82 あなたの隣(4)
「こちらがお部屋になります」
「どうも」
中は、とても広い部屋だった。
家具は自家製らしく温かみがある。
宿の人は、食事とお風呂の説明だけして、部屋を出て行ってしまった。
「???」
リナリは、レーヴの顔をじっと見る。
レーヴはその顔を柔らかな笑顔で受け止めてくれた。
「…………」
……じゃなくて!
「ラビラントさん、あの……あたしの部屋は……」
「ここですよ?」
…………え???
「じゃあラビラントさんのお部屋は……」
「ここですよ?」
…………え??????
どういうこと?
確かに、部屋は異様に広い。
そして、広い部屋の端と端に、ベッドは確かに2台設置してあった。
「…………同じ部屋、なんですか」
少し困った顔でそう尋ねると、
「そうですよ」
と、事もなげな返事が返ってきた。
それも、離れているとはいえ、ベッドが同じ部屋。
「いいん……ですか……?」
訴えるような顔で言ったけれど、レーヴは何も気にしていないようだ。
「ああ、二人で同じ部屋であること、ですか?あなたみたいな子供を、一人で違う部屋に泊まらせる方が危険が多いですからね」
「…………」
そう言われ、すっと熱が下がっていくようだった。
そう、いうことね。
子供扱い、だったんだ。
ちょっとがっかり。
思わずドキドキしちゃったあたしの心臓〜〜〜〜〜。
目をギュッとつむり、精神統一。
と、冷静になったのも束の間。
トサッ。
レーヴがカバンを置く音に、反応してしまう。
……やだこれ……緊張する。
一人だけこんな事で意識しちゃうなんて。
けど……。
ローブを脱ぐ気配。
レーヴがテーブルに今日の資料を広げる音。
そんな日常の全てが、今、この二人しかいない部屋の中で起こっている事なのだと、意識してしまう。
気配を消すように自分のベッドへ行き、荷物の整理をしているふりをして、こっそりとレーヴのことを覗いた。
「…………っ」
こんなの、いいの、かな。
子供と大人だから?
けど、なんだか、学園のみんなに知られたら、すごく怒られることのような……。
リナリの脳裏に、『そんな怪しい男と何やってるんだよ』と、怒るメンテの顔が浮かんだ。
……きっと先生も『なんでわかんなかったかな』と呆れてしまうし、もしかしたら、ヴァルだってエマだってチュチュだって……。
そうは言っても、……子供だから、一人で部屋に泊まるのは危険だという話には一理ある。
……どうせどうとも思われてないのなら、確かにここが一番安全だ。
……どうせどうとも思われてないのなら。
それから、リナリは夜ベッドに入るまで、緊張しっぱなしだった。
だって、どうしても”もしかして“と思ってしまう。
もしかして、そんな風に見てもらえるなら。
少しでももっと、近付けるのなら。
そんなことを思っていたけれど、気付けばすっかりベッドの上だった。
どうやってご飯を食べたのか覚えていないような、緊張しっぱなしの食事をして、ゆっくりと大浴場でお風呂に入った。
書類の整理は少しだけやったけれど、その時はいつも通りだった。
ベッドの上で、ごろりと横を向き、レーヴの方を見る。
レーヴは早く寝るタイプなのか、すっかり眠ってしまっているようだ。
窓の外からの月明かりの中に、レーヴの眠っている顔がうっすらと見えた。
「…………」
あたし、なんであんなに緊張しちゃってたんだろう。
……こんなにも何とも思われてないのに。
同じ部屋になれば、あたしほどじゃなくても、ラビラントさんも意識してくれるんだって、心のどこかで思ってた。
あの人はもう大人で、あたしはまだまだ子供で。
そういう風にしか見てもらえなくて。
あたしがいくら気にしても、意識してくれるわけじゃない。
真っ白なシーツ、真っ白な枕のベッドは、なんて大きいんだろう。
早く、大人になりたい。
今回のリナリエピソードはここまで!
この二人はずーっとこんな調子なんじゃないかな……。




