20 種族
振り返るとそこにいたのは……
「久しぶりだね」
「え? ……どうも」
僕の友達はアレクという一人の女性のみ、この人は僕を誰かと勘違いをしているのかもしれない。
慎重に返しをした。
(ここにいる人は全員はじめましてだと思うんだけど……このイケメン何処かで見たような……)
僕はふと思い出した。
「あ! 図書館のイケメン……」
「……イケメン? ハハッ、ありがとう。あの本は君の役に立てたかな?」
(このイケメン否定しないな。自覚があるのか)
確かに彼から渡された『世界とルピナス』という本のおかげでルピナス王国の歴史と、ここが異世界だということもわかった。
「ああ、はいとても。その節はありがとうございました」
「なら良かった。タメ口はいらないよ、同い年だし」
「十三歳ですか?」
「うん、成人を迎えたばかりだよ。僕はヘルヴィン、よろしくね」
「あ、僕はエーデル。よろしく」
僕は少し胸を撫で下ろした。
初めて足を踏み入れた土地に知らない人ばかりで、見たことのない種族。心が躍ると同時に少し怖さもあった。
すると彼は僕の肩に手を乗せ耳元で囁いた。
「見て? 小さい人間に見えるけどあれは童話にも出てくるドワーフだ。可愛いだろ?」
彼が指を示す方へ目を向ける。
(ドワーフって本当に小さいんだな……可愛いかな……?)
「そしてあの耳の長い種族がエルフだ。美男美女が多いから彼らの誘惑には気をつけて? そしてさっき君が凝視していたのは魔族。魔族や魔王って君は悪いイメージを持つだろうが、それは疾うの昔の話。今やおとぎの話でしかない、この国は皆平等だ。まあ……建前に過ぎないけどね」
よく聞く話は魔族の頂点に立つのが魔王で、勇者が魔王を倒したとか、魔族は敵だとか、魔がつくだけで悪と捉えられる。その話が話題になる時代はもう過ぎた『世界とルピナス』の本にもそれは記載されていた。それはルピナスの願望でもあるのだろう。
「でも人間ってさ、言葉を話したり手先が器用だったり、ほんの少し知能が高かったりするだろ? だから勘違いしやすいんだよ。人間は人間でいることを正解だと思っている。ただ人族なだけなのにね。ほら始まった、君はあれを見たことあるだろ? 差別という名の『いじめ』だよ」
彼の示す指はゆっくり移動して嫌な光景を目にすることになった――僕は顔を顰めた。
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