表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/110

3 リナリの決心

 リナリが食堂から戻ってくるのを見計らって、チュチュはリナリの部屋へ赴いた。


 コンコン、と扉を叩く。

 意外なことに、中にはリナリの他にもう一人、メンテが居た。

 大人になって、昔ほど一緒に居ないと思っていたけれど、やはり、部屋を行ったり来たりはするようだ。

 相変わらず仲のいい双子。


「どうしたの?」

 チュチュは、ちょっとしたお菓子とお茶が載っているテーブルを挟んで、メンテとリナリの前に座った。床にひかれたラグが心地よい。


「実はね」

 リナリが話し出す。

 どうやら、王都の図書館に、見習いという形で暫く働かないかと話が来たそうだ。

 期間はとりあえず1ヶ月ほどが目安。

 けれど、それ以上になる可能性も踏まえて欲しいということだった。


 リナリは、少し、不安そうな顔で下を向いた。


 チュチュが、きょとんとする。

「何に悩んでるの?」

「一人で行くのは怖くて」

 リナリは、声まで少し不安そうだ。

「でも、ラビラントさんと働けるってことなんでしょ?」

「そ……そう」

 リナリが戸惑うような瞳を上げる。


 図書館で働くのはリナリの夢だった。

 そこで憧れの人と一緒にいられるなんて、悩む必要ないと思うけど。


 チュチュが、その視線を受け止め、リナリの手を掴んだ。

「行くべきだと思うよ」

「……メンテだって一緒じゃないんだよ?」

 リナリが泣きそうな声を出す。


 そっか、メンテと離れるのが不安なんだ。


 この二人は、国を越えてここへ来た時にも一緒だった。

 それはつまり、二人は、生まれてから離れたことがないということだ。

 成長し、常に一緒とはいかなくなってからも、お互いの存在は心の支えであるらしかった。


「メンテ連れてお仕事はできないよ。図書館、行きたいんでしょ」

「うん」


 そこは揺らぎなく、行きたいとしか言わない。


「チュチュもそう言うだろ。ぼくもそう思うよ」

「メンテぇ……」

 リナリの顔がふにゃっと崩れた。

 ここまでめそめそするリナリを見るのは久しぶりだった。

 最近、強くなったと感じていた。


 でもそれだけ、メンテと離れるというのは、リナリにとって一大事なのだろう。


 メンテの手が、リナリの頭を撫でる。

「ぼくだって同じだよ」

「え?」

 リナリが、メンテの顔を下から眺めた。


「さみしいよ」


 リナリの目が見開く。

 相手も自分と離れることを、寂しがっているとは思っていなかったのだろう。

「……本当に?」

「当たり前だよ。いつだって、リナリを頼りにしてきたし、ずっとそばに居られると思ってた。一緒に居ないと、きっとずっとさみしいよ」


 同じ気持ちだということに安心したのだろう。

 リナリの顔が、泣きながらも元気を取り戻していく。

 メンテが、リナリの顔をぐりぐりと撫で回す。

「けど、一緒に居なくても、僕らはずっと双子なんだ」

「うん」

「寂しくなったら、帰っておいで」

「うん」


 チュチュがその姿を見て、ふひひっと笑った。

「メンテもリナリ大好きなんだね」


 からかうと、少し拗ねたような、小さな頃みたいなちょっと照れた顔で、

「当たり前だろ」

 と返された。

双子は現在13歳。研修にしてもまだ早いんじゃないですかね!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ