30 ヘルヴィンの命令
【エーデルが教室に戻った後タクロ先生とヘルヴィンの会話】
***
「ヘルヴィン。頼むからあまり問題を起こさないでくれ」
「別に何もしてないでしょ」
「朝礼で居眠りは止めろ。
朝揉めた件も止められたんじゃないか? カバーしきれないぞ……」
ヘルヴィンはそっぽを向いた。
「……お前楽しんでるだろ? 彼がこの世界に来たことを知ってから毎日出歩いて」
タクロはヘルヴィンを問い詰める。
「居眠りは止めるよ……でも朝は……見てて気分が良くなかった。だからアイツらは自業自得だと思う」
「お前の立場で言えることか? 困るのは彼だ」
「わかってるよ」
わかっている。
巻き込んでしまったこと、悪いと思っている。
僕のしたことではないけれど……
これは僕らの連帯責任だ。
「…………彼は神ではないよな?」
「ああ」
「じゃあ、まさか俺と同じか?」
タクロの表情はみるみるうちに変わった。
眉間に皺を寄せ、目は鋭くヘルヴィンを見た。
「そうだよ」
「…………」
「お前らは…………何をやってるんだよ!」
タクロはヘルヴィンの胸ぐらを掴み声を大きくした。
ヘルヴィンに怒った。
「これ以上犠牲者を出すな」
「ごめん」
ヘルヴィンは俯いたまま悲しげな顔をしているが、その顔は嬉しさも雲隠れしている。
「はぁ〜、どうするんだ。もう戻れないぞ。俺があの子に話す」
「やめろ。まだ駄目だ」
「でも可哀想なのはあの……」
「やめろと言っているだろう。タクロ、これはだ」
ヘルヴィンは鋭い目つきで言う。
「わかったよ。でもこれ以上はやめろ。被害者を出すな」
「…………もう遅いよ。まだいるから」
そう吐き捨てるとヘルヴィンは険しい顔で教室に戻った。
クラスメイトに質問詰めされているエーデルを前にして、表情を戻て彼の肩に手を当てた――
***
午前の授業が終わり昼休みになった。
特に約束をしていた訳ではないが、僕とヘルヴィンは魔術専攻の教室まで行き、ロニカを呼んで一緒に食堂に行くことにした。
仲良くなれたことも理由だが、それよりまたロニカが虐められないか心配だったからだ。
食堂は全校生徒が余裕で入れる広い空間に、ガラス張りの大きい窓。長いテーブルや椅子が沢山並んでいる。
食事はバイキング式で自分で食べたいものを取り分ける形式になっていた。
そしてメインの食堂料理は思いの外豪華だった。鹿肉やサラダにパンと栄養のバランスを考えられているのがわかる。
こうして貴族や王族もいるから庶民的なものは出されないようだ。
エーデルは並んでいる料理を選んでいる。
そこで信じられない食べ物をを目にした――
……待てよ。
……これってもしかして。
「すみません。これって……」
僕は目の前に食べ物に衝撃を受け、食堂のおばさんに声をかけた。




