11話 新たなる転位
「オガタさん、さっきから何してるの?」
オガタとステナは村に戻る道中にいた。
「これは創造複製といって、さっき作った筒の情報を元に水路を延長してるんだよ」
「へえー、よく分からないけどオガタさんが歩いた後に筒が出来上がっていくのは面白いね」
オガタは創造複製を使って水路を延長しながら村に向かって歩いていた。
「それにしてもこの坂長いね。溜池に来る時もこれを上って来たの?」
「うん。でも慣れてるから全然平気!」
(これだけ高低差があれば水が流れやすいだろうな。良い場所に溜池があるもんだ)
「オガタさん!」
「ん?」
「見えてきたよ、あれが私の暮らしてる村」
「ラウテルン村......、か」
ステナが指さす方に数軒の木造住宅が立ち並んでいるのが木々の隙間から見えた。
村の裏門と思われる小さな入口を通ると、前方の離れた所にちょっとした広場があった。
その広場の中央に人だかりが見えたのでオガタは疑問に思う。
(なんだか騒がしいな)
「なんで皆集まってるんだろ? まあいいや、オガタさんを紹介しなくちゃ――」
「待って」
「え?!」
何も考えずに走り出そうとするステナを無理やり引き留める。
「様子がおかしい、調べるから待って」
「う、うん」
無意識に応力集中サーチを発動して人だかりに意識を向ける。
するとその中心に周りの人間とは明らかに身体能力が違う集団がいた。
何となく物騒な力の流れを感じる。
「あれはまずいかもしれないね。ステナ、悪いんだけどちょっとの間この筒持っててくれる?」
「え? うん、いいけど......」
「ありがとう」
持っていた筒の端をステナに渡すと、オガタは目を瞑って集中し始めた。
「......強制転位!」
前回のデビルウルフとの戦闘時に説明を省いたが、オガタは強制転位の新たな使い方を見出していた。
まだオガタが強制転位を獲得したばかりの時、デビルベア相手に使ったのは「相手の身体を細胞レベルで脆化させる」というものだった。この使い方でも十分強力なものだったが、溜池まで森を彷徨い歩いた時間は材力界最高の頭脳を持つオガタにとって、この状況にさらに順応していくのに充分であった。
オガタは森を歩いている途中考えていた。
「相手の身体を細胞レベルで脆化させる」ことが可能ならば、その逆はどうだろう――
オガタの全身が一瞬脈打つ。直後、瞬時に肥大化したと思ったら今度はたちまち元の身体の大きさに戻っていった。
「オガタさん、今のって――」
「大丈夫、ちょっと様子見てくるよ」
デビルウルフとの戦闘時は強制転位の使用箇所を限定的にしていた。
襲われそうになっていたステナの前に急いで立ち塞がるために、両足に一瞬。デビルウルフの脳天に木の枝を投げて貫通させるために、右腕に一瞬。
それは決して身体への負担や他のリスクを考慮したからではない。それ以上は必要ないと思っていた。
しかし、今回は全身に強制転位を循環させている。
オガタは大きく息を吸って軽く跳ねた。
「......あれ、オガタさん?」
ステナはほんの数秒前まで目の前にいたオガタが瞬間移動したかの如く消えて驚くしかなかった。辺りを見回しても見当たらない。
「やっぱり難しいな、こんなに飛んじゃうとは思わなかったよ」
オガタは人だかりの真上――
地上から約100メートルの地点にいた。




