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32 ヘルヴィンの正体

 そして(大夢)が知らなかったーー神の存在。


 記憶にもそれらしい事はなかった。

 エーデル本人も知らなかったということか? それとも興味がなかったのか? まさか()()()のか?


 この国では神の存在は当たり前で、普通に生活をしているということ。

 耳を疑うような話だが、事実らしい。


 前世では信じている人もいれば、信じていない人いた。

 いるのかいないのかわからない存在が神だった。

 僕は信じていなかった。


 もし神がいたなら――親が死に、僕はいじめを受け、兄妹共々死ぬような不幸を与える筈がない。試練でも何でもないただの不幸だった。 


 僕が悪いことをしたなら自分に不幸が降ってきても理解するでも何もしていない。

 神がそんな理不尽を許す筈がないのだ。


 

 それとなく、不自然にならないように聞いた。

「神に会ったことはあるの?」


 僕の問いにロニカが答える。

「ないよ。でも会った人と会ったことはあるよ」

 なんとも曖昧な信憑性のない答えだ。


「ヘルヴィンは?」

「……うーん。神は知らないけど、王族に興味はない?」

「王族……?」

 そういえば王族がこの学校に通っていると聞いたが、誰なんだろうか。


「気にはなるけど、特別クラスとかじゃないの?」

「いや? 普通に授業も受けているし、君たちとご飯も食べているよ?」


 ……君たちと?

 ヘルヴィンの予期せぬ言葉に僕はもう一度耳を傾けた。


「だから君たちと今ご飯を食べているのはルピナス王国第二王子だよ?」


 目が点になるとは、まさにこのことを言うのだろう。


「うそ! ヘルヴィン王子様なの?」

 ロニカは今まで聞いたことのない声のボリュームを出した。

「ヘルヴィン。冗談なら処刑だぞ?」

 僕はシンプルにヘルヴィンが心配だった。

「ハハッ。やっぱりいい反応するね〜証拠ないかな〜」

 証拠を探すためにポケットの中を漁り始めた。


 ポケットから出てきたのはまっ白いハンカチの隅に刺繍された大きな羽のついた馬のような動物。これは誰でも手に入れられるものじゃない。

 転生した僕でもわかる。この紋章は王族のみ持つことを許されている。

 正真正銘の王族の証だ――


「僕が王族だってこと内緒にしてね。ハハッ、驚きすぎだよ。これあげようか?」


「いらない! いらない」

「いらない! いらない」


「これで疑いは晴れたかな?」

 ヘルヴィンはハンカチをポケットにしまった。

「もちろんでございます王子様」

 ロニカは王族を前にして丁寧な口調になった。


「やめてよ〜これまで通り楽にして。僕は堅苦しいのが嫌いなんだ。立場とかそういうの面倒くさいじゃん」

「そう言われましても……」


「命令だ」


「はい! わかりまし……わかったよヘルヴィン……ちょっと僕水とってくるね」

 ロニカは席を外した。


「エーデル。びっくりした?」

 ヘルヴィンは固まった僕を見て、心配そうに見つめた。

「うん……とてもね。でも王族は瞳の色が金色だって本で読んだんだ」


 そう『世界とルピナス』で間違いなく読んだ。それにその本はヘルヴィンが僕に渡してくれた。


「あー、これね。内緒だよ」

 ヘルヴィンは目に指を入れた。

「何やってるんだ!」

 僕は咄嗟に彼の手を掴んで止めようとした。


 ヘルヴィンの手の指先には水色の皮のような丸いものが付いていた。顔を上げてヘルヴィンの瞳を見るとそこには……

 今まで見たことないとても綺麗な金色が光っていた――まるで綺麗な猫の目のような。


「綺麗……」

「ハハッ。初めて会った時もそう言ってくれたね」

「ああ、そうだっけ? もしかしてこれって……」


 ヘルヴィンの指に付いた皮のような丸いものには見覚えがある。


「そう『カラコン』だよ」

「すごい! ()()()()()()あるんだな」

「いや? ……うんあるよ」


 カラーコンタクト――前世では女性がよく付けていたものだ。男性も職業や趣味でつけている人もいたようだが、僕は触れたことも付けたこともない、だが存在くらいは知っている。


「ヘルヴィン様! お待たせしました。お水を!」

「ありがとう。でもやめてよロニカ。僕は純粋に君たちの友達でいたいんだ。君たちとの学校生活が楽しみでしょうがないんだ。エーデル? さっきから様子が変だけど大丈夫?」


「……ああ、妹のこと思い出しててさ」

「へぇ、エーデル妹がいたんだ。でも確かにお兄ちゃんて感じするよ」


 一度ロニカを助けたことでロニカはエーデルを兄のように思ってくれているようで納得した顔をしている。


「うん。アルメリアっていうんだけど、可愛くてさ。将来は王子様と結婚するのが夢だって言ってたな〜って」

「アルメリアか〜会ってみたいな」

「駄目だ!」

「ハハッ、もう会ったことあるかもしれないな〜」

「どこでだよ!」

「ハハハッ」


 ヘルヴィンは茶化してくるが、僕は本気でアルメリアを守ろうと怒った。それを見てロニカが笑った。


 アルメリアはウサギのような小さく尊い存在なんだ。ヘルヴィンのような狼に食われてたまるか!

なんと!!!ヘルヴィンの正体が……

推せますねえ〜朱春とてもタイプです……


ご愛読ありがとうございます♪

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