやるんだ。


「先生、ドイルド先輩。僕はどうしたらいいですか?」


「お前は隠れていろと言っただろう」


「それはできません。あの神が狙っているのは僕なんでしょ? それに魔物は強いですよね? ここにいる全員が一対一で戦えるわけではないですよね?」


「ああ、あれ(魔物)は鈍いが攻撃は強い。人間がまともに戦えば我々意外ほぼ全滅だろうな。そしてここだけじゃない。他の場所にも強い奴を配置させたが、戦えない生徒達は避難をさせる」


 ドイルドはさっきより早口で言った。

 その早口から焦りを感じる。


「あの魔物はドイルド先輩より強いですか?」


「いや、ルークと同等くらいだ」


「なら、僕は戦力になる筈です」

 ドイルドは一切表情を変えずエーデルの顔をまじまじと見た。


「死ぬなよ。俺はあの馬鹿神をやる」

「はい!」


 エーデルは木刀を構え目の前の魔物を凝視した。

 

 その時、エーデルの視界には()がいた。

 目の前にニヤッと不気味に笑う奴がいたのだ。



 一瞬だった――



 さっきまで魔物の上にいたやつが一瞬にしてエーデルの目の前に来ていた。

 

 何の気配も神力も感じ取らせず。

 瞬きをした一瞬で、タクロやドイルドの視線をくぐり抜け、ほんの一瞬で、奴は僕の目の前に来たのだ――


 そこからはスローモーションだった。

 いや、僕だけがスローモーションだったんだ。

 奴の手が僕の頭に伸びた――

 邪悪な手、悪意を持った手、完全に僕を殺すための手が近づいてくると察した。


 奴の動きは早く、邪悪な手が近づいてきているのに僕は目で追うことしかできなかった。

 その瞬間に思った。

 終わった。





 だが、終わってはいなかった。

 僕にの頭に向かってくる邪悪な手を、ドイルドが優勝者の勝利品である『エレインの剣』で弾いた――

 

 視界が赤く染まった。僕の顔には血塗られたように赤く染まった。

 奴の肩は上がったままだ。

 そして、奴の腕はポトンと落ちた。

 

 奴の手がエーデルに触れる直前、ドイルドはエレインの剣で奴の腕を斬り落としたのだ。


 先程までエーデルを見て不気味に笑っていた奴の視線はドイルドに向けられた。

 奴はこの場から二メートルほど下がった。


「カハッ。ああ、面白い。どうしよう、面白いよドイルド〜。お前がこのチビを守ったのか? 長生きしてみるもんだな〜」


 チビって僕のことか?

 

「何をしに来た? 『テルビア・デラ』」

 ドイルドはテルビアを凝視する。


 テルビア・デラ。

 これが奴の、あの神の名前か?


「何って、戯れだよ〜ドイルドもさっきそのチビと戯れてただろ? 羨ましいな〜って思って見てたらさ〜僕も参戦したくなっちゃった。でも駄目だよドイルド〜あんなに手を抜いてさ? 本気で殺しに行かなきゃ」


 テルビアは相変わらず気味の悪い笑みを浮かべる。


 対戦でのドイルドは本気じゃなかったってことか?

 今僕はすごく舐められている?


「それで、魔物を五十も率いて来たと?」


「うん!」

 テルビアは嬉しそうに笑っていた。

 まるで褒めてほしいと尻尾を振る犬のような笑顔だった。

 だが、その笑顔から僕へ向けた殺気を感じる。


 正気じゃない。

 彼は変わっているどころの話じゃない。

 腕を斬られ血を流しているのに、笑っている。

 人を殺しに来たのに笑っている。



 これが『神』なのか?

『神』と呼べるのか?


 僕が思う神とは、人知を超えた絶対的存在。

 天地万物に宿るといわれ、それを支配する存在。

 時に祈願や感謝をされる存在。

 その存在は尊く、人間に崇め奉られるものだ。


 だが、異世界に来て実際に会った神はその存在からかけ離れていた。

 

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