35 剣術の授業
授業開始のチャイムと同時にタクロ先生が来た。
「今日から神力を使った剣術の授業が始める。
知っているとは思うが、神力は簡単に人を殺せる。無闇には使うな。強くなるに越したことはないが、まずは神力と剣術両方を扱えるようになれ」
「はい」
クラス全員が先生の言葉に答えた。
「全員神力を体に纏ってみろ。一度限界まで出すんだ」
エーデルは周りを見渡した。
皆神力を体に纏わせ始めた。
練習場がいろんな色で染まった。
――皆の神力は確かに僕より少ないな、でも凄い色んな色に染まって綺麗だ。
ディルは……これで……出しているのか?
他の生徒よりも纏う神力が少ない。
ヘルヴィンの神力は……水か。だか神力量は他より少し多いくらいか、でも僕よりは少ないんだな。
「エーデル、何をやっている? お前も早く出せ」
「はい。すみません」
エーデルは呼吸を整え、息を吐くように神力を出した。
神力はボワッと音を立て広範囲に広がった。
ブレずに安定するよう調節し操る。
出し切れる全ての神力を体に纏って見せた。
***
エーデルの出した神力は先生とクラス全員を飲み込んだ。
既に神力を調節し操ることを習得していた。エーデルの神力は誰も傷つけることをしない、優しく皆を包んだ。
タクロはニヤッといやらしく笑った。
十三歳と言う年齢であれば、体から十センチ程の神力を体に纏うのが普通だ。
ヘルヴィンもなかなかの神力を持っているが、自分の周りを約1メートル程包み込むように神力を出している。この量で本来大人のレベル。十三歳にしては多い方だ――
だが、エーデルは更に格が違った。
この広い練習場一画を囲むような神力――
『規格外』という言葉が最もお似合いだ。
「うわぁ。あんなに神力量を持つ人がが本当にいるなんて……」
「神力の中に入るなんて……僕初めてだよ」
「凄い綺麗な緑色だ!」
「でも怖くない。優しい『風の神力』だね」
***
「終了。神力を抑えろ」
全員が神力を抑え、練習場から色が消えた。
「大体わかった。神力を出し切って疲れただろう。規格外の奴もいるようだから、ペアを調節しないといけないが、今日はまず木刀で素振り三百回。終わったらペアで神力を使わずに木刀で対戦をしろ」
……神力を使って疲れる?
僕はその経験がない。神力って無限に出るものじゃないのか?
皆の神力量なら疲れるものなんだな。
――木刀で素振りを三百回終わらせた。
「ディル、あと何回だ?」
「ふぇ? 後、百回……」
素振りを始めたタイミングは全員一緒なのに、ディルはなぜ百回も残っているんだ……
「わかったよ。頑張って」
「おう! まかせろ!」
(元気だけはいいんだよな〜)
ディルはエーデルにとって笑いのツボだった。
「エーデル。終わったなら僕と対戦しない?」
僕に対戦を要求してきたのはヘルヴィンだった。
正直ヘルヴィンの強さは気になる。他の人より神力も多いし、ルピナスの子孫であり、王族であるヘルヴィンはどれほど強いだろうか?
そしてアカデミーも主席からニ番目で入学している。
つまり剣術一学年の一位と二位が対戦をするということだ。
「わかっ――」
「ダメだ。」
「……タクロ先生?」
先生はエーデルとヘルヴィンの対戦を止めた。
「何故ですか?」
「普通に考えてみろ。お前らがここで対戦を始めたら皆吹っ飛んで建物が壊れるだろう。どうせ神力を使うなと言っても聞かないだろう。なぁ? ヘルヴィン」
「アハハッ、バレたか〜」
確かに皆全力で神力を出し切って疲れているが、ヘルヴィンは疲れているように見えない。
僕も少しは神力を使いながら対戦してもいいだろうと思っていたけど、皆を父クラウスの二の舞にする訳にはいかない。
けれど自分と同等の力を持つ人、
自分と戦える人がいないと僕は強くなれないんじゃないか――?




