7話 英語でいいんだよな
狼たちが茂みの中でじっとしていたおかげで、どうにか追いつくことができた。
茂みの先を見ると、少女が先程の水道管のようなものを修理しているようだった。
(良かった、私一人のせいでこの辺りの住人が水に困ることにはならなそうだ)
そんなことを思いつつ少女を観察してみる。
私が昨日までいた千葉ではなかなか見かけない、綺麗な赤髪をしている。外国の人かもしれない。
(赤さびみたいで綺麗だな......)
我ながら呑気なものである。
少女がこちらの方を振り向いて何やら驚いた顔をしている。狼に気づいたらしい。
それに反応して狼たちも飛び出そうとしているのが応力集中サーチで読み取れた。
(まずは彼女を助けないとな)
「いや! こっち来ないで!!」
少女が悲鳴を上げてからすぐに私は狼の前に立ち塞がった。
何故この一瞬の間に移動ができたのかは後々説明するとしよう。
襲い掛かる狼たちから、相棒の木の枝と応力集中サーチを駆使して少女を守る。
しばらく攻撃を往なしていると狼が一旦距離を置いた。
恐怖で目を瞑っていた少女がゆっくり顔を上げたが、立ち上がろうとはしない。ぬかるみに足を取られて盛大に転んでいたからどこか痛めてるのかもしれない。
「強制転位」
狼たちにしっかり視線を合わせて唱えた。
しかし狼たちに何も変化は起きない。それもそのはず、今回は相手に向けて強制転位は使っていないのだ。
準備が整ったので木の枝をやり投げ選手のように構えた。そして狼の一頭に向けて思い切り投げ放った。
木の枝は回転運動することなく放たれた瞬間と同じ角度で一直線に飛んでいく。その速度は肉眼で追うのも難しいほどだ。
そして狼の脳天に突き刺さった。
後ろで少女が驚愕しているのが感じとれる。
(こんなに上手くいくとはな......)
仲間の悲惨な最期を見て身の危険を感じたのか、他の二頭の狼たちはすぐさま走り去った。
脳天に木の枝が刺さったまま絶命した狼の屍に近づく。
(ただの木の枝が頭蓋を貫通する威力なのか、我ながら恐ろしい力の使い方を発見してしまった)
屍を観察していると視界の端に新しく文字が表示された。
【《古代スキル》材料創造】とある。新しいスキルを得たようだ。
「え、あ」
ようやく緊張が解けたのか少女の口が開く。
少女の方に戻って会話を試みる。
しかし見るからに日本人ではないようだ。こういう時は世界共通語の出番である。
(これでも11月にはボストンでの国際学会で講演した身、英語には自信があるぞ)
一つ咳ばらいをしてから可能な限り流暢に――
「Hey girl. Are you injured anywhere?」
「えっと......はい?」
「Hi!」




