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21 いじめ

 その光景を目にして僕は顔を顰めた――


 校舎内の広い廊下で三人の人間が一人の魔族囲んでいる。

 黒いツノの生えた魔族を床に座らせ、拳で顔を殴っている。そして一人の人間が魔族の黒い角を持ち腹に蹴りをいれた。

 頭痛がした――昔の記憶がフラッシュバックして、ふと嫌な記憶が蘇る。


 あそこにいるのは僕かもしれない。


 いや以前は僕だったんだ。


 何の抵抗もできず、ただされるがままに殴られ蹴られていた。まるでサンドバッグ状態だ。やられた側にしかわからない辛さと痛み――死ぬ覚悟までしたんだ。


 自分では止められなかった――きっと彼もそうだろう。

 以前の僕は『やめてほしい』という言葉が最大限の防御だった。

 でもやめてくれと言えば更に殴られる。次にやめてという時には更に殴られるという覚悟が必要になる。これは止まらない負の連鎖なんだ。


 この光景を目にしてどうすべきか。

 放っておくのか――止めに入るのか――

 僕が思っていたこと、僕が求めていたことをしてあげるべきじゃないのか?


 僕があの時求めていたこと、それは――


「やめろよ」

 僕はボソッと呟いた。

 これじゃだめだ。


「やめろよ!」


 僕は声を大きくした。

 虐めを受けた時求めていた時、誰かに手を差し伸べてもらいたかった。誰かの手を掴みたかった。


「…………」

「あー、いいとこだったのに萎えた」


 魔族を囲っていた一人がこちらを向いた。手に持っていたのは黒い角だった。


「それ、彼のじゃないか?」

「ああ、これか?」

 彼は見せびらかすように手に持った角をこちらに向けた。


「……返せよ」

「はぁー。おい知ってるか? コイツらのツノっていうのは威嚇なんだよ。敵に対する武器として争いに使う為の道具みたいなもん。そんな危険なもの放っておくわけにいかないだろ? 平和主義で平等なこの国で。俺らは皆んなのためにコイツの角を折ったんだよ」


 彼はため息を吐き最もらしい言っているが、だからといって殴り蹴る必要はない。手に持っている角それが全てを物語っている。


 すると僕の後ろにいたヘルヴィンが耳元で呟いた。

「あれはさっき言ったように疾うの昔の話だね。今はなんの危険もないとちゃんと証明されているよ。魔族の角も痛覚はあるから相当痛かっただろうね」


 痛いよな……角だって体の一部だもんな。

 アイツの言っていることが事実がどうかは知らない。でもやっていることは許されることじゃない。

 指一本へし折ってやりたいが、このいじめを止めるのが優先だ。


「とにかく角を返せ、もういいだろ」


 するといじめをしている彼らの中からもう一人の男が僕に向かって話しかけてきた。


「あれ? お前エーデル・アイビスか?」


 ……誰だ? 僕を知っているのか?

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