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義妹探しの旅

 俺は心臓でも止まったような錯覚に襲われた。


 当然だ。

 目の前にいる幽霊のように半透明な身体をしている勇賢王アルス・マキナから告げられた言葉に耳を疑った。


『──────────彼女の名は崇常タカツネ明純アスミだ』


 ‥‥‥忘れやしない。忘れるはずもない。

 どうして彼からその名前が出てきたんだ?

 その疑問を解消する為に、アルスへと質問をした。


「‥‥‥なんでその名前を‥‥明純の名前を知っている?」


 その質問にアルスは微笑を浮かべた。


『言った筈だぞ。彼女は世界を転生させた功労者だと』

「そんな筈がない!!!」


 喉が嗄れそうな程の怒号が響いた。

 ハァッ!ハァッ!と息切れしながら、アルスに対して睨み付けていた。


「アイツは‥‥明純は‥‥‥義妹いもうとは俺の目の前で死んだんだぞ!!埋葬だって家族総出でやったんだ。なのに生きてる筈がない!それとも異世界に転生したとでも言いたいのか!?」


 忘れることなど出来るはずがないんだ。

 義妹いもうとは生まれながらに病弱だが、明るい性格で心優しい子だ。

 明純の父親と俺の実父が幼馴染みで仲が良く両親が流行病で他界した際に、俺は養子縁組と行い明純とは義兄妹となった。

 養子縁組を取る前から俺と明純も昔ながらの知り合いであり、病弱である明純と幾度となく遊んでいた。

 しかし、年々弱まっていく明純は18歳で死去した。


 明純は亡くなる前に俺に自分の気持ちを全て告白プロポーズしてきた。

 彼女の気持ちに応えたかったが、それに応えることが出来ずにアイツを看取るしかできなかった。

 アイツが亡くなった際はまるで魂の抜けた人形のように頭が真っ白になり、後日には走馬燈のようにアイツとの思い出が浮かびながらも涙が涸れるまで泣き続けていたほどだ。

 3年経って漸く明純の死を受け入れつつある時に、異世界に召喚されては明純が異世界にいて俺を推薦してきたというのだ。


 烈火の勢いで告げた否定にアルスは一切驚愕する様子はなく平然と話を聞いていた。

 まるで最初から知っているかのように‥‥‥


『彼女から直接聴いているから、よく知っている。彼女は確かに君の目の前で亡くなった。だが、彼女の魂はこの世界へと漂流しては、神族と人間ヒト族との間に生まれた神人イイス族として転生していたのだ』


 魂が漂流した?

 世界越しに魂が漂流することなんてあるのか?


「魂が漂流するなんて事があるのか?」

『ある。先程も言ったが<固有権能オリジナル>の覚醒には三種類の能力スキルの獲得とレベル100以上に至る必要がある。覚醒に必要な三種類の能力スキルは「常時発動型パッシブ特別習得エクストラ特殊固有ユニーク」に別れている』


 アルス曰く、三種類の能力スキルについてはこうだ。

 常時発動型パッシブ:常に条件に応じた力のみを発動する事が出来る能力スキルの名称。例えば「火の操作ができる」条件ならば、太陽の火や相手の魔力によって発生した炎さえも操作できるという効果が生じる。


 特別習得型エクストラ:武器の扱いや魔法行使の練度や戦闘や修練によって習得できる能力スキルのこと。「努力の結晶体」とも謂える能力スキルの名称。


 特殊固有型ユニーク:複数の特別な力が一つとなって発生する唯一無二オンリーワンなる能力スキルの名称。


『明純は魂への干渉に関する常時発動型能力パッシブ・スキル【心霊流転】を手にしていた。君の前で死んだ後、魂が世界を渡って。彼女が転生したのもこの能力スキルの影響だ』

「‥‥‥‥」


 俺はアルスの言葉を信じ切れなかった。

 当然だ。目の前で死んだ妹がこの異世界に転生しては世界を転生させた偉業の一端を担ったと言われても早々に信用できない。

 そんな俺の心境を悟っているのかアルスが話しかけてきた。


『君が明純がこの世界で生きていたことを信じられない心境はお察しする。だが、明純の転生は事実であり、彼女が世界転生に貢献してくれた事実はかわらない。私としても誇りに思っている』


 ‥‥‥‥うん?

 誇りに思う?どういうことだ。


「何でアンタが誇りに思うんだ?」

『明純が神族と人間ヒト族との間に生まれた混血ハーフである神人イイス族に転生したのだが、彼女はあの時代に最初に生まれた神人イイス族でもある』


 次の言葉に俺の怒りの熱が急激に収まることになった。


『あの子が転生後の名前はミリア・マキナ。私と最高神アプロディアとの間に生まれた愛娘だよ』

「‥‥‥‥‥‥‥‥は?」

『聞こえなかったか?私の娘として転生したということだ』


 はぁぁぁああああああああ!!!!?


「明純がアンタの娘!?」

『そうだ。あの子の職業に”異世界人”と”転生者”と”聖女”とあった。”聖女”以外の職業の存在に気づいて問い質したら、あの子が異世界からやってきた転生者だと知ることになった。とはいえ、私も妻である最高神アプロディアの態度が変わる事はなかった。

 私も彼女も子を持つ親になったことで、争い絶えぬ時代の中でもあの子の幸せを考えていた。だから君を推薦された際は家族総出で調べ上げた。故に推薦理由と個人能力値ステータスから召喚させてもらった。ミリアの動力核コア輪廻ループ>の力を少々借りた上でね』


『これが、君を召喚した理由の全てだ』と言ってきた。

 本当に生きてるのかと、アイツが転生して争いに参加していたと、俺の召還に関わっていたと深く考え続けた結果。

 俺はアルスに一つの質問をした。


「明純は‥‥‥‥世界が転生した後も生きてるのか?」

『生きている。あの子の動力核コアの力ならば、今までの記憶や経験の全てを併せ持った状態で転生できているだろうな』

「‥‥‥明純の場所はわかるか?」

『残念ながらミリアだけでなく、世界転生に協力してくれた者達も転生は果たしているだろうが、居場所までは知らん。だが、君が世界に旅立ちながらに探すのなら見つかる可能性が高いだろう』


 召喚された理由を務めることを上手く促されている気がするが、明純とまた会える可能性を提示されては我慢できそうにない。


「わかった。俺に戦い方を教えて欲しい」


 覚悟を決めて頼み込んだ俺の言葉にアルスは頷いた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 アルスSide──


 覚悟を決めた表情と態度で頼み込んできた雄宏に私は頷いた。


『では君に相応しい服装に着替えよう』


 そう言って武装魔法<洋服変更ドレスチェンジ>を行使した。

洋服変更ドレスチェンジ>の魔法陣が雄宏を通り過ぎると同時に、彼の服装が私の着ている「勇賢の聖魔装」の下位装備「剣魔の鎧装」に変えた。

 腰には100cmほどの直剣と30cmの細長い魔法の杖が納められていた。


「‥‥‥何というか。アンタと似たような服装だな」

『"勇者"と"賢者"に合った装備である「剣魔の鎧装」だ。防御力と俊敏力が上昇している。これが装備したときの君の固有能力値ステータスだ』


 彼の固有能力値ステータスが映し出された光学モニターを見せた。

 そこにはこう出ていた。



 名前:崇常雄宏

 性別/年齢/種族:男/22歳/人間ヒト

 職業:勇者・賢者・異世界人・◯◯◯◯

 レベル:1

 体力:31500

 魔力:75000

 攻撃力:17540

 防御力:12326

 俊敏力:14656

 動力核コア:未覚醒

 能力スキル:未取得



 体力・魔力・攻撃力の能力値は変動されておらず、防御力と俊敏力は10136も上昇している。


『この固有能力値ステータスならば魔法空間内でレベルアップする必要はないだろう。戦い方や魔力の使い方は旅しながら教えていくとしよう』


 そう言って時空魔法<空間転移動ラウム・テレポート>を使おうとしたが、固有能力値ステータスを映し出された光学モニターから目を離して魔法の杖を持ってジロジロと見ていた雄宏が何を思ったのか杖を横に振るった。


 すると、振るった杖先から淡い黒色の魔力光が溢れだしては魔法陣が出来上り、魔法の杖に魔法陣の効果が纏った。

 魔法陣を纏った杖ががズゥンと音を鳴らして空間を長方形に削り取っていた。

 私は目の前の光景に驚愕した。彼の行なった魔法は時空属性の上位魔法<崩空壊消ラウム・バニッシュ>。次元断層によって引き起こされる空間の穴‥‥‥つまり、虚数空間なのだ。


 まだ固有能力値ステータスを示す光学モニターを映す魔法しか見せていない。

 にも関わらず、彼は時空魔法を行使してみせた。

 どういう事かと彼の固有能力値ステータスを再度解析した。



 名前:崇常雄宏

 性別/年齢/種族:男/22歳/人間ヒト

 職業:勇者・賢者・異世界人・◯◯◯◯

 レベル:10

 体力:315000

 魔力:750000

 攻撃力:175400

 防御力:123260

 俊敏力:146560

 動力核コア:未覚醒

 能力スキル

 常駐発動型パッシブ────【規格外チート設定】

 特殊固有型ユニーク────【超自由戦闘能力オートバトル・モード


 レベルが上昇していて体力を始めとした体力・魔力・攻撃力・防御力・俊敏力が10倍に増加していて、常時発動型パッシブ特殊固有ユニーク能力スキルを一つずつ獲得している。

崩空壊消ラウム・バニッシュ>を行使する際に、レベルが上昇しただけでなく、能力スキルを獲得したというのか!?


「────い」


 それとも、職業欄に記載されている靄で隠されている職業が彼の能力スキル獲得速度が圧倒的に向上しているか?


「────い。おい!」


 それとも、隠された職業が最適な能力スキルのみを獲得させる異様な職業だとでもいうのか!?

 永遠に考えこめそうな程に思考の淵へ吞まれそうになった。


「いい加減に話を聴け!」


 そう声が聞こえると同時に頭部に衝撃が襲ってきた。

 ッ!突如襲ってきた頭部の痛みが気になって声のした方へと視線を向けると、拳から煙が立ち上がっている雄宏がいた。


 まさか、霊体状態の私にレベル10に進化したばかりの彼が霊魂魔法を簡単に熟したというのか。


「人の話を聴く気がないのか?」


 強い怒気と同時に溢れてくる霊魂魔法が右手に集まり続けている。その霊魂魔法の強度は霊体の私を消滅させれそうな程だな。


『すまない、少々考え事をしていた。今からちゃんと話を聴く。それで、なにかな?』

「さっき魔法を使ったのはわかるんだけど、そのせいなのか魔法の杖が壊れてしまったみたいだ」


 そう言って見せてきたのはバチッ!ビリッ!と火花を上げ続ける魔法の杖があった。

 ミリアも戦い方を覚える際には初級者でも扱える魔法の杖を提供したが、いきなり時空属性の上位魔法を行使したら魔法の杖も機能不全してもおかしくはないな。

 そうなると、彼に持たせている直剣も初級者が扱える程度の品質でしかないから、魔法を武器に纏わせる魔法剣も一回限りしかもたないだろうな。


『君の急成長に魔法の杖が持たなかったようだな。直剣も壊れるのは時間の問題だな。流石に武器は変更したほうがいいな』


 私は更に武装魔法「勇者の剣」と「賢者の杖」を召喚して渡した。


『その二つなら君の急成長にも耐えられるだろう。さて、ミリア探しの旅を始めようか』


 そう言って私は今度こそ時空魔法<空間転移動ラウム・テレポート>で私達はミリアが転生させた世界へと転移した。

 彼の隠された職業と急成長の謎は、今後の彼の成長から解き明かすとしよう。


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