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23 パンドラの箱の鍵

*** 



 僕はエーデルとジニアの過去の記憶を見た。

 エーデルがパンドラの箱を開けたのだ。



(…………そういうことかエーデル。パンドラの箱をやっと開けてくれたんだな)

 ずっと見ることのできなかったエーデルの昔の記憶のフィルム。ここに来てやっとわかった。


 鍵となったのは『バドラ』だ。目の前にいるエーデルの知人であり、ジニアに暴言を吐き角を追った最悪な男。


「バドラァ―!!!」


 柄にもなく僕は声を荒げた。

 理由はとてつもなく腹が立ったからだ。記憶を見て腹が立たない訳がない。今回だけでなくバドラは前にもも同じような虐めをしていた。やり口も同じだ。


 様子を見るに虐めることに手慣れているようだから一度や二度じゃないだろう。自分がまだ五歳の子供だとでもおもっているのか。

 

「おいおい、なんだよいきなり、ビビるじゃねぇかよ。久々の再会だろ? もっと喜ぼうぜ」

「喜ぶ? ふざけるな。まだこんなことしているのか!」


「こんなこと? ああ〜、秩序を正してるんだよ。お前だって清々しただろ? なんだっけな。えーと、ラニア? が居なくなって」


 ああ、やっぱりコイツらはなんの罪悪感もないんだ。

 自分たちのしていることが悪だと一ミリも思っていない。寧ろ正義とすら思っている。コイツらは十三年間生きてなんの道徳も学ばなかったんだな。


「ラニアじゃない、ジニアだ。間違えるなバドラ」


 また僕の耳元でヘルヴィンが囁いた。

「君が彼らに勧善懲悪(かんぜんちょうあく)を学ばせてあげるべきじゃないか?」


 ……彼はバドラを理由に僕を挑発しているのか?

 先程から小声で僕だけに聞こえるように、相手を非難するわけでもなく、ただ僕に情報を伝えて、自分では動こうともしない。

 まるで僕を手のひらで転がすように楽しんでいるように見える。


「さっきから、何コソコソしてんだよ金髪。エーデル、お前は変わらないな。愚かで無力で可哀想だ。でも何故だろうな、昔からそんなお前を見ているとムカムカしてくんだよ」


 バドラの目つきが変わった。

 あの時と同じ、ジニアに暴言を吐き角を折った時と同じ目をしている。


 コイツらにとって『虐め』とはただの憂さ晴らしなのかもしれない。だが、それを見て見ぬ振りをし加害者になることも、被害者になってやる義理もない。


「久しぶりに相手してやるよエーデル。八年ぶりだな」


 バドラは僕を凝視しながら、左足を前に出し両手を顔の位置で構えた。

 他の生徒が沢山見ている中で、バドラは戦闘体制に入った――


 どうやらもう話し合いでは解決できないらしい。

(バドラの構えは……武闘か? 僕は武闘は専門外だ。どうする……)


「エーデルくん、はいこれ」

 ヘルヴィンから渡されたのは三十センチほどの木の枝だった。


「これは?」

「なんかそこに落ちてた。君は剣術専門でしょ? まさか彼相手に素手で戦うの?」

(普通は木の枝なんて落ちてないだろ! 校舎の中だぞ?)


「でも相手は拳なのに、武器を持つのは……」

 だが木の枝でも問題ない、神力を纏わせる長い棒であれば――


「気にしねーよ。そんな枝、角より簡単に折れるだろ」


 バドラは余裕そうだ。

 普通はそうだ。神力を使ったとしてもこの木の枝で何が出来るんだって思うだろうな――普通ならな。

 

 以前アレクが言っていた。

 僕は『一般的に考えれば規格外だ』と。



 じゃあ、試してみようか――


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