表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/65

46 ヘルヴィンの正体再び。

「それで、お前はこの星で何を成す?」

 


 …………何を成す?



 そう聞かれると何も浮かばない。

 この世界に来て、特にやりたいことない。いや前世からなかったんじゃないか? 

 答えられるとしたら――


「僕は……強くなりたいです」


「それは当たり前のことであって、お前が成すべきことではない」


 昔の戦争の影響により、この国では強くなることを強いられている。

 家族や友人、そして自分自身を守るために強くなる。アカデミーはその為の入口に過ぎない。

 誰かも守るために『強くなりたい』というのは当然のことだ。


「……まだ……よくわかりません」


「そうか。ここに来て自分の使命も知らずにほのぼのと生きていたわけか……期待はずれだったな。がっかりだ」


「…………あの、少しでも教えてもらえませんか? 星とか神……それと僕のことを」


「断る。だが、そうだな。私はこれからお前に恩を受けることになるだろう。なら先にその恩を返そう。その代わりお前は必ず成すべきことをしろ。

 そこにいる奴に全て聞くが良い」


 ドイルドが指を差した方に目をやる。

 指が示した先にいたのは――ヘルヴィンだ。

「…………ヘルヴィンに?」


「ククッ。お前を欺き、弄んでいた()の一人だ」


 突拍子もない言葉を吐き捨てると、ドイルドはこの場を後にした。

エーデルは目を丸くしてヘルヴィンを見た。

 ヘルヴィンは地面に膝をつき、目を伏せ俯いている。

 ディルとロニカは意味不明という顔をしていたが、タクロは頭に手を抑え、俯いていた。


「ヘルヴィン……何か、知って……」


 エーデルはヘルヴィンの肩に手を掛けようとしたが、パチンとヘルヴィンの手で弾かれた。

 ヘルヴィンは立ち上がると目を合わせることなく、何も言わずに去った。


 ヘルヴィンらしくない行動だった。

 いつもなら笑って誤魔化すか、言いたくないことははぐらかして話の話題を上手く変える。

 俯いているせいか、ヘルヴィンの表情もわからなかった。

 


「エーデル、とにかくここを移動しよう。まだ他の人の対戦が終わっていない」


「あぁ、そうですね。すみません」


 タクロの言葉にエーデルは立ち上がり、その場を後にした。


『神』

 俄かに信じがたいが、ヘルヴィンの反応を見るに事実なのかもしれない。

 いや、まだ本人に確かめていない。

 ドイルドが適当なことを言っているだけで、事実でない可能性だってある。

 彼にに聞きたいことは山ほどある。


 『――どうだ? 神に弄ばれる気分は?』

 ドイルドの言葉がエーデルの頭によぎる。

 弄ばれるって何だよ。何を弄ぶんだ?

 

 第二トーナメント戦、二回戦目で負けたエーデルはその後観客席で他の人の対戦を見ていた。

 ロニカとディルも一緒に見ていたが、ヘルヴィンは姿をくらました。


 ヘルヴィンは既に第二トーナメント戦、二回戦を勝利していたが、三回戦目を辞退していた。


 そして拳銃大会が終わり、授賞式が始まった。

 優勝者はドイルド・ポーセ。

 王者と呼ぶに相応しい圧倒的な強さで勝利を飾った。

 ドイルド・ポーセには『エレイン・ウィル・ルピナスの剣』が与えられ、今年の剣術大会優勝者と讃えられた。

 

 ある意味では当たり前のことだ。

 彼はアカデミーの七年生であり、来年卒業をする身だ。

 初めて剣術大会に出場した一年生、つまり僕が彼に勝てる筈がないんだ。

 ドイルドの神力は多分僕よりも多い……


『あの神力量は神同等だよな?』

 ふとクラスメイトの以前言っていた言葉が頭をよぎる――

 

 僕の力は神同等……強いと思ったルークですら神力はそこまで多くなかった。あれが普通ならば、僕より神力の多いドイルドも神なのか?

 それに僕の全て知っているような言葉の数々……

 『どうだ? ()()に弄ばれる気分は?』

 神々ってことは……複数だよな? 神が一人なら神だけでいい筈だ。

 

 僕の神力が神同等なら、僕と同等か、僕より神力が多い人は神だってことになる。

 確証はないが、確認してみる価値はありそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ