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正体を見抜く

 ドラグハーツ王国の西方へと向かうように手綱を操るリアラ。

 彼女に従う様にシノンとアイリスも同じ様に操っては西方へと向かっていった。


 西方へと向かって進み続けると、先程から見えていた塔の一つへと近づいていった。

 リアラは塔の近くで移動をめさせた。無論、シノン達も同じ様にめさせていた。


「私は、冒険者パーティ[希望]のリーダー、リアラ・ドラグハーツです。飛竜の停留所の使用許可を願います」


 そうリアラが告げると、塔の頂点に作られた見張所にいた見張り役兼塔の番人だろう弓矢を持つ騎士風の男が現れた。

 その男は一つの巻物を手にしていた。


「それでは、この巻物の注意事項を読み、調印サインしてください」


 そう告げられると、巻物が魔力で浮き上がり巻かれた状態の巻物が開かれた。

 開かれた巻物には注意事項が魔力文字で刻まれており、最後には調印サインをする為の項目欄があった。

 リアラは人差し指の先に魔力を込めては項目欄にリアラの名前が書かれた。

 書かれた文字は英語と日本語と絵文字を合わせた様な文字だが、【叡智の賢眼(ソロモナイズ)】の「深淵解析」が簡単に彼女の名前であることを解析してくれた。


 巻物に書かれた彼女の名前を確認した騎士風の男が確認を行うと、開かれた巻物を閉じた。


「確認した。西塔の2番停留所を使え」

「わかりました」


 了承を得たリアラは手綱を操作して2番停留所とやらにワイバーンを向かわせた。

 シノン達も後を追ってくる。


 西の塔から南西2kmほどの距離に下降していくとワイバーンが余裕綽々と降り立てるほどの広場があった。

 三体のワイバーンは危なげなく広場へと降り立った。


「これは、これは、[希望]の皆さま」


 そう俺達に話しかけてきたのは正しく調教師と言わんばかりな服装をした女性だった。


「こちらでレンタルワイバーンをお預かりします」

「はい。よろしくお願いいたします」


 女性調教師にそう告げたリアラに続くようにワイバーンから降りた俺は彼女に尋ねた。


「これから、どうするんだ?」

「今からヨシヒロ様の冒険者登録を行ってから王城に向かいます」


 そう言って2番停留所から出た俺達は南方へと向かっていく


「冒険者達は[自由組合団体(ギルド)]と呼ばれる組合団体に所属している事になります。[自由組合団体(ギルド)]と提携している国の首都に支店を建てており、村々でも冒険者登録はできるのですが、複数名のメンバーでチームを作る。または追加をするには支店で登録する必要があるので、首都で二つ登録する方が手間が省けますので、ドラグハーツ支店に参りましょう」


 そう言ってドラグハーツ王国に提携されているドラグハーツ支店へと向かっていた。

 周りの建物には住宅地やショッピングモールと地球の都会と変わらない程の建物が多くあることに内心驚いていた。

 建築中の建物があって偶然にも目撃したけど、地球と同等の建築技術で建設されていた。


 異世界なのにこれ程の建築技術を持っているとは本当に驚きだな。

 そう思いながら歩き続けていくと、[自由組合団体(ギルド)]のドラグハーツ支店へと着いた。

 約20階層程の超高層ビルの外見を持っており、硝子張りの自動扉までもがある程だ。

 中の構造も大手企業の受付場を思わせる構造だが、階段やエレベーター・エスカレータの類いが見当たらないな。


 支店内を見てそう思っていると、リアラが半円卓の受付場にいた。

 受付場にはマリンキャップの帽子に似た帽子を被った青色と黒色で作られた制服を着た金髪セミロングの女性が座っていた。


「冒険者パーティ[希望]のリーダー、リアラ・ドラグハーツです」

「お疲れ様です。本日はどうされますか?」

「新しい仲間を入れたいので、冒険者登録と[希望]への追加手続き。それから物品の買い取りをお願いします」

「畏まりました。そちらの男性が新人登録者ですね。お名前をお願いします」


 そう言われたので、近づいて答えた。


崇常雄宏ヨシヒロ・タカツネです」

「ヨシヒロ・タカツネ様ですね。それでは此方の魔導具をお使い下さい」


 そう言って受付嬢が渡してきたのは占い師が使いそうな球体とその球体を囲う様に四角錐で出来た装飾だった。装飾には何やら少しだけ針の様なものが見える。


「この魔導具の名は血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタル。此方の四角錐の頂点にある針に指先を刺して下さい。針に付着した血液から固有能力値ステータスを水晶内に表示されます。この針には痛覚無効の魔法を掛けておりますので、刺さっても痛みが走ることはございません」


 そう言われて【叡智の賢眼(ソロモナイズ)】で解析して結果。針には痛覚無効の魔法が掛けられており、球体の周りにある装飾品が血液から能力を解析する事が出来る術式を刻まれており、水晶は解析鑑定によって出た結果を表示されるように鑑定表示の魔法術式が刻まれていた。


 だが、妙な術式が一つあった。


「‥‥‥‥‥‥」

「どうかされましたか、ヨシヒロ様?」


 一向に指先に針を刺そうとしない俺を不審に思い訪ねてくるアイリス。

 他の者たちも訝しむようにこちらに視線を向けている。


「血液から解析鑑定するのはいいんだけど、水晶には鑑定結果の表示に偽装操作の術式が掛けられているのに、解析しろというのか?」

『え?』


 俺にそう言われて驚く[希望]と受付嬢。


「ちょ、ちょっと待ってください!偽造操作の術式など存在しません」


 信じられないのか受付嬢はそんなものはないと力強く告げた。


「その通りです」


 彼女の言葉に同調するように告げてきた者がいた。声のするほうへと視線を向けると胸元まで伸びきった顎髭を生やしたオールバックの黒髪中年男性だった。

 受付嬢がその男性がその名を呼んだ。


「ドルフェン支部長!?どうしてこちらに‥‥‥?」

「何やら不遜なお言葉が聞えたものですから。初めまして、ヨシヒロ・タカツネ殿。私はこのドラグハーツ支部長を務めているドルフェン・グリンフォルドと申します。それで、リアラ様。貴女様のお連れした方は随分な発言をされる方のようですね」


 そう言って俺を睨み付けてくるドルフェン・グリンフォルド。

 俺の発言に対して不快に思ったんだろうな。それでも俺の言葉を証明することなど簡単な事だ。


「なら証明しようか?」

「え?」


 俺は水晶を指さした。


「この水晶に本当に問題がなければ、俺の冒険者登録の完全剥奪を契約しても構わない」


 その言葉にリアラ達だけでなく、ドルフェン達も驚愕の表情をしていた。

 しかし、ドルフェンはすぐさま驚愕の表情から一変して嘲笑う様な笑みを浮かべた。


「いいでしょう。問題がなければ君の冒険者登録を剥奪します。しかし、君の供述通り問題があれば君の冒険者登録を許可するのと同時にチーム[希望]の追加手続きを行うことを約束しましょう」


 そう言ってドルフェンは呪闇魔法<契約呪縛魂コントラクト・カース>の魔法陣を描いた。


 描かれた魔法陣から紫色の禍々しい紙切れが出現した。

 その紙切れに俺とドルフェンは魔力の籠った指先でサインをした。

 二人の魔力のサインが紙切れに吸収されるように消えていき、サインの跡が刻まれているだけで、紙切れから三色の魔力粒子が俺とドルフェンを包み込んだ。


「これで、契約は完了しました。それでは証明して頂きましょうか?」

「あぁ。証明前にシノン。君の鑑定結果を先に出してくれ」


 そう言われたシノンは頭を傾げた。


「?‥‥‥‥どうして?」

「問題の有無を証明するには魔法術式を表記するだけじゃ意味がない。魔導具の問題証明前後を鑑定結果でも証明した方が信憑性が上がるだろ」

「‥‥‥それならヨシヒロでもいい」

「俺だとイカサマを疑われるのは明白だからな」

「‥‥‥‥でも、私に魔法を掛けていると言われかねない」


 そうシノンが言った。

 彼女は自身が選ばれたのかを理解出来ていないようだ。恐らく特別習得型エクストラ能力スキルに気付いていないんだろうな。


「シノン。お前は自分の特別習得型エクストラ能力スキルに気付いてないのか?」


 そう問われたシノンは小首を傾げた。

 やはりかと、内心で思いながら、受付嬢にあることを頼んだ。


「君。前回のシノンの固有能力値ステータスのデータは残っていたりしないか?」

「え?は、はい!ございます!」


 シノンの固有能力値ステータスの前回分のデータがあるらしいので、取りに行ってもらった。

 五分ほどで受付嬢が戻ってきた。彼女は何やら巻物を一つ持っていた。


「こちらにシノンさんの固有能力値ステータスが記載されています」


 巻物を開こうとした受付嬢を止めた。


「待った。巻物内に記録されている固有能力値ステータスはシノンが血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルで解析鑑定された表示と一緒に提示してください」

「は、はい!」

「それじゃあ。証明を始めようか」


 そう言って血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルに向けて一つの魔法を行使した。


 白銀色の魔法陣を描いた。

 一色の魔法陣が血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルの周囲に展開されると白銀色の魔法陣が発光した。

 すると、真っ黒な霞が溢れ出してきた。その霞が白銀色の魔法陣から発せられる光がまるで浄化するかのように消し去っていく。

 霞の一塵すらも残さず消滅させたので、俺はドルフェン達に告げた。


「終わったぞ」

「は?」

「えっと‥‥‥先程の魔法は何ですか?」


 理解できていないらしく呆けているドルフェンやリアラ達は俺が何をしたのか訪ねてきた。


「話すのはシノンの解析が終わってからにしてくれ」


 そう言ってシノンに改めて頼み込むと彼女は渋々ながらも了承してくれたので、彼女は血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルの針で自分の指をそっと刺した。

 刺された箇所から流血することはなく、水晶に血液が流れ落ちていき、水晶内で文字へと変わっていく。

 それをみた受付嬢が持ってきていた巻物を開いた。


 描かれた文字はシノンの固有能力値ステータスが記載されていた。


「それじゃあ、登録時の鑑定分と今回の鑑定分を見分けてくれ」


 そう言うとドルフェン達が登録時と今回の鑑定結果を見比べた。


 登録時の鑑定結果


 名前:シノン・フェネクシアス

 性別/年齢/種族:女/14歳/天人エンジェル

 職業:剣士

 レベル:6

 体力:553

 魔力:281

 攻撃力:535

 防御力:442

 俊敏力:442

 動力核コア:未覚醒

 能力スキル

 常時発動型パッシブ──────【聖剣使い】

 特殊固有型ユニーク──────

 特別習得型エクストラ──────




 そして今回の鑑定結果はこうだった。


 名前:シノン・フェネクシアス

 性別/年齢/種族:女/20歳/天人エンジェル

 職業:勇者・女星皇じょせいおう

 レベル:56

 体力:252320

 魔力:127984

 攻撃力:243960

 防御力:201552

 俊敏力:201400

 動力核コア:未覚醒

 能力スキル

 常時発動型パッシブ──────【聖剣の剣士セイバー】・【輝星キラボシの天恵】

 特殊固有型ユニーク──────

 特別習得型エクストラ──────【対魔護新星】



 二つの鑑定結果を見て明らかに違う部分が多く出ていた。

 まずレベルや能力値の部分だが、コレはレベル上昇によって変動するため、違うのは必然だ。

 しかし、一番変化するはずのない部分が出ていた。


 それは職業と能力スキル一覧の部分だ。

 職業の変化など存在しない。どれほどレベルの数値が低かろうとも職業部分が変化することはない。


『その通りだ。職業欄が変化される事はない。それこそ偽造されていない限りは鑑定結果が覆る事はない』


 俺の思考を読み取ったのかアルスから肯定された。


「……職業が違う」


 シノンは自分の固有能力値ステータスが明らかに違う事に驚いていた。

 感情の起伏が少ないため、驚いた表情はしていないが………声の感じからして驚いているんだろう。


「ヨシヒロ様、これはどういうことですか?」

血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルに偽造魔法が掛けられていたんだ。しかも変更など一切不可能な職業欄と能力スキル欄が偽造されていた」

「でも、どうして変更できない筈の欄を偽造する必要があるのですか?」

「簡単だ。お前達も知っている"異世界人"が職業と能力スキル欄を偽造していたんだ」


 そういうと、[希望]と受付嬢がハッと驚愕した表情で気付いた。


「自身が手にした能力スキルを把握する能力スキルでも持ち合わせていない限り、魔導具を使って把握するしかない。偽造魔法を掛けたのが"異世界人"なら、能力スキルの概要を知らなければ、使える魔法の数や、聖剣の使える種類の限定や職業によっては特殊な成長方法も必要になることもある。その方法を取らせないように職業も偽造することで、遠ざけようとしてもおかしくない」

「馬鹿な!例え"異世界人"が偽造を行なっていたとしても、貴様がその"異世界人"で偽造している可能性だってあるだろう!!」


 焦燥感を漂わせる表情を浮かべるドルフェンは俺に指差しながら、"異世界人"であり、この結果も偽造であると言ってきた。

 "異世界人"の名が出た事で、他の受付人や冒険者達もザワザワと騒ぎを聞きつけて集まり始めた。


「本当にそう思うなら、俺が何故シノンを選んだか‥‥‥わかっているんだろ?"異世界人"のドルフェン」


 俺を"異世界人"と言ってきたので、俺も同じようにドルフェンを"異世界人"と言った。

 しかも既にバレているぞと言わんばかりな発言をした俺の言葉にドルフェンは焦燥感が更に膨らんだかの様に冷や汗が流れている。

 そんなドルフェンに対して俺は血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタル内に記され続けているシノンの特別習得型エクストラ能力スキル部分を指さした。


血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルで記されているシノンの特別習得型エクストラ能力スキル【対魔護新星】は固有能力値ステータス内に記された魔力で発動した魔法の影響を一度でも受けた場合、耐性が付いて魔法を無効化するという能力スキルだ」

「それが‥‥‥なんだというのです?」

「成る程。そういうことだったのですね」


 俺がそう言うと[希望]のメンバー四人が【対魔護新星】の効果を知って納得していた。


 リアラ達は懐から地球でいう電子マネーカードの様な形状をした茶色ブロンズカードを取り出した。


「冒険者登録された者達に渡されるこの冒険者カードは不正が起きないように履歴が記録されるようになっているのは、冒険者と[自由組合団体(ギルド)]も当然知っていますよね?」

「しかも、この冒険者カードが記録する履歴すら魔力・動力核コアの影響が受けない様に設計された代物ですから、リアラ様以外の私達三人のカードの履歴にはヨシヒロ様との戦闘履歴があります」


 そう言ってリアラ達は自身が取りだしたカードに魔力を灯す。

 すると、カードに時空属性の魔法陣が描かれていき、カード上にモニターが発生した。


 モニターには彼女達の冒険者としての履歴が逐一記録されていた。


 その中には俺達がドラグハーツ王国に向かう前。

 つまりドラング村に到着する前にリアラ以外の三人が俺と戦闘したことも記録されていた。

 俺が<完螺鎖縛バインド>で拘束して戦闘が終了していることも記録されていた事から、シノンの【対魔護新星】の効果内容を思い出したのか受付嬢や周りの人達は漸く、俺がシノンを選定した理由がわかったのだ。


「わかっただろ。俺がシノンを選んだ理由はとても単純だ。俺がシノンに対して魔法を発動しても無効化されているため、通用しない。故に‥‥」


 俺が偽造した"異世界人"ではない!と大きく告げた。


 その言葉が話を聴いていた人達に血鑑水晶詳ブアプリ・クリスタルを偽造した者が俺ではないことが証明され、逆に先程から様子のおかしいドルフェン支部長に対しての疑惑が生まれた。


「さて、俺が偽造していない事が証明されたので、今度はアナタの無実を証明して貰うとしましょうか?」


 "異世界人"のドルフェン・グリンフォルドさん。と告げながら彼を見ると、シノンの能力スキルを証明された頃から俯いた状態のドルフェンが肩をプルプルと震わせていた。


「‥‥‥クッ‥‥クク‥‥クククク‥」


 俯いた状態のドルフェンが肩を震わせながら笑いを堪えているようだったが、少しずつ彼の笑い声が漏れ出していた。

 そして、俯いていた顔が上げられると満面の笑顔で笑っていた。


「アーハッハッハッハ!!!」

崇常雄宏の能力解説


特別習得エクストラ能力スキル【魔導の覇者】

能力:魔力消費量削減・魔法効果力強化・魔法発動速度強化・複数魔法使用可・全属性適応

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