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22 パンドラの箱に秘めていたもの

 ……誰だ? 僕を知っているのか?



「久しぶりだな。昔はよく遊んでやったよな?」

 その瞬間、物凄い頭痛に襲われたと同時に頭の中のフィルムが荒々しく動き出した。

(頭が……割れそうだ)

 ふらつくほどの痛みに頭を抱えこんだ。

 ーーどうなっているんだ?




***




 頭の中に流れたのは今まで見ることのできなかったフィルムだった。


 そこはエーデルの住んでいた村。

 家から少し離れた森の入り口で、エーデルは一人の少年と遊んでいた。


「ジニア! 僕の話聞いてた? だから魔物は悪い奴ばかりじゃないって」

「聞いてたよ。でも魔物は怖いよ」

「本で見る魔物は怖くないだろ? ペーガソスとか!」


「あれは魔物なのか? 神話の中の伝説の生き物だろ?」

「違うよ! 本当にいるよ! 女神様の使いだったんだ。天界へ導く翼を持った美しい馬なんだ。僕は初めて見た時心を奪われたよ。もし僕が死んでもペーガソスが天へ導いてくれるんだ」


「縁起でもないこというなよ。見たことあるのか?」

「本の中でね」

 エーデルはそう言うと彼に微笑んだ。


 エーデルが話している少年には二本の黒い角がある。ジニアは魔族だった。見た目は人間と変わらない、ただ二本のツノがあるだけの心を持った子供だ。

 五の頃、二人は親友だった。

 毎日遊んで語って、一緒に本を読んだりおやつを食べたり、そんな日々がとても楽しかった。


 だがそれは長くは続かなかったーー


 いつものようにエーデルとジニアは森の入り口になる木の下で本を読んでいた。

 すると遠くから同い年くらいの男女三人が近づいてきた。一人はエーデルの知り合いのーーバドラ。見るからに子供の輩だ。揶揄いに来たのだろうと二人は無視をした。


 するとバドラが口を開いた。

「おいエーデル。まだそんな奴と一緒にいるのか?」

「関係ないだろ? 放っておいてくれ」

「聞いたか? ホオッテオイテクレだって」

 バドラはエーデルを茶化すとバドラの取巻きたちも笑い始めた。


「ジニアもう行こう」

 エーデルとジニアは立ち上がりその場を去ろうとした。

「おい待てよ」

 バドラがジニアの腕を掴み引っ張った。

 僕はバドラの取り巻きに両腕を掴まれ、身動きが取れなくなった。


 バドラはジニアに顔を近づけて言う。

「お前は気色悪い。この世で一

「なんてこと言うんだ! いらない種族なんていない! ジニア聞くな。無視しろ!」

 バドラの言葉にジニアは徐々に表情を変えていった。

「お前は死ねばいい」


 ジニアはコンプレックスに思っていた。

 二本の黒い角があること、人族より知能が低いということ、魔族という種族、つまり自分自身がコンプレックスだった。


「やめろ! バドラ」

 エーデルの言葉はバドラにもジニアにすら届いていない。

 バドラはジニアの角に触れその角をへし折ろうとしていた。ジニアの目から光が消え悄然として一切の抵抗をしなかった。


 ーーーーポキッーーポキッ。

「…………」


 バドラはジニアの二本の角を折り去ってからどの位の時間が経過しただろうか。

 気づけば太陽は隠れ辺りは暗くなっていた。夜のヒンヤリとした風が森から流れてくる。

 ジニアは相変わらず悄然としている。角を折られたことよりもバドラに投げ付けられた言葉が胸にグサっと鋭い刃物で刺されたかのように消えない傷を残してしまったのだ。


皆様ご愛読いただき誠にありがとうございます!


やっとエーデルの過去の記憶、パンドラの箱が開きました!


※最新話のお話はエーデルの五歳の記憶の話になります。

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