ようこそ、ドラグハーツ王国へ
この星の回りにある星々から現れる侵略者──────────"異世界人"。
俺がシノンの言葉を肯定したせいで、彼女達の知る"異世界人"だと思われたわけか。
「しかも、彼等は転生前の住人達の子孫ですので、種族や姿などはこの世界に住む"始まりの八族"と区別が付きませんが、解析系の能力を持つ方が、"異世界人"の職業に"旧時代の子孫”と呼ばれる職業持ちである事が判明しています。ですので、判別するには職業を解析するしかないのです」
解析系の能力がないと選別不可能か。
確かに、それでは侵略者達を調べるにはかなりの手間だろうな。
「それで、ヨシヒロ様の言う職業が"異世界人"というのは一体なんでしょうか?」
そう訪ねられたので応えようとした時だった。
『それは私が答えよう』
突如として聞えてきたアルスの声にリアラ達は驚いて周りをキョロキョロと見ていたが、どこにも声の主はいなかった。
そんな彼女達にどこにいるのかを教えるかのように、俺の右肩から少し上空にいる人物に話しかけた。
「いいのか。さっきの戦闘に関しても彼女達には声を聞えないようにしていただろ?」
俺がそう訪ねたことで、リアラ達は俺の視線の先に視線を送るが、そこには何もなかった。
いや。ないように見えてしまっている。
「というか。姿を見せないと彼女達も困惑するぞ」
『おっと。そうだったな』
そう言うと今まで半透明の状態で見えていたアルスの姿が──────俺の視点の話だが‥‥‥──────彼女達にも見える程に透明度が零に近づき、アルスの装備「勇賢の聖魔装」の色彩がより色濃く深まっていったことで、リアラ達はアルスの姿を肉眼に納めた。
彼女達は肉眼に納めた人物の正体でも知っているのか目を見開いて驚愕していた。
『さて、初めまして。四大陸の王国の姫君達よ。私は"勇賢王"アルス・マキナ。千年前に世界転生に加わった人間族の代表者だ』
そう自己紹介すると、彼女達の表情が目玉と舌が飛び出ては「えぇ──────!!」いた。
まるで某アニメの驚愕シーンだ。
「ゆ、"勇賢王"アルス・マキナ様!?」
「世界を転生させた八人の英雄の一人!?」
「ど、どうしてそのような方が、あたし達の前に‥‥‥!?」
「‥‥‥‥」
驚愕から一変して、困惑の表情になっているリアラ達は目の前に突如として現れた英雄に理解出来ていなかった。
シノンはリアラ達の言葉に同意しているのかコクンコクンと頷いている。
『リアラ・ドラグハーツを除く、三人が雄宏君に攻撃をした理由は影ながら聴いていた』
その言葉に、俺を襲ったシノン達三人は顔色を青ざめていった。
俺と英雄が知り合いであることは俺の近くに姿を現したのと、姿を現す前に俺が話しかけていたことから想像できたんだろうな。
言わば、馬鹿にしている人物が、自分の務めている会社の社長と友好関係の人物であったことから、印象が最悪に陥るDQNと同じだ。
「それで、わざわざ姿を見せた理由は何なんだ?」
そう訪ねてみると、アルスが答えてくれた。
『雄宏君の"異世界人"について答えることと、気になることがあって、その事を質問しようと思ってね』
そう言ってリアラ達へと視線を向けた。
『君達も、それでいいね?』
「「「「は、はい!」」」」
『では、先ず最初に雄宏君のことを話そう。"異世界人"とは職業の一種であり、君達のようにあの星からやってくる来訪者ではなく。完全に別の時空にある世界から召喚された者の職業に含まれる職業でね。世界を転生させる以前は異世界の住人が希にこの世界へと転生することがあった。その者達が必ず持つ職業が"異世界人"だ。
君達の言う"異世界人"は世界が転生した後で、星規模で封印された戦闘継続を望んでいた"始まりの八族"達の子孫だと言うが、彼はその枠に収まらない。
彼は転生に貢献した者達で召喚した異世界の住人だ』
そう説明されたリアラ達は驚愕した表情で俺を見てきた。
英雄達に召喚された異世界の住人。
異世界人=旧時代の子孫であり、侵略者だという彼女達の常識が崩れたんだ。そうなっても仕方ないだろうな。
『しかも、異世界の住人がこの世界に馴染めるようにレベル向上率が10倍に、能力取得率5倍に増加するのが"異世界人"の職業の効果だ』
「そ、そんな非常識な職業があるのですね‥‥‥」
リアラ達は自分達の知る異世界人と違う事を知って驚き疲れているような様子だ。
『さて、今度は私の番だ。彼を召喚したのは抑止力となってもらうためだ。君達が言っていた救世主とやらが、私達が彼を召喚した理由と関係があるのか否か。その事を確かめさせて貰おう』
そう言って、アルスの質問時間にリアラ達は答えた。
『リアラ君だったね。君の【運命の兆し】によって告げられた救世主と私達が抑止力との関係性はあるのかな?』
そう問われたリアラはまるで神に祈りでも捧げるかのように両手を胸の前で握りしめては目を閉じた。
すると薄紅色の光が彼女を照らした。
大体30秒ほどだろうか。彼女がお祈りをしている体勢をとくと彼女は言った。
「‥‥‥‥天啓を受けました。私達が探していた救世主様は、"勇賢王"様の仰る抑止力と同一人物とのことです」
『成る程。確かに君の【運命の兆し】は輪廻の流れから所有者に天啓を与える物のようだな。そうなると、君の発言が嘘ではないことになる』
リアラの返答を訊くだけでなく、彼女の常時発動型能力がどのような効果をもっているのかすらも看破したアルス。
『ありがとう。私の質問は以上だ』
そう言うとアルスはリアラ達の肉眼では見えないように姿が消えていった。
俺にはハッキリとその姿が見えているが‥‥‥‥
俺はアルスの姿が消えると縛り付けていた<完螺鎖縛>を解除した。
解除されたことで動けるようになったシノン達は立ち上がると、すぐさまリアラと一緒に頭を下げた。
「「「「本当に申し訳ありません!!!」」」」
四人とも誠意ある謝罪を俺にしてきた。
「誠に申し訳ございません!」
「まさか‥‥かの英雄達に召喚された方だとつゆ知らず、一方的に攻撃を行ないました!!」
「‥‥本当にごめんなさい」
「リアラ様への天啓を信じきることもせず、ただ"異世界人"というだけで攻撃した私達の愚行を恥じます」
攻撃をしていないリアラですら、血相を変えて謝罪を続けてくるほどだった。
そんな彼女達を俺は許すことにした。
「いや、誤解が解けたならそれでいいし、間違ったら反省し、次ぎに生かしていけばいいんだ」
そう言うと、四人は本当に申し訳なさそうな表情と態度でもう一度謝罪してくれた。
俺は気にしてないと謝罪を受け取りながらそう告げた。
「それじゃあ。ドラグハーツ王国に向かおう」
「はい」
そう言って俺達は彼女達が"竜道"へとやってきていた道のりを進んでいった。
進んだといっても、二時間ほどでドラング村と呼ばれる最も"竜道"に村へとやってきた。
俺達はその村の宿泊施設で一拍した。
早朝、俺達はチェックアウトした後、すぐさまドラング村にある乗り物を借りに向かっていた。
「こちらで、乗り物を借ります」
そうリアラに言われて店の名を見たのだが‥‥‥どうも奇妙な名前が書かれていた。
「貸乗竜屋?」
「‥‥‥‥四つの大陸にはそれぞれの生物を貸し乗りできる。"竜鱗大陸"は飛竜が貸乗されてる」
四つの大陸はそれぞれの生物を貸し出す‥‥‥か。となると、大陸の形と同じ種類の生物が貸乗できるようになっているのか。
そんな俺の心情でも察したのかプラチナブロンドの女性が教えてくれた。
「貸乗屋さんは<調教師>という<固有権能>で貸乗動物を誰でも運べるように調教しているから、誰でも乗せてくれます」
成る程。ならゲーム内では敵側であるワイバーンが貸乗できるのも、<固有権能>と呼ばれる力が関わっているんだな。
そう考えながらも、俺はリアラとアイリスが借りてきたワイバーン三匹を見ていた。
【叡智の賢眼】でワイバーンを視た結果、能力値がわかった。
レンタルワイバーン
性別/年齢/種族:性別無し/180/飛竜族
状態:従魔
レベル:30
体力:3800
魔力:3500
攻撃力:7320
防御力:6840
俊敏力:6720
従魔状態か。
これが<調教師>の力なのだろう。
そう思いながらシノンがリアラからレンタルワイバーンの一匹の手綱を受け取り、ワイバーンの背に乗った。
プラチナブロンドの女性はアイリスの乗るワイバーンの背へと乗ってはアイリスの後ろについた。
「ヨシヒロ様。私の後ろについてください」
「わかった」
リアラに即されて彼女の背についた俺を確認したリアラは手綱を操ると、ワイバーンが大きく両翼を広げて走り出した。
同じようにシノンとアイリス達が乗っている他のワイバーン達も走り出しては翼を羽ばたかせて飛翔した。
低くある雲を通り抜けては高く飛翔していき、南西の方角へと向かっていった。
レンタルワイバーンを借りたドラング村から旅立ってから約1時間。
俺達は空を飛翔していた。空飛ぶ生き物に乗って空の旅をするなど地球ではなかった経験だ。
そんな初めての経験を感じながらもワイバーンが下降していった。
「ヨシヒロ様。もうすぐで目的地であるドラグハーツ王国です」
そう言われて【叡智の賢眼】の千里眼でハッキリと見えた。
日本の面積でいうと、だいたい京都府と同面積を持ち、人口密度は大阪府と同等にいるようだ。
三つの城が一つになったような大きな城が、通天閣のような塔を四方に、その二つの建物を囲むように円形に建設された外壁。
国の中に木々が溢れ、川が流れ、豊かな土地が更に国中にある建物の魅力を膨らませていた。
「あれが、ドラグハーツ王国です」
俺達はリアラの住居ともいえる王国へと到着したのだった。
崇常雄宏の能力解説
特殊固有型能力【叡智の賢眼】
能力効果:自分の眼で見る事に特殊性を得た能力
権能:千里眼・万物鑑定・深淵解析