4 甘え作戦
ガッコウ...…いや、正しくは学校だろう。
だが受け入れたくない。
それは、僕がこの世で1番嫌いな単語。
たとえ天と地がひっくり返っても決して好きになることはない存在それが――学校。
この世が終わる時、学校という存在しか残らないのであれば僕は喜んで死を選ぶ。
そのくらい僕にとって辛い場所だった。
「どうしたんだエーデル。お前あんなに楽しみにしていただろう? やっと友達が作れるって」
「僕が?」
エーデルの記憶に学校のことは……あった。
随分と隅に隠していたな。
それに何故だ…エーデルの容姿、性格なら居てもおかしくないはずの友人関係の情報が一つもない。
(そうか……お前もいなかったんだな。安心しろ! 僕も一緒だ)
楽しみにしていたか……まあそうだな。
どちらかというとこの感情は――不安とほんの少しの期待か。
ここはエーデルの気持ちを汲み取りたいな。親を心配させちゃいけない。
「最近楽しいことが多くて忘れてたんだ。楽しみだよ、とても」
「本当に大丈夫? あなた昔のことがあるから、ママ心配よ。それに寮に入るのよ? 家から通うこともできるけど、片道半日掛かるなんて遠いわよね。思い切って引っ越しちゃう?」
「カルラそれはいくら何でも……」
昔のことってなんだ? これも記憶が出てこない。
エーデル、お前について調べることが山積みだよ。
それに寮だと?! 地獄の門に片足っ込んだ気分だ……
待てよ? ずっとここにいれば両親は僕に対する違和感を少なからず感じ取るだろう、中身が変わっているんだから当然だ、この親達なら気づいてもおかしくはない。
それに寮にいけば僕を知っている人は少ないはず……その方が楽に生きれるかもしれない。
寧ろそっちの方が都合がいいな。
「大丈夫だよ。安心してママ」
(あー、でもやっぱり行きたくない)
「ママ、パパ……本当に学校行かなきゃダメ?」
僕はこの顔面をフル利用して、上目遣いと可愛さ含んだ表情――甘え作戦を使った。
(柄ではないが……)
そしてクラウスは笑顔で言った
「駄目だ」
――作戦は失敗に終わった。