43 神々に弄ばれる気分
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「――――話は終わったか?」
ステージは今までにない程に緊迫としていた。
エーデルを凝視するドイルド・ポーセ。
ドイルドを潰したいと思うほどの憎悪を持つルーク・アックス。
ドイルドに対して少しの期待と恐怖を隠しきれないエーデル・アイビス。
ここ一画だけ誰が見ても張り詰めた空気が漂っていた。
(……何か変だ。ルークとドイルドは因縁でもあるのか?)
するとルークが口を開いた。
「ドイルド・ポーセ。俺はお前を潰してやりたいが、今回は我慢するよ。代わりに後輩がお前をぶっ潰すって言ってくれたからな」
(言ってないんですけど……やめて欲しいな。僕かなりビビってるんで)
「そうか」
ルークがステージから降り、去り際にこう言った。
「エーデル・アイビスよ、一つだけ伝えておこう。俺の親友も魔族だ――頑張れよ」
エーデルはフッと安堵したように微笑んだ。
案外ルークは善人なのかもしれない。
ルークがステージを降りた後張り詰めた空気が漂う中で、ドイルドは口を開く。
「エーデル・アイビスと言ったか?」
「はい」
ドイルドは平然とした顔で、低く安定した声で淡々と話を続けた。
「実に妙だな。お前はこの星に似合わない」
…………星? どういう意味だ?
「妙にアンバランスなんだよ。肉体と魂が別物だからか?」
…………今……なんて……言った?
「可哀想に。どうだ? 神々に弄ばれる気分は?」
……意味がわからない……さっきから何を言ってるんだこいつは。
「何を言ってるんだ? って顔だな。まさか何も知らないのか?」
…………
「まあいい、俺は単にお前が気になっただけだ。ただお前と戦えればそれでいい。だが今のお前は戦うどころか、俺を見てもいないな」
エーデルは一点を見つめたまま立ちすくんだ。ドイルドの言葉に混乱し、考えが追いつかない。
彼の声は今、エーデルに届いていない。
訳がわからない……星ってなんだ? あいつは僕が転生したことを知っているのか? 初めて会ったのに? 神々に弄ばれるってどういう意味だ? 神の存在を知ったのは最近だ。僕はもう神に会っているのか? 頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「当てようか? 俺の言葉に訳がわからず、頭の中が混乱しているのだろう。ならば、こうしよう。お前が俺に勝てたら、お前の聞きたいこと全てを教えてやろう。どうだ? 戦う気になったか?」
こいつはエスパーなのか?
でも、そうだな、知りたい。知らなければならない。
徐々に知ればいいと半分諦めていたことだ。
僕はこれからこの体で生きていくことになるのか、本当のエーデルが戻ることになるのか、そもそもここは何処なのか、百合は何処にいるのか、聞きたい。
その為にはこいつに勝たなきゃいけない――
エーデルは真っ直ぐドイルドを見て、木刀を構えた。
「頼む。教えてくれ」
ドイルドはいやらしく笑い、木刀の先端をエーデルに向けて構えた。
「ククッ、俺に勝つというのか?」
今回少々短めです!お許しください!
次回!第二次トーナメント、二回戦目開始!!!




